
カスタマーストーリー
ライフスタイルビューティーブランド「N organic」「FAS」を支える Snowflake Cortex AnalystとGen2 Warehouse。AI分析の自走化とデータコスト20%削減を両立
「N organic」のシロクはSnowflakeでAI分析の自走化とコスト20%削減を両立。分析工数を週1日削減し 、年間数百万のコストカットを実現。意思決定を高速化させたAI活用事例です。
20%データ処理コストと速度を減少
1日分析リードタイムを週に1営業日削減


業種
Retail & Consumer Goods所在地
東京都渋谷区AI分析の自走化とコスト最適化を推進する「Cortex Analyst」と「Gen2 Warehouse」
ライフスタイルビューティーブランド「N organic」「FAS」を展開する株式会社シロクは、「もっと、つくる。ずっと、のこる」をコンセプトに、長く愛されるプロダクト開発を進めている。Snowflake導入によりデータ利活用は活性化したが、データのサイロ化や分析リソースの逼迫、コスト増加という新たな課題に直面した。同社はこれを解決するため、Snowflake Cortex AnalystによるAI分析基盤の整備と、Gen2 Warehouseによるコスト最適化に着手した。これにより、分析工数の大幅削減とデータコスト20%改善を実現し、誰もが簡単かつ正確に高品質なデータ分析が行える仕組みを社内展開している。
このストーリーのハイライト
- Cortex Analystを活用し、ビジネス部門のAI分析を自走化
- セマンティックモデルにより、SQL自動生成の精度とガバナンスを両立
- Gen2 Warehouse導入で、データ処理コストと速度を20%改善
データ統合と利活用の活性化がもたらした新たなサイロとリソースの壁
株式会社シロクは、サイバーエージェントの子会社として、スキンケアブランド「N organic」や「FAS」を主力事業として展開している。データ基盤を構築する以前、データ分析にはRedashを通じたMySQLデータベースの直接参照が行われていたが、クエリの作成やデータの定義が各ビジネスユーザーに委ねられていたため、事業部間で重要指標の解釈が異なるといった問題が発生し、データのガバナンスの欠如が大きな課題となっていた。
この状況を打開するため、同社は「N organic」と「FAS」を含む全ブランドのデータをSnowflakeで統合的に一元管理する体制へと移行した。Snowflakeの導入は、ECサイト、直営店POSデータ、広告データなど多岐にわたるデータソースの取得を可能にし、各事業部におけるデータ利活用を大きく活性化させた。
しかし、データ活用が促進された結果、新たな課題が浮上した。まず、多領域のデータを取得したことで、今度はKPIの定義の不一致が原因となり、再びデータのサイロ化が再燃した。各事業部における会議でデータが異なるという事態も発生していたという。
次に深刻だったのは、分析工数の逼迫である。データ利活用が活発になった結果、データチームへの分析依頼が爆発的に増加した。当時2名体制であったデータチームは、月に15〜20件、すなわち「1営業日1依頼」というペースでの対応を求められた。これにより、データチームが要件定義から分析、結果の共有までを伴走せざるを得ず、リードタイムが長期化し、事業の意思決定のスピードを阻害していた。
さらに、データリソースの増加に伴い、特に会員数310万名(2024年4月時点)を超える既存顧客データを含むECサイトの定期実行処理コストが肥大化し、データコストの増加も無視できない問題となっていた。
同社は、これらの複合的な課題に対し、SnowflakeのAI機能を活用した抜本的な解決策を模索し始めた。
「Cortex Analystは、Snowflake Cortex AIの機能の一つであり、ビジネスユーザーがテキストベースの質問を投げかけるだけで、AIがSQLクエリを自動生成し、分析結果を返すことができます。これにより、データチームが介在せずに事業部メンバーが自ら分析と実行のPDCAサイクルを回し、分析工数を削減することを目指しました」
文(かざり)翔 氏
Cortex AnalystとGen2 Warehouseを組み合わせたAI分析基盤の構築
シロクが採用した解決策は、Snowflake Cortex Analystによる分析業務の代替と、Gen2 Warehouseによるコンピューティングリソースの最適化という二軸のアプローチだった。経営データ本部でデータ基盤構築に従事する文(かざり)翔氏は、Cortex Analystの採用について当時を振り返る。
「Cortex Analystは、Snowflake Cortex AIの機能の一つであり、ビジネスユーザーがテキストベースの質問を投げかけるだけで、AIがSQLクエリを自動生成し、分析結果を返すことができます。これにより、データチームが介在せずに事業部メンバーが自ら分析と実行のPDCAサイクルを回し、分析工数を削減することを目指しました」
このAI分析基盤の構築において、同社はAIの回答精度とデータガバナンスの維持を最重要視した。まず、ビジネスドメインを定義したセマンティックモデル(YAMLファイル形式の仕様書)を作成し、AIがデータを適切に解釈できるようにメタデータ層を整備した。LLMモデルが複雑なJOIN処理に弱いという特性を考慮し、1つのドメインに対して1つのテーブルマートに集約することで、精度の向上を図っている。
また、AIが誤ったクエリを生成したり、機密性の高いデータを不用意に参照したりすることを防ぐため、Cortex Analystの参照権限をAI分析専用に設計されたスキーマに限定した。文氏は、このガバナンス設計について、次のように語る。
「AIに適切に精度高く学習させるためには、ある程度整ったAIに整った基盤というものを提供してあげないと精度が落ちてしまうため、あえて権限を絞るというところを取っています」
この仕組みにより、ビジネスユーザーは日常使用するSlackを通じて自然言語で質問を投げかけるだけで分析が可能となり、特に直営店における週次のレポーティング業務などは、既にAI分析が完全に代替している。
一方、コスト最適化については、Snowflakeの次世代ウェアハウスであるGen2 Warehouseを導入した。Gen2 Warehouseはリソースを最適化し、コストとパフォーマンスを改善する機能を有しており、同社はCortex Analyst用のデータマートを構築するためのdbt定期実行ワークロードに適用した。
リードタイム短縮と分析品質向上。データ処理コスト20%削減の達成
Snowflake Cortex AnalystとGen2 Warehouseの導入は、シロクのデータチームとビジネス部門の両方に大きな変化をもたらしている。
まずは、分析工数の大幅な削減とデータ分析のリードタイム短縮が実現した。データチームへの依頼が減り、ウィークリーで1営業日/人程度の工数削減につながっている。最も大きな変化は、ビジネス部門が自ら分析を完結できるようになったことによる、PDCAサイクルの劇的な高速化である。文氏は、その効果を次のように実感している。
「分析から実行までのリードタイムが大幅に短縮され、PDCAサイクルが格段に上がったと感じています。このスピード感が、現場の意思決定の高速化に貢献しています」
また、データ品質も向上した。ドメインごとにテーブルを分離し、複雑なJOINを回避したセマンティックモデルの設計により、人間による複雑なデータ処理のミスや、分析の出戻り工数が大幅に減少した。
Snowflakeの次世代ウェアハウスであるGen2 Warehouseの導入効果は明確に現れた。このGen2 Warehouseは、Cortex Analyst用のデータマートを構築するためのdbt定期実行ワークロードに適用されたが、検証の結果、クレジット消費量と処理速度が従来のLarge Warehouseと比較して、ともに20%改善した。この効率化は、年間で数百万単位のデータコストカットに直結し、同社の一般的な利益率で換算すると、数千万から数億円規模の売上インパクトに相当するものだ。文氏自身が担当する開発や分析においても、従来のSmallサイズのウェアハウスをGen2 Smallに切り替えたことで、圧倒的に早いと感じており、現場の業務スピード向上にも貢献しているという。Gen2 Warehouseがリソースを最適化し、コストとパフォーマンスを改善する働きが、データ利活用の土台を支えている。
AI分析の全領域への代替とML領域での新たな収益機会の追求
シロクは、AI分析基盤の整備をさらに推し進め、分析業務を全てAIに代替させることを今年度の目標に掲げている。
そのための具体的な取り組みとして、Cortex Analystに読み込ませるデータ領域の拡充を進め、データに「100%のガードレール」を敷くことで、データ品質とガバナンスが確保された基盤の実現を目指している。
また、AI分析の精度を高めるために、LLMモデルの選定にも積極的に取り組む。日本リージョンでは利用が限られていた分析特化型のLLMモデルを、クロスリージョン推論を利用して適用することで、分析アウトプットの精度向上を図る計画である。
Cortex Analystによって分析工数から解放されたデータチームのリソースは、レコメンドなどのML領域での技術活用に振り向けられる。Snowflakeを起点として、データが福利的に利益を生み出す仕組みを構築し、ビジネスの成長を支援していく。
事業面では、オンラインD2Cに留まらず、直営店、ドラッグストア、プラットフォームなど、マルチチャネルで展開しており、これらのオフライン領域を含む全領域のデータをSnowflakeで統合分析できる状態にすることが、ブランド成長の前提となる。
シロクは、Snowflake AIデータクラウドを基盤として、AIによる全社的なデータ利活用と意思決定の高速化を実現し、ライフスタイルビューティーブランドとして次の成長ステージへと着実に歩みを進めている。


