
カスタマーストーリー
食品スーパーのDX推進に向け、内製化を前提にした新たな分析基盤をSnowflakeで構築。内製化の基盤実現に加えランニングコストを削減
ヤオコーは、内製化に向けSnowflakeで分析基盤を刷新。dbt導入でコストを3割削減し、利用率8割の帳票DXを実現。ベンダー依存脱却と保守工数減を両立したDX事例と、AI活用を見据えた展望を紹介します。
30%分析基盤運用コストを3割削減
80%利用率ベース8割の既存ダッシュボードの高度化を実現


業種
Retail & Consumer Goods所在地
Japan現場の裁量をデジタルで最大化。ヤオコー流、攻めのデータ基盤刷新
関東圏で食品スーパーマーケット事業を展開するヤオコー。同社の強みの一つは、店長を中心とした店舗スタッフが裁量を持ち地域ニーズに応える店づくりに取り組む点にある。また個店経営の進化に向けたDXによる店舗支援は、AIによる自動発注システム構築など、大きな成果につながっている。その一環として同社が取り組んだのは、将来的な内製化を前提としたデータ基盤のモダナイズだった。Snowflakeを採用した新基盤は、運用コスト削減をはじめ、目に見える効果を生み出しつつある。
このストーリーのハイライト
- 外注に頼らざるを得なかったデータ分析基盤構築の内製化
- データ分析基盤のランニングコストの削減
- インフラレイヤーの保守メンテナンス工数減
データ利活用を通した個店支援を推進する中で、データ基盤の課題が浮上
食品スーパーマーケットを展開するヤオコーは、2025年3月期まで36期連続で増収増益を達成する成長企業だ。単体で200店舗、グループ企業を含めると243店舗(2025年11月末時点)を関東圏に構える。営業収益は食品スーパーマーケット中4位(2025年3月末時点)。営業利益率はトップで2位以下を大きく引き離している。同社の強さの背景には、「個店経営」と名付けられた独自の経営方針が存在する。通常、スーパーマーケットチェーンでは標準化・均一化することが一般的だが、同社は、店長を中心とした店舗側が地域の特性を活かした独自の取組みを行うことを推奨しており、各店舗は独自のイベントや品揃えで、他社にはない魅力を創出している。
しかし店舗側の創意工夫だけでは、労働人口の減少という問題に対して、いずれは限界が訪れることは避けられない。こうした考え方のもと同社が取り組んできたのが、デジタルを通した店舗支援の新たな仕組みづくりだった。4年ほど前からIT部門の組織強化をはじめ、自社主導でDXを進められる体制をつくり、ヤオコーPayやネットスーパーやECによるCX向上、モバイル端末を活用した店舗向けの業務支援アプリ開発など、すでに大きな成果を挙げている。特に注目したいのは、2022年から運用をスタートしたAI自動発注システムだ。ヤオコー店舗では約15,000SKUを管理しているが、その約11,000SKUに対応する自動発注の仕組みは、発注業務を約85%削減し、在庫の約15%削減をもたらした。
その取り組みの一つが、データ分析基盤のモダナイズだった。執行役員 CDO(Chief Digital Officer)デジタル統括部長の小笠原 暁史氏は、以前の課題をこう振り返る。
「当社のデータ基盤はAWSへのリフトとデータ統合までは進んでいたのですが、開発をベンダーに外注していた関係上、コストとスピード感の両面でデータ活用領域の拡大やシステム間連携の柔軟性の担保において、大きな障壁になりつつありました」
「データ連携基盤のモダナイズが進んだことにより、次の投資領域はDWH層の刷新であると判断しました。データ基盤全体の価値を最大化するには、連携から分析まで一貫したアーキテクチャが不可欠です。SnowflakeはS3との親和性が高く、当社が目指すアジャイルなデータ活用基盤を実現する最適解だと考えました」
小笠原 暁史 氏
内製化とモダン化を両立するため、Snowflakeを中核とするデータ基盤へ刷新
課題は開発外注の弊害だけではなかった。プロダクト開発担当マネージャ・テックリードの吉岡 瑛一郎氏はこう説明する。
「以前のコンピュートリソース管理の運用負荷はその一つでした。また当社はこれまでAWSに集めたデータの連携や変換にC#言語による独自フレームワークを採用していましたが、ライブラリの制約もあり、内製化の推進ではこの変換の仕組みも見直したいと考えていました」
これらの課題解決に向け、同社が注目したのはデータ基盤としてのSnowflakeとデータ変換のツールであるdbtによるソリューションだった。
「直面する課題の解決は従来の環境でも不可能ではありませんでしたが、負債が残りやすいアーキテクチャは避けたいと考えました。CI/CDやDevOpsという考え方を前提に、運用負荷が低く技術的負債を残しにくい解決策を検討する中で浮上したのがdbtによるデータ変換であり、dbtと組み合わせるデータ基盤として自ずと浮かび上がったのがSnowflakeでした」(吉岡氏)
パートナー選定において最重視したのは、Snowflakeとdbtという二つのキーワードだった。
「私たちが内製化に向けて歩み出す上では、信頼できるパートナーが必要でした。その選定で強く意識したのは、Snowflakeとdbtの組み合わせで、双方に関する技術力でどちらか一方ではだめでした。この2つの技術に強い企業であれば、CI/CDやDevOpsのみならずIaC等の周辺技術やモダンな技術に対するキャッチアップ力もあるはずだと考えたことがその理由です」
最終的にパートナーとして選定したのはDATUM STUDIOだった。DATUM STUDIO 株式会社 執行役員 菱沼 雄太氏はこう振り返る。
「吉岡さんが『dbtとSnowflakeに強い企業探しています』とSNSに投稿されているのを目にした弊社のメンバーが反応したことをきっかけにお話しを伺い、結果として当社をパートナーとして選んでいただきました。その当時まさに私たちもdbtに注目し、活用を推進していたところだったので『これは当社が支援させていただくほかないよね』と、同僚たちと盛り上がったことを覚えています」
Snowflake導入と内製化への第一歩。利用率ベースで80%超の帳票DXを実現
データ基盤モダナイズに向けたプロジェクトが本格的にスタートしたのは2023年12月のこと。ヤオコーの新データ基盤には、データロードにSnowpipe、データ変換にSnowflakeとdbt、データ可視化にはSnowPark Container Service(SPCS)+Domoの組み合わせが採用され、2025年11月に全社的な運用がスタートしている。
「当社の場合、データが膨大であることもあり、データロードコストは見落とせない観点の一つでした。Snowpipeを採用した第一の理由は、コスト面のメリットでした。また当社がデータ連携基盤として採用しているAmazon S3との親和性の高さも評価のポイントでした。データ可視化については、当初別のBIツール採用も検討したのですが、膨大な量のデータ分析をビジネス側が満足するスピードで行う選択肢はStreamlit以外にないという結論に至りました」(吉岡氏)
ただし、DXの観点から既存帳票のデジタルによる再現を最重視するなか、導入検討当初のStreamlit in Snowflakeでは制約が存在するのが実情だった。この問題を同社は、Snowpark Container Service(SPCS)上にStreamlitを置くことで解決し、帳票デジタル化を実現している。
プロジェクト進行中の2025年6月にリリースされたGeneration 2 Standard Warehouse (Gen2)によるELT速度向上も注目したいポイントだ。
「実際の環境でのパフォーマンスを検証した上で導入に至っていますが、適用前後を比較すると、ほぼすべてのデータモデルで処理速度が向上しています。ウェアハウスの価格が高くても、それ以上に稼働時間が短くなれば結果としてコストが下がるわけですから、早いだけでなく安くもなり、特に高頻度のバッチ処理に関しては大きな効果がでています。」(吉岡氏)
データ基盤モダナイズの効果としてまず挙げられるのは、運用コストの大幅な圧縮である。
「当社はこれまで、分析システムのレスポンスを担保するために大規模なインスタンスを確保することで対応してきました。ウェアハウスのスケールアップなどにも柔軟に対応できるSnowflakeへの移行により、3割のランニングコスト削減を実現すると見ています。また当初からの課題である、データ分析基盤の内製化に向けた大きな一歩が踏み出せたことも高く評価しています。現時点では、ほぼDATUM STUDIOさんに開発をお任せしていますが、スキルアップを通し、一つ一つ小さなところから内製化に取り組み始めているという状況です」(小笠原氏)
もう一つの課題だった既存ダッシュボードについては、11月段階で約80種類の社内ダッシュボードのうち、主要20のダッシュボードの移行を実現。これだけで利用率の約80%をカバーし、第二弾としてのリリース予定を加えると、90%がカバーできる環境が実現されるという。さらに保守メンテナンス工数減も大きな成果の一つだ。
AIエージェント現場でのデータ利活用を推進し、さらなる個店経営の進化を目指す
新たなデータ分析基盤の開発を終えた同社にとって、次の課題は内製化の実現とデータ利活用の一層の促進である。
「C#のようなユーザー数が限られてしまう開発環境から、PythonやSQLをはじめとするユーザーグループやエコシステムが存在する環境に移行できたことは大きな成果です。インフラレイヤーの保守メンテナンスへの対応がほぼ不要になったことと合わせ、今後、内製化に向けたスキルアップにより注力したいと考えています」(吉岡氏)
今後の展望として挙げるのは、全社的なデータ利活用推進に向けたデータ分析用のAIエージェントの開発だ。
「Snowflake上で生成AIモデルが利用できるCortex AIはもちろん、多様なAI関連ツールを活用し、店舗側がよりスムーズにデータにアクセスし、活用できる環境を構築していきたいと考えています。特にビジネス側のデータ利活用推進においては、メタデータ整備も大きな意味を持ちます。今後は、AIによるセマンテックビュー開発を通し、個店支援を推進していきたいと考えています」(吉岡氏)


