
カスタマーストーリー
三井住友トラストグループのデータ利活用を刷新 アジャイル開発とSnowflakeが実現する 金融DXを加速させるデータファブリック構想とガバナンス
三井住友トラストグループのDXを担うTrust BaseのSnowflake導入事例。事業部間でサイロ化した膨大なExcelデータから脱却し、金融機関の厳格な統制とアジャイル開発を両立した「データファブリック構想」を推進。データ整理工数を数カ月から1カ月に短縮し、AI利活用による次世代の金融DXに挑みます。
1カ月データ整理工数を数カ月から約1カ月に短縮
3000シート / 2000万レコード膨大なEXCELデータを容易に可視化


業種
Financial Services所在地
東京都千代田区Trust Baseが推進するマスアダプションへのビジネスモデル変革
Trust Base株式会社は、三井住友トラストグループのDX推進を担うデジタル戦略子会社として2021年4月に設立された。長年の信託ビジネスの専門性による高い専門性から、グループ内のデータが事業部間でサイロ化し、データ連携が膨大なExcelファイルやAccessなど、今では取扱いの柔軟性に欠ける旧来のデータ形式に依存する非効率性が長年の課題となっていた。同社はこの状況を打破し、より柔軟なデータの利活用を推進するためにSnowflakeを中心とした、グループ横断の「データファブリック構想」を推進する。厳格な金融ガバナンスとセキュリティを確保しつつ、グループ全体のデータを連携・活用し、従来の大型顧客中心のビジネスから、AIを活用したマスアダプションへの転換を目指す。また、金融業界では珍しいアジャイル開発を採用し、迅速な価値創出に挑む体制を整えている。
このストーリーのハイライト
- 金融機関の厳格な要件を満たすセキュアなガバナンスと監査ログを確立
- ローカルPCでは困難だった膨大なExcelデータからの脱却を達成
- AI活用を見据え、柔軟な課金体系と自然言語分析に強みを持つThoughtSpotを採用
専門性の高い信託ビジネスが抱える、データサイロ化と非効率性という課題
Trust Base株式会社は、三井住友トラストグループのDX推進を担うデジタル戦略子会社として、2021年4月に設立された。グループの中核である三井住友信託銀行は、証券代行、不動産、企業年金など、専門性の高い信託ビジネスを業務の中心に据えている。
この多様な事業構造の結果、各事業部が持つデータは、確定拠出年金法などの特別な法規制や契約に基づき個別に管理されてきた。他の事業にデータを絶対に渡さないことで法律を厳格に遵守してきた結果、データは事業領域ごとにサイロ化し、グループ内での横断的なデータ共有は極めて困難な状態にある。
さらに、データ連携が必要な場合も、従来のファイル方式、特に膨大なExcelファイル形式に頼らざるを得ない状況が続いていた。その結果、分析や業務改善に関するノウハウは個人や組織内に閉じてしまい、共通ルールやガバナンス体制の不足がデータ利活用を妨げてきた。特に大量データを扱う際にはローカルPCでの処理が必須となり、処理の遅延やファイルクラッシュのリスクが現場のストレスとなっていた。
同社は、従来の大型顧客中心のビジネスモデルをAIやテクノロジーを活用し、マスアダプションへと変革する必要があると認識している。この変革を推進するためには、顧客への最適な提案に必要な説明責任を果たせる、セキュアな基盤構築が喫緊の課題だった。
Trust Base株式会社 代表取締役CEO 兼 三井住友信託銀行 デジタル企画部 上席調査役の田中 聡氏は、従来のデータ管理体制がもたらしていた制約について次のように語る。
「従来のデータ管理体制では、たとえお客様の同意があったとしても、複数の事業にわたるデータを組み合わせて分析し提案を行う際に、そのデータ利用のプロセスを証明する説明責任を果たす仕組みが不十分でした。この制約のため、お客様一人ひとりに寄り添った最適なソリューションの提供が難しくなっていたのです」
Snowflakeが持つフルマネージドな特性、金融業界で必須とされる厳格なガバナンスとセキュリティ機能の充実、そしてデータ連携の思想が私たちの目指す世界観と一致した点にあります。その中でも、金融業界で求められる高い監査要件に対応するため、詳細な監査ログをSnowflakeがデフォルトで提供していた点を高く評価しました」
中村 大輔 氏
金融要件を満たすフルマネージドとデータ連携の思想
Trust Baseは、データ利活用を促進し攻めのデータ活用へ転換するため、グループ全体を繋ぐデータファブリック構想を立ち上げた。この基盤は、データ収集や統合から利活用までを一元的に担い、多事業のデータやサードパーティデータと組み合わされたプロアクティブな分析を可能にすることが狙いだ。
その基盤の中核として採用されたのがSnowflakeだった。同社のビジネスデザインセンター シニアマネージャー 兼 三井住友信託銀行 デジタル企画部 調査役の中村 大輔氏は、選定理由について次のように語る。
「Snowflakeが持つフルマネージドな特性、金融業界で必須とされる厳格なガバナンスとセキュリティ機能の充実、そしてデータ連携の思想が私たちの目指す世界観と一致した点にあります。その中でも、金融業界で求められる高い監査要件に対応するため、詳細な監査ログをSnowflakeがデフォルトで提供していた点を高く評価しました」
また、インフラ管理の手間が不要なフルマネージドな特性は、限られた人的リソースで運営する同社にとって、本来のミッションであるデータ活用に集中できる大きなメリットをもたらした。アーキテクチャ設計では、事業部ごとに案件専用アカウントを作成し、データのサニタイズ処理を行った後、共有可能アカウントにデータシェアリングされる。これにより、厳密なアクセス制御を維持しつつ、グループ全体のデータ連携を実現している。
この仕組みにより、元データは各事業部の管理下に置いたまま、必要なデータのみを安全に共有することが可能となった。物理的なデータのコピーや移動を伴わないため、情報漏洩のリスクを最小限に抑えながら、グループ横断でのデータ利活用を加速させる「データファブリック」の思想を具現化している。
Trust Base株式会社 ビジネスデザインセンター アソシエイト 兼 三井住友信託銀行 デジタル企画部 主務の山本 拓人氏は、「Snowflakeを中心としたアーキテクチャにより、セキュアな環境を維持しながらも、データアナリストではない一般の社員がデータにアクセスし、分析できる土壌が整いました」と、導入の意義を強調した。
アジャイル開発とデータ可視化が実現した現場の変革
データファブリック構想は、2025年10月に本番稼働を迎えた。Trust Baseは、2024年から1スプリント2週間のアジャイル開発を採用し推進しているが、この手法の柔軟性によって、仕様変更に強いというメリットが発揮され、2025年4月のBIツールの大規模な仕様変更にも迅速に対応できた。さらにアジャイル開発は、迅速なフィードバックを基にしたサービスのブラッシュアップを可能にした。
活用事例の一つとして、長年の懸案事項だった膨大なExcelデータからの脱却が実現した。ローカルPCでは処理困難だった合計3000シート/約2000万行のExcelデータがSnowflakeに投入され、ThoughtSpotを通じて容易に可視化できるようになった。この結果、数カ月かかっていたデータ整理工数が約1カ月にまで短縮された。
この可視化環境は、現場のユーザー体験を劇的に向上させている。ThoughtSpotを介して自然言語で質問し、その場でグラフ作成やドリルダウンできるようになった結果、上層部へのプレゼン中に深い質問が出た際にも、即座に対応することが可能になった。田中氏は、この変化の価値について、単なる時間削減に留まらない効果があったと語る。
「数カ月データの整理にかけていたのが、私たち大体1カ月ぐらいで可視化はできたため、だいぶ時短になりました。精神的なストレスから解放され、心に余裕を持って仕事ができるところがなによりです」
現在は、Snowflakeのデータシェアリング機能を利用し、マーケットプレイス経由を含むサードパーティデータとユーザーデータを連携・名寄せすることで、多事業のデータと組み合わせたプロアクティブな分析基盤構築が進められている状況だ。
AI機能の拡張と社会課題を解決する新規事業への展望
Trust Baseは、データの安全な取り扱いをさらに拡大するため、第2段階リリース(個人情報を含むデータ、2026年4月予定)に向けて進んでいる。これに先立ち、守りの体制を確立するためデータガバナンスオフィスを設立し、個人情報を取り扱うための環境アップデートも進めている。
今後の展望として、AI機能の拡充による高度な分析の普及、業務のクリティカルなシステムとしての活用、そしてTrust Base発の合成データ(シンセティックデータ)販売などの新規事業展開を目指す。AIがETLやデータマッチングといった煩雑なデータ整備の作業を担うことでデータ管理側の運用負荷が軽減され、データ活用のスピードが劇的に向上することが期待されている。中村氏は、AIがもたらす時間短縮効果について次のように述べる。
「AIを通じた自動化というところに対してすごい期待感があります。ユーザーに対しても、今まで1カ月かかっていたものが、数日できますよ、というようなフィードバックにも繋がっていくはずです」
究極的には、信託銀行の深いノウハウとデータを組み合わせ、年金や住宅ローンなどの情報を統合し、相続発生時の煩雑な書類手続きを大幅に削減できるような、社会課題を解決する非連続な仕組みの創出を目指している。さらに、データ活用を安全に広げるため、Snowflake側での加工が増えることを想定し、リネージ機能を活用してデータの加工履歴を追跡可能にし、ガバナンスを維持する方針である。この取り組みは、グループ内だけでなく他の金融機関ともデータを共有させ、金融業界全体のデータ活用へと繋がる可能性についても視野に入れている。
Trust Baseは、Snowflakeが提供する「Easy, Connected, Trusted」という価値観のもと、金融DXのさらなる革新に挑戦し続ける。


