
カスタマーストーリー
JERAのデータプラットフォームが切り拓く新時代、 Snowflakeで実現するクリーンエネルギー供給基盤の進化と データドリブン経営への変革
日本最大の発電会社JERAは、Snowflakeを核にデータプラットフォームを刷新。LNG在庫管理の処理時間を1/10以下に短縮し、Excel依存の解消とデータ民主化を実現しました。Snowparkや生成AIを駆使し、グローバル展開と「ゼロエミッション2050」達成を目指す変革事例です。
1秒
LNG在庫管理処理が
数十秒から約1秒に短縮
3割
中間ファイル数が約3割削減され
工数を大幅圧縮


業種
Manufacturing所在地
Japan「JERAゼロエミッション2050」の実現を支える、Snowflakeによるデータプラットフォーム構築
国際エネルギー市場で戦うことができるグローバルなエネルギー企業体を創出し、国際競争力のあるエネルギーの安定供給を目指し、2015年に設立された株式会社JERA。同社は、火力発電の燃料であるLNG(液化天然ガス)の取扱規模が年間約3,500万tを誇る世界最大級のエネルギー企業であり、再生可能エネルギーと低炭素火力を組み合わせたクリーンエネルギー供給基盤の提供をビジョンとして掲げている。この変革を推進し、2050年までに自社事業から排出されるCO2を実質ゼロにする「JERAゼロエミッション2050」を掲げ、その目標を実現するため、2023年にSnowflakeを中核としたデジタルデータプラットフォームを構築した。旧来の非効率な運用やデータサイロ化を克服し、全社的なデータ民主化とグローバル展開に向けた活用を加速させる同社の取り組みと、AI機能を用いた未来への展望を追う。
このストーリーのハイライト
- ニアゼロメンテナンスと拡張性でデータ基盤を刷新
- LNG在庫管理システム(LIOS)の処理時間を1/10以下に短縮
- Snowflake Openflow/Intelligenceで非構造化データのAI活用を検証
国際競争力強化を目指す巨大企業を悩ませた、非効率なデータ連携とサイロ化の壁
株式会社JERAは、燃料の上流開発・調達から火力発電、電力卸販売までのバリューチェーン全体に係る事業を担い、日本の約3割の電力を発電する、日本最大の発電会社だ。同社の約180名の体制を持つデジタル部門が全社のDX戦略、システム開発、運用保守などを担っているが、「JERAゼロエミッション2050」の実現に向け、データとAIの活用が不可欠となった。
2023年にDPP(Digital Power Plant)と言われるデジタル発電所におけるデータプラットフォームの構築に着手する以前、JERAは複数の構造的な課題に直面していた。従来のアーキテクチャでは、データ連携はシステムごとに個別に行われ、データが集中化されていなかった。その結果、データ連携のロジックが各システムに分散し、管理部門にとっての保守運用負荷が重かった。さらに、事業部やサービスごとに情報がサイロ化していたため、全社的なデータカタログが存在せず、セキュリティにもばらつきがあり、データ活用が進まない状況が続いていた。
中でも、エネルギーの安定供給に直結するLNGの配船・在庫管理業務は、非効率性の極致にあった。事業統合後も、LNG受入基地全体の統合運用はできず、2022年に統合されたExcelツールは、シート数134、180万以上の関数、71のマクロを含む巨大な代物となっていた。このExcelツールに依存した運用は、属人化、メンテナンス性の低下、データセキュリティへの不安、エラー対処の増加、そして業務処理時間の増大といった多くの課題を生んでいた。
デジタルインフラサービス部 クラウドサービスユニット 課長の森田 将之氏は、会社の変革を担う戦略的組織として、「従来の方法だけでは対応できない複雑な課題に対して、データドリブンなアプローチが不可欠となっていました」と語り、データ活用の停滞を看過できないボトルネックだと捉えていた。
メンテナンスはほぼ必要ないニアゼロメンテナンスや拡張の即時性です。物理的なサーバーを用意する手間なく、ウェアハウスのサイズを変えるだけでも即時に拡張できる柔軟性が、求めるスピード感に応えられると感じました。さらに、堅牢なセキュリティ機能と直感的な使いやすさも選定の大きな要因となりました」
森田 将之 氏
ニアゼロメンテナンスとスケーラビリティを評価し、Snowflakeをデータ基盤の中心に採用
JERAがデータ活用のボトルネック解消と、国際競争力を高めるための基盤構築を目指す中で、データプラットフォームの中核としてSnowflakeの採用を決定した。複数の製品を比較した結果、Snowflakeが最もパフォーマンスが高く、簡単に使え、拡張性に優れていると判断されたという。
Snowflakeの採用を決定づけたのは、その圧倒的な運用負荷の低さ、すなわちニアゼロメンテナンスとスケーラビリティである。森田氏は選定理由について次のように述べる。
「メンテナンスはほぼ必要ないニアゼロメンテナンスや拡張の即時性です。物理的なサーバーを用意する手間なく、ウェアハウスのサイズを変えるだけでも即時に拡張できる柔軟性が、求めるスピード感に応えられると感じました。さらに、堅牢なセキュリティ機能と直感的な使いやすさも選定の大きな要因となりました」
データプラットフォームの構築は2023年から本格化し、DPPシステムやPV(太陽光発電)関連システムでの利用が始まった。特に、従来のExcel運用に限界が見えていたLNGの配船・在庫管理業務については、Snowflakeを中核とする基幹システム「LIOS(LNG Inventory Operation System)」として再構築された。LIOSでは、Snowflakeにデータを集約し、データのセキュリティ強化と民主化を図っている。Excel運用時の複雑な処理ロジックをシステム化するにあたっては、Snowparkを活用し、より高度なシミュレーションを可能にした。
また、全社的なデータ活用を促すデータの民主化も同時並行で進められた。厳密なガバナンス下にあるコアアカウントから、データシェアリング機能を用いて柔軟な活用を可能にする分析用アカウントを分離して提供した。この分析用アカウントでは、ユーザーがワークシートやSnowflake Notebooks、Streamlitなどを自由に利用でき、また、Git Hub、Power BI、Tableau、Plexusといった会社標準外の外部BIツールも、プライベートリンクを介したセキュリティの高いネットワーク経路で利用できる環境を整備している。
データ民主化の加速と基幹システム刷新による、劇的な効率化とリスク回避
Snowflake導入後の効果は多岐にわたる。特に、LIOSシステムにおけるSnowparkを活用した業務効率化は劇的だった。Excel運用時は、複雑なマクロや数式、限られたCPUリソースの中で処理が行われていたため、数十秒の処理時間を要し、時にはExcelがフリーズすることもあった。
新しいLIOSシステムでは、複雑なロジックをSnowparkで実装した結果、処理時間は数十秒から約1秒へと短縮され、処理効率が10分の1以下に改善された。これにより、配船・在庫調整の時間を十分に確保できるようになったことで、Excelでは不可能だった約80パターンもの在庫シナリオの同時比較が可能となり、計画策定の精度が飛躍的に向上した。また、LIOS開発を通じて、インプットや中間ファイルとして利用していたファイルも約3割削減され、工数の圧縮に成功している。
Snowflakeを中核としたLIOSは、業務上の重大なリスク回避にも貢献している。
「例えば、LNGのタンクに持ってくるガス自体の混ぜ方で問題が起きることもありますが、そうした数億円単位の損失リスクにつながる可能性のあるオペレーションをロジックとして確実に防ぐことができるようになりました」(森田氏)
さらに、JERAのデータプラットフォームは、Snowflakeをデータの一元化された処理場所として活用することで、データを外部に送ることなく同じ環境内ですべての処理を完結できるようになった。これにより、データの場所や形式を気にすることなく、ビジネスアナリスト自身が開発者を経由せずにデータ検索・分析を行うまでのリードタイムが短縮され、柔軟で安全なデータ活用が組織全体に浸透しつつある。分析用アカウントの提供によって、リスク管理部、統合ポートフォリオ戦略部、需給基盤部など、本社機能の中核を担う部門でのデータ活用が加速し、デジタル部門の新人研修でも実際のデータを用いた効果的なハンズオン研修が実現するなど、DX人財育成の面でもSnowflakeが基盤となっている。

80
パターンの在庫シナリオの同時比較が可能になり計画精度向上
グローバルなデータ連携と、生成AI活用による経営変革の推進
JERAのデータプラットフォームは、国内での成功を基盤として、グローバルなデータ活用へとステップを進めている。現在、グループ会社であるJERA Americas Inc.(米国)が保有する発電所のデータを、Snowflakeのインターナルマーケットプレイスを通じてデータシェアリングする検討を推進しており、契約調整の最終段階にある。この連携により、JERA本社は米国の発電所データを含むグループ全体のデータを一元的に把握し、グループ経営における客観的な評価と意思決定を可能にする。また、データが現地子会社に共有されることで、現地目線での分析や新たな価値創造が期待されている。JERAは、グローバルICTガバナンスの構築とDX人財の育成を図り、会社全体の競争力を高めていく考えだ。
さらに、JERAは最先端のAI機能の検証にも積極的に取り組んでいる。Snowflake OpenflowとSnowflake Intelligence、Cortex AIを活用した検証では、将来の需要電力量やLNG輸入価格の予測、気象・需要電力・輸入価格の関係性分析などが試行された。この検証では、Snowflake Openflowを用いて、気象庁の天気図PDFや資源エネルギー庁の電力調査統計結果概要PDFといった非構造化データからデータを抽出し、テーブルに格納するフローを構築した。これにより、従来手作業で処理されていた非構造化データが自動的に分析可能なデータ資産への変換が実証された。こうした生成AIの活用について、森田氏は次のように語る。
「ビジネスの現場に目を向けると、コーディング知識はあまりなくてもデータ利活用のアイデアを数多く持つ人は珍しくありません。こうしたニーズを確実にすくいあげようとした際に、生成AIが果たす役割は極めて大きいと考えています」
JERAのデジタル部門は、経営の変革を担う実行部隊として、今後もAI/ML技術の活用を加速させていく。


