注:本記事は(2022年1月11日)に公開された(Does Data Monetization Seem Daunting? Here’s How to Start)を翻訳して公開したものです。

『The Adventure of Copper Beeches(邦題「ぶな屋敷」)』という本の中で、稀代の名探偵シャーロック・ホームズは次のように叫びます。「データが必要だ!粘土なしで煉瓦は作れない。」つまり、いかに有名な探偵であっても、謎を解くには情報の集積が不可欠だということです。世界的なコロナ感染症の拡大から抜け出そうとしている今(できればそうであってほしい)、データは再編に向けて必要な要素でもあります。コロナ後の新たな世界に向けて企業は改革に向けて動いており、既存顧客の詳細な分析や新規顧客のホライズンスキャニングなど、データを使用した事業の見直しをはかっています。また、パートナーや顧客が同じことを実施できる方法も模索しています。内部でのデータ使用による収益化だけでなく、外部向けの商用化も開始しています。この分野にビジネス機会を見出している企業は、以前ではデータ戦略を有していたが、今はデータそのものが戦略となっている、と話しています。

この新たな枠組みでは、データをアセットと捉え(この点は以前から言われています)さらに製品として捉える必要があります。この点も、最近ではよく耳にするようになりました。データの世界では、データメッシュの枠組みに「製品としてのデータ」が基本原則として組み込まれています。データ製品に関する技術的論議は、本来の筋を離れ、アーキテクチャ的なものとなっています。「量子アーキテクチャ」という概念は便利ではあるものの、特定のオーディエンスを困惑させる可能性があります。

製品の基本概念は、非常に明確です。Oxford Dictionaryによれば、製品とは「販売用に製造または加工された品物や物質」と定義されています。私たちは、データも販売用に製造または加工された構成要素、と捉えるべきです。そして、ここで言う「販売」とは、組織の内外を問わず、価値の交換を指します。内部的使用がチャージバックやその他の価値の交換となるかは議論の余地があります。チャージバックモデルを提唱しているシェアードITサービスモデルもありますが、実施するにはメカニズムが複雑で公正さに課題を抱えています。そのためこの議論は置いておいて、製品という点に注目してみましょう。

データを市場に投入する

多くのデータリーダーにとって、ビジネス機会は明白です。頻繁に引用されているMcKinsey調査によると、データコラボレーションにより年間3兆ドルが生じていると見積もられています。データコラボレーションは、他者によるデータの使用や価値の抽出を可能にするデータシェアリングから始まります。つまり、データを外部的に収益化するということです。しかしほとんどのデータリーダーは、始めることすら難しいと考えています。彼らは次のような疑問を抱えています。

どのデータを?最初に思いつくのは、データチームにデータ製品の調査を依頼することです。従来データチームが主導してきたからです。違いますか?今回は必ずしもそうである必要はありません。もし彼らが主導するとしても、最初に行うべきはビジネスステークホルダーと話し、どのデータソースまたはデータ「ドメイン」に関心があるか、意見を聞くことです。「顧客データ」なのか「製品データ」なのか。顧客データは複数のソースから生成される、顧客プロフィール、取引データ、コンタクトセンターのログ、その他顧客に関係するすべての内容が含まれます。製品データには、製造データ、発売データ、販売および返品、欠陥、その他製品に関係するすべてが含まれます。データチームは自分たちがどのようなデータを保有しているかを把握していても、潜在的なユースケースといった点まで理解できているとは限りません。

どのユースケース?次の質問は、誰が、どのようにこのデータを使用するのか、です。データチームの中には、自分たちでユースケースを特定しようとして膨大な時間を費やすことがあります。うまくいく場合もありますが、これは話し合いで決めることではありません。最良の方法は、内部的や外部的の双方で、現在データがどのように使用されているのかを聞くことから始め、他者による同様の使用法が可能かどうかを検討することです。例えば、電気通信事業者は都市におけるネットワークトラフィック密度を使用し、窓口の開設場所を判断しています。驚くべきことに、小売業者、開発者、さらに都市計画家も場所の選定に同じデータを使用しています。または関連するユースケースを想像することもできます。ジェットエンジンメーカーは航空業務のデータを使用して将来的な製品の改善に役立てています。航空会社は、同じデータをフライトの効率化に役立てることができます。ERPのようなエンタープライズアプリケーションには、いまや、ダウンタイムコストや運用利益といった指標を顧客間で比較できるベンチマーキングサービスが付帯しています。これは「隣接可能性」と呼ばれるもので、つまり「ポテトも一緒にどうですか?」ということです。

製品やサービスの形態は? この質問では、実際のデータ製品やサービス、さらに可能な限りさまざまな形態を検討します。必ずしもデータ自体のことだけとは限りません。データの販売においてビジネス価値をもたらすには、アプリケーションやアナリティクスモデルの構築など、開発者やデータサイエンティストの関与が必要です。けれども、もしデータ製品やサービス自体が、ビジネスワークフロー内で顧客に直接インサイトをもたらすアプリケーションやアナリティクスモデルであったとしたら、即時の決定や行動が可能な場合があります。例えばPepsiCoでは、マーケティングキャンペーンやメディアプレースメントの効果測定のためにデータチームが社内向け製品であるROIエンジンを作りました。このアプリケーションは60以上ものソースからデータを集約し、eコマースからさまざまなブランドやリージョンまで、事業にまたがるユーザーにインサイトを提供しています。このインサイトのおかげでマーケターは、どのキャンペーンやプレースメントが効果的だったかを判断し、どれを継続するのか、あるいは改善するのかを決定することができます。

データそのものとデータアプリケーションの間(上図参照)には、特定のビジネスコンテクスト内での発見やアクセスを促進するカスタマイズされたインターフェースがあります。例えば、Atheon Analytics SKUtrakは、移り変わりの激しい消費財サプライヤーや小売業者に対し、物流アナリティクスによりデータドリブンな意思決定をサポートするためのインターフェースを提供しています。製品やサービスはより多くのインサイトを直接ビジネスコンテクストに落とし込めるため(図内のオレンジの曲線に沿って変化)、価値創出までの時間が短縮されます。

データそのものを製品として提供する際、ダイレクトデータシェアリングはダウンロードやファイル転送によるデータの複製や送信よりも、有効な選択肢を提供しています。複製や送信には、より大きな労力を要するだけでなく、データはその時点でのスナップショットにすぎないため、すぐに古いものとなってしまいます。取消が不可能ではない場合でも、データへのアクセスもさらに難しいものとなります。

価値とは?この質問は製品チームを、永遠に(と言っていいほど)困惑させるものです。保有しているデータはどの程度価値があるのか、また製品としての価格をどれぐらいに設定すればよいのか。この点について、さまざまな価格を試し、各価格での需要を測定することで正確に絞り込むため、これはターゲティングに似ていると言うデータプロバイダーもいます。他には、内部使用で抽出した価値から推定する、と言うデータプロバイダーもいます。また別のアプローチとしては、顧客やパートナーと直接連携して、データの適用から生じた価値の増加分をベンチマーキングや測定する方法もあります。例えば、あるマーケティングキャンペーンが特定のコンバージョン率を達成したとして、新たなデータで特定のターゲットを識別することでコンバージョン率が向上したとします。この向上分は、データに起因するもの言うこともできるでしょう。すべての例において、新たなデータ提供を試し、提供する価値を決定する際はアジャイルなアプローチを採用することが重要です。最終的には、市場が価格を決定します。

市場への参入方法は? ほとんどの企業にとってデータの商用化は主要な事業ではありません。GE AviationやSiemens Mobilityはデータ製品やサービスを提供していますが、航空機エンジンメーカーや機関車メーカーであることは変わりません。成功する商用化とは、市場投入への適切なパートナーやチャネルの選択から始まるケースが少なくありません。多くのコンサルタント会社やサービスプロバイダーは、市場投入に向けたプロセスをサポートしています。さらに、データマーケットプレイスの台頭におり、データの発見やアクセスがより簡単になっています。Snowflakeデータクラウドは、顧客やパートナーと直接的に、あるいはパートナーのエコシステム間のデータエクスチェンジ設定を介して、データシェアリング(および販売)を促進します。例えば、5,500以上の都市に4万店舗を抱え、取り扱う製品数が5億種類を超えるInstacartは、購買トレンドを小売業者やCPG顧客と共有しています。

より幅広い露出と商用機能を提供するSnowflakeデータマーケットプレイスは、数百社ものデータプロバイダーの拠点となっており、利用者はデータの専門家だけではありません。ますます多くのSnowflake顧客が自社のエンタープライズデータのマーケットプレイスへの移行を検討しています。その先頭に立つADPは米国の給与全体の約25%を処理しており、米国の労働人口や収入に関する、集約され非特定化された、地理ベースのデータをSnowflakeデータマーケットプレイスに提供しています。1-800-Flowersのような他の企業も、より詳細な分析や業績向上のための新たなデータソースの特定に、Snowflakeデータマーケットプレイスを活用しています。

データの収益化を始める5つのステップ

データ製品やサービスを構築し、内部のステークホルダーや外部のパートナー、顧客に提供を開始するための5つのステップを以下にまとめました。

  1. データ製品やサービスを構成する原料としてのデータソースまたはドメインの構築。
  2. データについて、既存の使用方法を特定し、関連や隣接するアプリケーションを探索するために、内部ステークホルダー、パートナー、顧客にアンケートをとり、可能性のある使用法を特定。
  3. データ製品やサービスの最適な形式の決定。(生の、未加工データ、エンリッチデータ、カスタマイズされたインターフェース、コンテクスト限定アプリケーションなど)
  4. 新たな提供物を試し、その価値を決定するためのアジャイルアプローチの採用。
  5. Snowflakeデータマーケットプレイスを介した収益化のように、市場投入に向けた適切なパートナーやチャネルの選択。 

この5つのステップについてのより詳しい議論に興味のある方は、Snowflakeウェビナー、データの収益化を始める5つのステップ(2022年1月25日、1:00 p.m. GMT / 2:00 p.m. CET)にご参加ください。