
カスタマーストーリー
AIを活用したStreamlit in Snowflakeアプリ開発で マーケターの業務プロセスを自動化 クリエイティブ時間確保に 大きな手応えを得る
Cookie制限や多様なメディア対応に直面するデジタルマーケティング担当者。Hakuhodo DY ONEが、Streamlit in Snowflakeアプリを使って月40時間の工数削減を実現したデータ連携の自動化とは。
KEY RESULTS:
40
時間/月工数削減
10
施策/日を想定した場合


業種
Advertising, Media & Entertainment所在地
東京都渋谷区大幅な工数削減に成功したデータ連携の自動化
サードパーティCookie利用制限や、多様化するデジタルメディアへの対応から機械学習モデルをはじめとするテクノロジー活用まで、デジタルマーケティング担当者が取り組むべき課題は山積みだ。博報堂DYグループのデジタルコアとして設立されたHakuhodo DY ONEは、ターゲット抽出やMAツール等とのデータ連携を自動化するStreamlit in Snowflakeアプリに注目。実データを使った実証実験を通して、デジタルマーケティング担当者の負荷軽減に成功し、月に40時間の工数削減といった大きな成果を挙げている。
Story Highlights
- Streamlitアプリで施策実行を省力化
- 生成AIによるコーディングを推進
- 顧客獲得、顧客育成部門の情報共有基盤としての期待
いかにマーケターの創造的時間を確保するか
Hakuhodo DY ONEは、2024年4月に事業を開始したデジタルマーケティング事業会社だ。博報堂DYグループの「デジタルコア」として、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC)と株式会社アイレップの2社に加えて、株式会社博報堂や株式会社博報堂DYメディアパートナーズなどグループ内事業会社がもつデジタルマーケティングのナレッジや人材を集約・統合。新テクノロジー開発、マーケット分析から、施策立案、実行に至るデジタルマーケティングのあらゆる領域を網羅し、顧客のあらゆるニーズにワンストップで対応する総合力がその第一の特長である。博報堂DYグループが擁する、月間4.8億ユニークブラウザと1億以上のモバイル広告IDによる2兆レコード以上の膨大なデータに、数千万規模の各種の購買データ、250万台以上のテレビ視聴ログ、検索データや調査データなどを統合した国内最大級のIDベースのデータ基盤「生活者DMP」も活かし、生活者の視点からこれからのデジタルマーケティングを牽引することが期待されている。サードパーティCookie規制に伴うトラッキングの制約への対応、Spotifyをはじめとする新たな配信サービスやDOOHと呼ばれるデジタルサイネージを使った屋外広告などの新メディア台頭もあり、デジタルマーケティングに関する業務は複雑化している。一方で、AIをはじめとする新テクノロジー対応が求められる中、マーケティング担当者の創造的な時間の確保は急務の課題になっている。こうした状況の中、ソリューションマネジメント本部データアナリティクス部マネージャーの成島 直也氏が注目したのがStreamlit in Snowflakeだった。
「Snowflakeとの出会いは1年半ほど前。博報堂DYグループのなかでも話題にのぼる機会も増えつつあったことから、自分でも試してみようと思ったことがそのきっかけです。最初に感じたのは、当社が主に利用しているCDP専用製品と比較した処理の速さでした。また、Snowflakeの柔軟性、定額制ではない料金体制によるROIへの寄与も魅力的でした。そして、データ分析やデータ連携を自動化するアプリが簡単に開発できるStreamlit in Snowflakeの存在も大きな決め手となりました」
Streamlitアプリで手作業による 施策実行プロセスを自動化
StreamlitはPythonで簡単にデータサイエンスや機械学習用のWebアプリを作成・共有できるオープンソースライブラリ。Snowflake上にアプリを構築することでデータやコードを外部に移動させる必要なく、安全にデータを活用することが可能になる。Streamlit in Snowflakeの検証テーマとして成島氏が着目したのは、マーケティング施策立案から実行に至る一連のプロセスの省力化だった。「Excelの分析結果をPowerPointで表現していた時代を考えると、BIツールのダッシュボードは、データを読み解き施策を立案するプロセスを確実に高速化しています。歯がゆいのは、その後の施策実行で改めてターゲットを抽出し、MAツールとデータを連携するプロセスが生じる点です。ダッシュボード上でターゲット抽出やデータ連携が行えれば、デジタルマーケティング業務は大幅に省力化されるはずです。Streamlit in Snowflakeによって、マーケティング担当者が日々行ってきたこれらの業務が自動化できてしまうのではないかと考えたことが今回の取り組みのきっかけでした」効果検証のため成島氏がStreamlitで開発したのは、サイトへのアクセス状況を曜日・時間帯別に分析してヒートマップで可視化すると共に、ターゲット抽出からMAツールとの連携までボタン押下で実行できるアプリだった。テスト環境は、同社が運用するSalesforce Marketing CloudとStreamlitを連携することで、実データに基づき行われている。
「これまで、サイトにアクセスする時間帯別に施策を打ちたいと考えた場合、ダッシュボードで状況を把握した上で、再度ターゲットを抽出し直し、外部ツールとのデータ連携を図る必要がありました。仮に毎日10施策を打つことを考えると、ターゲット抽出~連携に1、2時間は必要になり、月に換算するとこれだけでも最大40時間の工数削減につながるはずです。マーケティング担当者の創造的な時間を確保する上で、Streamlitアプリが大きな意味を持つはずです」(成島氏)
生成AIが実用レベルのPythonコーディングを実現
今回の検証テーマは、実はもう一つあった。それは生成AIによるアプリコーディングの省力化である。成島氏はその狙いをこう説明する。「生成AIによるコーディングに注目した理由は大きく二つあります。一つはコーディングミスの削減です。マーケティングに携わる方であればご理解いただけるはずですが、例えばメール配信許諾を得ていない方に間違って配信してしまうだけでも大きな問題になる状況を考えると、自動化によるケアレスミスをなくすことは避けて通れない課題になると考えています。もう一つは、データ分析の現場において、SQLに対するスキルセットの差です。SQLが書けるスタッフが担うコーディングのオペレーションを最小化したいと考えたことが生成AIによるアプリ開発に注目した理由です」
検証結果は、生成AIによるSQLコーディングは現時点では課題が残る一方、生成AIをつかったPythonによるStreamlitアプリ構築については十分に可能性が高いというものだった。
「コーディングに限らず、生成AIを利用する上で大きな課題となっているのが、その正確性をどう担保するかという点です。SQLの場合、その点が難しくSQLの知識を持つ人間が検証を行う必要があるのが実情です。それに対し、PythonによるUI実装は、生成AIが出力したプログラムに間違いがあれば簡単に気づくことができ、それをAIにフィードバックすることで正しいコーディングに近づけることが可能です。現状では、SQLまで含めたコーディングオペレーションの省力化までは難しいというのが正直なところですが、この点については将来的な生成AIの深化に期待したいと思います(」成島氏)
サイロ化問題の解決に向けたStreamlitの貢献に期待
成島氏のStreamlitアプリ活用アイデアは、マーケティング施策実行の省力化だけではない。抽出したデータの出力先をDSP(デマンドサイドプラットフォーム)にすることによる、顧客データの全社的活用の実現はその一例である。
「顧客獲得とその後の顧客育成の担当部署が分かれている企業の場合、それに伴う情報共有の難しさがデータ利活用のボトルネックになっていることが珍しくありません。顧客育成の観点では、入口が割引施策だったのか、あるいはオーガニック商品キャンペーンだったのかにより、アプローチの方法論は大きく異なります。また顧客獲得の観点でも、入口によるLTVの違いを知ることは大きな意味を持ちますが、こうした情報が共有できていない企業は今も少なくないのが実情です。Snowflakeにデータを統合した上で、Streamlitでその活用を自動化する取り組みは、サイロ化と呼ばれる課題解決にも大きな役割を果たすと考えられます」
Streamlit in Snowflakeによる施策立案から実行の一元化は、こうした課題を最小化する上で大きな役割を果たすことが期待できる。なお、Hakuhodo DY ONEは月間4.8億ユニークブラウザと1億以上のモバイル広告ID、2兆レコード以上の膨大な3rdパーティデータと、多様なデータパートナーから提供された専門領域データ(2ndパーティデータ)を保有する国内最大級のデータ・マネジメント・プラットフォーム(DMP)である「AudienceOne®︎」の提供をSnowflake Marketplaceを通して行っている。
「Snowflake Marketplaceで無料公開するデータでは、都道府県単位で31項目の興味・関心の分析が行えるようになっていますが『AudienceOne®︎』の意義はそれだけではなく、郵便番号レベルで多様な分析が可能なツールになっています。当社の『AudienceOne®︎』に限らず、多様なデータをセキュアに共有するプラットフォーム基盤としても私たちはSnowflakeに注目しています」(成島氏)

「コーディングに限らず、生成AIを利用する上で大きな課題となっているのが、その正確性をどう担保するかという点です。SQLの場合、その点が難しくSQLの知識を持つ人間が検証を行う必要があるのが実情です。それに対し、PythonによるUI実装は、生成AIが出力したプログラムに間違いがあれば簡単に気づくことができ、それをAIにフィードバックすることで正しいコーディングに近づけることが可能です。現状では、SQLまで含めたコーディングオペレーションの省力化までは難しいというのが正直なところですが、この点については将来的な生成AIの深化に期待したいと思います」
成島 直也氏
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