注:本記事は(2022年2月28日)に公開された(Share The Data, Save The Bears: It’s International Polar Bear Day)を翻訳して公開したものです。

2100年までに、ホッキョクグマは絶滅すると言われています。

北極のシンボルでもあるホッキョクグマは、いまや地球温暖化の象徴にもなっています。トロント大学スカボロ校のPeter Molnar博士などの研究者によると、猟場が溶けてなくなることにより、ホッキョクグマは絶滅の危機に瀕しています。

2月27日は地上最大の肉食動物であるホッキョクグマを称える国際ホッキョクグマの日です。北極圏を象徴する生物ともいえるホッキョクグマの絶滅の機器を食い止め再び繁栄させる方法はあるのでしょうか?データシェアリングによって、生物学者や政策立案者に、この誇り高い猛獣を保護するための知識やツールを提供できるかもしれません。

気候変動と海氷

生物の絶滅の最も一般的な原因は生息域の喪失です。ホッキョクグマの場合、生息域は海氷であり、主食のアザラシの猟場でもあります。人間が惹き起こした気候変動による地球温暖化によって海氷の融解が進んでいます。米国の国立雪氷データセンターによると、1970年に衛星による記録が始まって以降、多年海氷(夏になっても融けずに一年中凍っている海氷)の量は10年ごとに13%減少しています

「温暖化は、春に氷が溶けるタイミングと、秋の結氷に影響を与えます」、と『Polar Bears: A Complete Guide to Their Biology and Behavior』の著者でありアルバータ大学生物学博士のAndrew Derocher氏は述べます。「今も真冬には十分な氷がありますが、氷のない期間の長さを決める結氷と融解のタイミングが重要なのです。ホッキョクグマの絶食期間は限られていいます。また温暖化は氷力学の他の側面にも影響を及ぼします。多くのエリアで氷の移動量が多くなっており、氷の流れに逆らって歩くことの多いホッキョクグマにとって流氷による体力消耗にも繋がります。」

海氷の減少によるもう1つの影響は、通常の離乳時期の2歳半まで子育てをするメスの数が減り、一年子を持つ母親が姿を消しつつある点です。

「これは、メスの体力が尽きて母乳がでなくなっていることが原因と考えられます。子グマは体内にわずかな脂肪しか蓄えていないので、母グマがアザラシから栄養を取って授乳できないと小グマはすぐに死んでしまいます」とDerocher氏は言います。

生態系のすべての要素と同様に、ホッキョクグマは影響を引き起こす原因でもあり、同時に影響を受ける対象でもあります。

「北極海氷は、底藻から最上位捕食者のホッキョクグマまで、北極の食物連鎖全体を支えています」とPolar Bear Internationalは述べています。「海氷はホッキョクの生態系において森林における土壌の役割を果たします。水温の低下により海水が凍ると塩分が排出され、氷の中に水路が形成されます。これらの水路に日光が当たると水路の中で海藻が育ち、食物連鎖の基盤となる水中庭園が形成されます。しかし気候変動によって北極周辺の複数の地域で海氷のシーズンが短くなっています。」

海氷の変化によってホッキョクグマが危機に直面しているのと同様に、北極の生態系のすべてが脅かされています。

データは知識であり、知識は力である

世界には19のホッキョクグマの個体群があります。いずれも人が多く住む地域から簡単に到達できる場所ではなく、中には極めて辺境の土地もあります。

「私は常に、19の個体群それぞれに19の異なるシナリオが存在すると主張しています」とDerocher氏は言います。「それぞれの個体群が海氷の損失によって異なる影響を受けています。」つまり、19の異なるデータセットがあり、各データセットは他のデータセットのホストの組み合わせです。何から何までデータなのです。

米国地質調査所(USGS)の野生生物研究者であるTodd Atwood氏によれば、個体数データはその個体群の生息状況を示す最も重要かつ基本的なデータです。個体数は、生態系におけるその動物の位置づけとそれが時間の経過とともにどのように変化しているかを判断する手がかりとなります。

「北極圏での個体数データの収集は、作業面での過酷さから非常に困難な作業です」とAtwood氏は述べます。「19の個体群のうち8つの群では、現在十分なデータが取れていません。」

個体数データは非常に重要なデータではありますが、生物学者や政策立案者が気候変動を含めて北極圏とホッキョクグマにいま何が起こっているのかを把握するのに必要な多くのデータポイントの中の1つにすぎません。

「海氷の有無、範囲、融解と氷結の時期といった海氷に関するデータも、生息域の質と獲物の入手可能性についての指標、あるいは少なくとも間接的な目安となるため、非常に重要です」とAtwood氏は述べます。「衛星タグと首輪から収集する位置データは、海氷生息域の変化にホッキョクグマがどのように反応しているかを示す貴重なデータです。衛星追跡データは、ホッキョクグマの分布変化を長期的に予測し、現在および将来におけるホッキョクグマにとっての重要度から考えてどの生息域を優先的に保護すべきかを判断するのに役立ちます。」

さらに現在収集しているデータには、北極圏で加速している産業開発がホッキョクグマをどのような形で脅かしているか、またホッキョクグマが気候変動に対してどの程度のレジリエンスを持つか(環境の変化に応じて行動や生理機能を変化させる能力がどれくらいあるか、等)といったものもあります。

Atwood氏やDerocher氏のような生物学者は、脅威とレジリエンスの相互作用がホッキョクグマの個体群動態にどのような相乗効果をもたらしているかを理解しようとしています。

Atwood氏によると、生物学者たちが緊急に収集を必要とするデータの1つが、ホッキョクグマの獲物となる動物、主にワモンアザラシについてのデータです。アザラシが北極の温暖化にどのように反応しているか、個体数はどのように変化しているか、アザラシの食料源に影響は出ているかといったデータが求められています。

現在、生物学者にとっても政策立案者にとっても、ホッキョクグマを救う政策立案のために必要なホッキョクグマの状況把握のためのシステムが整っていません。そこでデータシェアリングを容易にする技術が重要となります。機械学習などの技術を用いて大量の写真や衛星画像からインサイトを収集すれば、科学者によるホッキョクグマの位置や個体数の把握に役立つ豊富でアクセスしやすいデータが得られるでしょう。

「ホッキョクグマの保護に関しては、万能の解決策はありません」とDerocher氏は言います。北極に前向きな結果をもたらすには、きめ細かなデータの収集、処理、共有が不可欠なのです。」

私たちにできること

何もせずただ待つのではなく、未来に目を向けて理解する努力をしましょう。そうすることで何かしらの影響を及ぼすことができます。1人の力で生物の絶滅を止めることはできませんが、個人としてそして集団として何が起きているかを理解して手を貸すことはできます。

以下は、「私たちに何ができるか」についてのPolar Bears Internationalからの提案です。

  1. 「ホッキョクグマの日ツールキット」を使用して学習し、参加する。
  2. ホッキョクグマの親子の保護のために寄付を行う。このキャンペーンは、雪の下に隠れているホッキョクグマのねぐらの位置を特定して保護するための新しいツールの開発資金となります。ねぐらを保護することで、子グマと彼らの未来を守ります。
  3. ホッキョクグマの親子を守ろうチャレンジ ホッキョクグマの親子を守る取り組みを広めませんか?「ホッキョクグマの親子を守ろうチャレンジ」ファンドレイザーを立上げて友人、家族、同僚を招待しましょう。上位3名にはPolar Bears Internationalから賞品が贈られます。
  4. ホッキョクグマの里親になるぬいぐるみの購入、またはバーチャル里子のいずれかからお選びください。
  5. コミュニティに参加するこちらからサインアップし、北極に関する独占ニュースの配信をコミュニティと共有しましょう。
  6. 「国際ホッキョクグマの日ツールキット」についてSNSで拡散しましょう。ハッシュタグは#PolarBearDay #ProtectMomsAndCubs #TalkAboutIt #WeSupportPolarBearsです。
  7. 気候変動について語り、なぜそれが重要なのかについて、友人、家族、同僚と話し合ってください。日々の会話の中に気候変動の話題を取り入れることによって、家庭レベルの問題から政策の優先事項に変えることができるかもしれません。
  8. 個人や家庭内を越えたレベルで変化をもたらし得るコミュニティプロジェクトに参加する(個人の努力だけでは私たちが目標とするものを達成するのは難しいからです)。例えば、電気バスの導入を支持する、教育機関と連携してアイドリングストップゾーンを設定する、または地域内の自転車レーン設定、農産物直売所の運営、再生可能エネルギーイニシアチブを支援する、などがあります。
  9. あらゆる規模のすべての選挙で、温暖化対策を念頭に投票する。持続可能なシステム構築のためには政策の変化が必要です。気候変動に関する活動を支援する候補者と定期的にやり取りしたり、友人、家族、ご近所の方々にも賛同してもらえるよう働きかけてみませんか。
  10. 日常生活の中で伝統的な環境保護倫理に従った行動を心がける。例えばクリーンエネルギー源に切り替える(ほとんどのエネルギー会社がこのオプションを提供しています)、排出量削減に有意義な対策を講じている企業を支持する、または地元の農産物を購入することでサステナブルな食料システムへの転換を促す、といった取り組みに参加し、それらの選択について周囲に話すことで、温暖化防止に役立つライフスタイルが社会規範となるように支援しましょう。

Snowflakeは、特にデータの観点からホッキョクグマの生息状況の把握と保護に貢献しています。Snowflakeアカウントをお持ちの場合は、ホッキョクグマの保護に関する以下のデータセットをチェックしてみてください。

  1. Knoema: OECD温室効果ガス排出量
  2. Knoema: Monthly Climatic Data for the World
  3. Knoema: 環境データアトラス