
カスタマーストーリー
お客様にも社内ユーザーにも分かりやすく利用ルールを再整備 リソース利用状況に応じてコストを分担する仕組みを構築し、 高度なデータガバナンスと自由なアクセスの両立を実現
全社的なデータ基盤構築において、高度なデータガバナンスと自由なデータアクセスの両立という課題に直面したNTTドコモ。厳格な個人情報保護のルールや事業部門ごとの複雑な規則が足枷となる中、運用ルールを全面的に見直し、スキーマを再構成。データへのアクセス性を向上させるとともに、管理工数の大幅な削減に成功した取り組みについて。
KEY RESULTS:
0件
データ利用に関する問い合わせがほぼゼロに


業種
Telecom所在地
東京都千代田区高度なガバナンスと自由なアクセスを両立するデータ基盤改革
NTTドコモが全社規模のデータ基盤構築とその利活用促進に取り組む過程で浮上した大きな課題の一つが、高度なデータガバナンスとデータへの自由なアクセスの両立だった。個人情報の取り扱いには厳密なルールの適用が求められるが、その一方で事業部門、サービスごとに異なる複雑なルールはデータ利活用において大きな足枷となっていた。その解決のため同社は、運用ルールの全面的な見直しを実施。最適化された運用ルールに基づきスキーマを再構成することで、データへのアクセスのしやすさと管理工数の大幅削減を実現した。
Story Highlights
- リソース使用状況に応じた社内利用者別の費用分担
- 利用ルールを全面的に見直し、より分かりやすく
- 適用ルールに基づきスキーマを再構成
オンプレベースの基盤がデータ利活用の足枷に
「つなごう。驚きを。幸せを。」この言葉をブランドスローガンに、「つなぐ」ことを価値創造の源泉として、パートナーと共に新しい価値を生み出す取り組みを進めるNTTドコモ。その実現に大きな役割を果たすことが期待されるのが、1億人の会員のリアル行動とネット行動の双方を顧客属性に紐づけて把握することが可能なdポイントクラブの存在である。
同社がdポイントクラブ会員情報を含む、自社が擁する膨大なデータを事業部門をまたいで一元管理し、一層のデータ利活用を促進する取り組みを開始したのは2018年のことだった。その際、同社はオンプレミスに軸足を置き、一部クラウドサービスを組み込んだ形でデータ基盤を構築している。その背景には、センシティブな個人情報を含むdポイントクラブ会員情報の存在があったという。だがオンプレミスに軸足を置いたデータ基盤は、データ利活用の進展に伴い、新たな課題に直面することになった。全社的なデータ基盤統合において中心的な役割を担った、情報システム部 データ基盤担当 担当課長の村中 裕太氏はこう説明する。
「オンプレミスに軸足を置いたデータ基盤の課題は、大きく四つ挙げられます。一つはデータの抽出元である上位システムのトラブルのリカバリに少なからぬ工数・時間が必要になってしまう点です。当社のデータ基盤は多くのシステムと連携していますが、その一つに遅延が生じると、そのリカバリに並行して実行されるシステム連携との調整が必要になり、少なからぬタイムラグが生じることが避けられませんでした。データ遅延・欠損は、特に通信事業への影響という観点で大きな悩みどころでした。次がニーズに見合った計算リソース提供の難しさです。この問題は、処理やデータロードの遅れという問題につながっていました。三つ目は、分析ツールの制約です。ツールを入念に検証し、全社共通ツールとして提供するという当初のスタンスは、ビジネスサイドのニーズへの対応の困難さにつながっていました。最後がデータ基盤の一元化だけでは解決できないデータ利活用のハードルです。事業部門やサービスが保持する情報は、データ運用ルールをはじめとするメタ情報がそれぞれ異なりました。そのため、事業部門をまたいでデータ分析を行う場合、その都度、我々管理部門を介してデータを確認する手間が生じていました」
スケーリングの柔軟性が計算リソースに関する課題を解決
これらの課題を解決するため全面的なクラウドシフトを選択した同社が移行先として選んだのはSnowflakeのデータ基盤だった。その理由を村中氏はこう説明する。

「私たちがSnowflakeを選んだ最大の理由は、計算リソースとストレージが分離され、高いスケーラビリティが確保できる点です。それにより、遅延リカバリの難しさやデータロード時間の読みにくさといった課題が解決できると考えました」
村中 裕太氏
Snowflakeが備えるスケーラビリティおよび、ビジネスサイドのニーズやスキルセットに応じ分析ツールが選択できる環境が、社内ユーザー数、発行クエリ数の飛躍的な拡大に大きな役割を果たしたとのこと。特に社内ユーザーアカウント数については、短期間にオンプレ時代の10倍に達したという。
Snowflakeへの移行を通して同社が目指したのは、実はそれだけではない。情報システム部 データ基盤担当 担当部長の日影 浩隆氏はこう説明する。
「まず挙げられるのは、コストガバナンスの実現です。オンプレ時代は情報システム部の予算でデータ基盤を運用していました。右肩上がりのデータ利活用に限られた予算で対応することは現実的ではない上、それに伴う利用者のコスト意識の薄さも大きな課題でした。例えば機械学習では計算リソースに大きな負荷が掛かりますが、以前の環境ではコストに見合った成果が得られているか知るのは難しいのが実情でした。スケーリングが容易なSnowflakeの場合、計算リソースをプロジェクト別に提供するという運用が可能です。それにより、リソースをどれだけ利用したか、社内利用者側でも把握することが可能になります」
顧客視点でデータ運用ルールを見直しシステムに実装 スキーマ分割でデータ管理を効率化
もう一つの取り組みが、よりシンプルなデータガバナンスの実現である。情報システム部 データ基盤担当 担当課長の山本 康二氏はこう説明する。
「個人情報の管理・運用については法整備も進んでいますが、実際の業務に適用しようとした場合、グレーゾーンも多いのが実情です。一方当社ではサービスごとに利用規約が設定されてきた関係上、お客様が理解しにくく、なおかつ社内における適切なデータ利活用のために多大な労力を要する状況が生じていました」
こうした状況の改善に向け、まず取り組んだのがデータ運用ルールを全面的に見直し、全社的に統合する取り組みだった。PIA(プライバシー影響評価)と名付けられた有識者と現場メンバーによる会議体では、法令遵守はもちろんのこと、お客様に価値を提供するにはどのような運用が適切なのかという観点で運用ルールの見直しが図られたという。
「法的な観点に立ってルールを考えると、どうしても利用規約を厳密化するという方向に向かいがちです。しかしルールの複雑化は、データ運用を複雑にするだけでなく、お客様の理解の困難さにもつながります。私たちはお客様視点でよりシンプルな運用ルール制定に取り組みましたが、結果としてそれは社内ユーザーのメリットにもつながっています」(山本氏)
事業部・サービス別に設定されていた複雑な運用ルールは、一連の取り組みを通し、「プライバシーポリシー準拠」「法令準拠」「個別契約準拠」という大きく三つのルールに集約された。NTTドコモの事例で特に注目したいのは、ルールに基づいて分割されたスキーマを用意し、運用ルールをシステムに実装した点にある。そのメリットを山本氏はこう説明する。
「以前の環境では事業部を跨いだデータ利活用では、多くの場合、利用条件などを管理者に問い合わせる手間が生じていました。ルールを統合し、適用されるルールに応じてスキーマを構築することで、こうした手間はほぼなくなりました。またアップロードの際も、それぞれのデータに応じ、各スキーマにロードするだけで済みます。管理面でかなりの工数が削減でき、ミスが発生しにくい環境が実現できています」
さらにデータロードに関する意識の変化もSnowflakeへの移行のメリットの一つだと山本氏は言う。
「以前は上位システムからのデータ連携時刻や、システムリソースを考慮しながらデータロードのスケジュールを調整していました。今回、ワークロードの分離やスケーリングが柔軟に行えるようになったことで、データ連携を受けて速やかにロードすることが可能になっています。リアルタイムなロード処理は当社にとって新しい世界観といえます」
AIを活用し一層のデータ活用を推進
同社が今後の取り組みの一つとして掲げるのは、生成AIの活用である。村中氏はその狙いをこう説明する。
「ビジネスの現場に目を向けるとコーディング知識はあまりないが、データ利活用のアイデアを数多く持つ人は珍しくありません。こうしたニーズを確実に救い上げようとした際に生成AIが果たす役割は極めて大きいと考えています。また
マーケティングにおけるペルソナ作成でも生成AIが果す役割は大きいはずです。当社が保有する大量データのポテンシャルを最大限引き出すという観点からも、Snowflake CortexをはじめとするAIの進化に注目しています」
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