注:本記事は(2022年3月29日)に公開された(https://www.snowflake.com/blog/physiology-retail-ecommerce/)を翻訳して公開したものです。

データドリブンなショッピング環境における脳と身体の反応を理解する

小売は時間や空間において行われます。私たちは小売の心理学については頻繁に耳にしますが、小売の生理学については忘れがちですが、これは重要なポイントです。物品やサービスの売買は、物理的な人間が行うのと同じ、複雑な時空間において行われます。

販売の最良の方法を理解するために(消費者としてはどのように購入するかを理解するために)、脳が意思決定をどのように行うのかを調べる必要があります。私たちの物理的人間性を表す概念は、どの程度売買に影響を与えるのでしょうか。これらを理解することが、どのようにして小売企業による、より良いセールス判断につながるのでしょうか。

自律性と事項需要を理解する

2つの人間の能力が身体との関係性を理解する上で重要となっています。それが、自律性自己受容です。

自律性とは、今日が昨日とは異なり、1分前は1分後と異なる、ということを認識する能力です。さらに反事実的なシナリオを生成することもできます。店舗に入るなり音楽セクションに行き本のセクションに行ったとしても、自律性により電動工具のセクションから食品セクションへ移動したと想像させることができます。お客様が小売空間に入るたびに、自律性により購入する順番を選択することができます。したがって、この点が小売空間のデザインの仕方に影響します(あるいは、この点を考慮してデザインすべきとも言えます)。

自己受容により私たちは、棚に迷い込んだり他の買い物客にぶつかることなく、店舗内を歩き回ることができます。また、物理的な店舗レイアウトを思い描き、商品を手に取って観察することができます。リラックスできる空間のための心理物理的なブループリントを作成するだけでなく、居心地の悪い空間を認識させることもできます。この能力は、小売空間をどのようにデザインするかに影響を及ぼします。

つまり、購入活動がどのようなものかということは生理学に大きく関わっているということです。ビジネスで適切な判断をするためには、思考や呼吸器官がどのように機能するかを理解する必要があります。物理的な空間における買い物とオンラインでの買い物は、物理的な身体にどのように対応しているのでしょうか。

物理的な小売環境における脳と身体の反応

退屈な議論のようなストリート
陰湿な意図
圧倒的な質問に導くために…。
聞かないで。「それは何?」
実際に行ってみよう。

T.S. Eliotが暗示したように、私たちの世界の身体的特徴は、心理的、精神的な理解へと(もしくはこれを迂回するように)導いてくれます。

Snowflakeの小売&CPG GTMのグローバルヘッドであるRosemary Huaによると、多くの店舗によって受け入れられ遵守されている、組織における一連の原則が存在するそうです。小売店舗では、データサイエンスを使用して、どのアイテムが客を店舗に引き寄せるかを判断します。牛乳、卵、トイレットペーパーといった商品は、食料品店の奥の方に置かれることが多いでしょう。衣料品で言えば、ディスカウント商品のラックが店の奥に置かれることが多くなります。

Huaは次のように語っています。「このような店舗レイアウトは、アイスクリーム、チョコレート、スナックのような嗜好品の横を通り過ぎるようになっています。直感的な反応や根底にある潜在的空腹感によって衝動買いの機会が増加します。」

この組織的アプローチは「プラノグラムコンプライアンス」と呼ばれています。

さらに、店舗に入ると2つのことをするという性質があり、両方が空間において自身をどのように適応させるかに基づいています。

研究の結果、昔から次のような提唱がされています。初めて入店する際、左を見るものの右に移動し、反時計回りに店舗を移動する傾向があります。これは右利きによる優位性やほとんどの言語において筆記の際は左から右へと移動するという事実により生じている可能性があります。これにより、精神は身体的特徴の交点であり、情報をどのように処理するかの起点となっていると考えることができます。

セールスにおける生理学の別の例では、パッケージが商品の印象に与える影響があります。Huaは次のように語っています。「プライベートブランド商品の開発プロセスを覗き、パッケージの差別化要因が、どのように商品の魅力に影響を与えるかを見てみましょう。小売業者の中には、ノーブランドの石鹸やアレルギー治療薬といったプライベートブランド商品に巨額の投資を始めているところもあります。成分はほとんど変わらないため、商品パッケージが心理的な影響を与えます。特定のカラーが特定の感情を呼び起こす場合もあれば、特定のプラスチックや紙が特定の生理学的感触を呼び起こす場合もあります。パッケージの厚みがほぼ変わらない他の商品から際立たせることもあり得ます。これらはすべてCPG(会社)が購買活動に影響を与えるために使用する要素となっています。」

独自ルールを持つセールスエコシステム

Webを構成するサイトやアプリケーションのネットワークは現実世界と類似している、という古い概念が、再び顕在化しています。これに対する反論は、「不気味の谷現象」以上のものがあります。あるモノとそれに似たあるモノとは非なるモノとの間には歴然とした違いがあります。人は、サイバースペースで買い物をするときに、メインストリートで買い物するときと同じように判断しないということです。購買王道は確実に異なるはずです。

Hewlett Packard EnterpriseのチーフアカウントテクノロジストであるKaren Rhodesは次のように語っています。「自律性と自己受容という2つの要素の両方ともが実際、オンライン上のプレゼンスを考える際、不完全な概念となっています。オンライン上では、私は自分のデータがどこにあるかわかりません。身体の部分がどこにあるか把握できていないということです。物理的な世界では、自分の身体について、物理的な場所、特定の時間に存在する、空間や時間を歩く小柄な人間を思い描くことができます。インターネットの世界では、これがまったく当てはまりません。

私は普遍的に、まったく及びもつかないようなさまざまなデータセット内に存在します。また、私に関するあらゆるデータ、私の経験も共に存在しています。17歳のときに何をしたか、27歳のときに何をしたか、72歳のときはどうか。すべてがインターネット上にあります。その人間のすべてが、メインストリートを歩く人間とは異なるモノとして存在しているのです。」

オンラインの概念はオフラインとの1対1の類似性ではありません。非常に近い例えで言うと、プライバシーという感覚ですが、存在するデータ量を考えると、それすらも十分ではありません。

オンライン上での物理的行動を非常に近い例えで言うと、スーパーマーケットで通路に1人でいる際の判断対他の人と一緒にいるときの判断と言えるでしょう。

Rhodes氏は次のように語っています。「男性がピンクのデオドラントや髭剃り、パーソナルケア商品を買うのは、男性用パーソナルケア商品におけるピンクという色が品質と配慮を示しているからです、ただし、他に人がいなければ。オンラインでは、周りに人がいないのと同じ状況のため、ピンクの商品がより売れています。」

つまり、特に小売環境においては、オンラインの世界は「サイバーリアリティ」とは異なり、独自のルールを持ったセールスエコシステムであるということになります。

Snowflakeの小売GTM担当インダストリープリンシパルであるLeslie Lorenzは、オンラインショッピングは、「ファーストショッピング(即決購入)」に迷いがない人、試してみて返品した経験のある人、ワンクリックショッピングの経験がある人、(皆さん自身やブランドへの)信頼を非常に重視するその他の変数を保有する人にとって魅力的だとしています。

「皆さんのチャネルへの商品の取り込み方法を変える、ブランドとの新たなエクスペリエンスとなっています。以前はオンラインでも店舗でも皆さんが中心となっていました。オンラインとは会社のウェブサイトを指していました。今では、FacebookやInstagram上といった、さまざまな購入が存在します。」

小売業者は店舗とオンラインでアプローチを変える必要がある

これらすべての生理学における考慮事項やこれらが心理や意思決定にどのように影響するか、といったことから、小売業者は実店舗とオンラインで前提条件を切り離す必要がある、という点に辿り着きます。オンライン販売は現実世界を模したものではありません。反対に、実店舗の世界は、新石器時代のようなどこか原始的な物理的交流を維持する必要があります。

販売業者は、オンラインでの存在は、お客様と出会い、身体的特徴をはるかに超えた概念や交流について学ぶ小売空間であることを受け入れる必要があります。さらに実店舗は、大量のHershey’sチョコレートバーによりお客様が神との関係を考え直す場所であり、使い捨てのカミソリを売る通路は驚くほど気持ちの良い世界を見つける場所となります。

今は変化する時代であり、その変化の波に乗る小売業者のみがそのメリットを享受できます。