注:本記事は(2022年4月5日)に公開された(The Great Refactoring: Predictive Models Face Off Against Rapid Change)を翻訳して公開したものです。

2020年に実施されたロックダウンの副作用の1つが多くの予測モデルの崩壊でした。

当時、Guan WangはB2B旅行サービスのSaaSプロバイダーでカスタマーサクセス(更新、オペレーション、戦略)を担当していました。Wangはデータサイエンスチームと連携し、ユーザーのアカウント更新の見込みを予測するモデルを構築していました。彼は次のように語っています。「本モデルにおける重要な要因が「ユーザーアダプション」であり、私たちは『オンボーディング』ユーザーまたは登録した多数の新規ユーザーがSaaSプラットフォームを利用するよう仕向けなければなりませんでした。」

パンデミックによりロックダウンが実施された際、ユーザーアダプションはゼロになりました。それに伴い、本モデルによる予測価値もなくなりました。

Wangが次のように続けました。「考え得る限りの要因やデータポイントをデータサイエンスチームと共有し、カスタマーサクセスチームに助言できるような新たなモデルを構築できるようにしました。」パンデミックが継続する中、「最良の(アカウント)ヘルス指針の模索へと移行する、非常に厳しい時期でした。」

明らかに、パンデミックは非日常的な出来事であり、世界にとっても非常に衝撃的でした。それは経済にも当てはまります。しかし、購入行動は既に急速に変化しており、世界が変化する中でも、その状態が続いていました。異常気象事象の増加からソーシャルメディア市場の継続的台頭まで、企業は、徐々にあるいは突然に、モデルのリファクタリングおよびリアルタイムなデータへの急速な移行を必要とする一連の要因に直面していました。

急速な変化における極意を極める

Wangは現在、Snowflakeのマーケティングインテリジェンス担当グローバルディレクターを務めており、完全にデータに注力した会社でのデータコンシューマーとなっています。彼は、「私たちのチームの使命は、Snowflakeのマーケティングを業界で最もインサイトドリブンなチームにすることです」と言っています。

Wangによると、今日では、B2BにおいてもB2Cにおいても、マーケティング部署が必要とするデータが不足することはないそうです。彼は次のように言及しています。「広告チャネル、ソーシャルチャネル、コンテンツマーケティング、セールスイベントなど。お客様の取り込みシグナルを収集するチャネルは多数あります。」しかし多くの組織には、このようなデータを効果的に使用する適切なプロセスが制定されていません。これが第一の障害となっています。

Wangは次のように続けました。「企業は、顧客の全体像をつかみ、セールスプロセスを通じて顧客の心をつかみ続けるため、すべてのデータを一元的に集約する必要があります。」

2つ目の障害は変化率です。パンデミックによるロックダウンの実施と解除が繰り返されることにより、旅行やライドシェア、製造業まで、間違いなく多くの業界がネガティブな影響を受けました。しかし、企業や業界の中には、これがプラスに働いて事業が急に好転したところもあります。例えばビデオ会議、フードデリバリー、言語アプリといった業界がそれに該当します。これらの業界にとっては望ましい展開ですが独自の課題もありました。2020年6月に実施されたMcKinsey調査では、消費者のうち75%がパンデミック開始後の数か月のうちに、「新たな購買行動を試した」と答えています。

しかしながら、パンデミックが起こる以前から多くの変化が見受けられていました。今後の消費者行動に影響を与える、どのような新たなテクノロジーが台頭してくるのか予測がつきません。ソーシャルメディアプラットフォームについて考えてみてください。クリエイティブエージェンシーによる若い世代間におけるブランドロイヤルティの構築に焦点を当てた2019年の調査では、ミレニアル世代の34%が新たなブランドの発見にInstagramを使用していました。もちろん、彼らが生まれた当時、Instagramは存在していませんでした。Z世代では、この割合は58%まで急増します。Z世代はTikTokの影響も強く受けていますが、これも、彼らが生まれたときには存在していないものでした。

さらに、ミレニアル世代やZ世代の購入者は、上の世代があまり関心を寄せなかった企業の社会的責任に高い期待を寄せています。Deloitteの調査ではミレニアル世代の37%が倫理的でないと感じた企業を避けたことがある、と答えています。

Wangは、非常に長いセールスサイクルという、B2Bにおける複合的な課題を指摘しています。

彼は次のように語っています。「顧客が承認したとしても、締結に至るまで6か月、長いときは12か月かかる場合があります。どうやって顧客を、重要なマーケティングやセールスのシグナルにつなぎとめることができるのでしょう。」この問いはデータを一元的に集約する必要性にもつながります。Wangは、マーケターには、従来のマーケティングセグメンテーションだけでなく、個々の顧客の行動に基づく最良の「次のステップ」も取り入れた、より良いデータインサイトが必要だと考えています。

結論はこうです:マーケターは、予測モデルがいま何が起こっているかを正確に反映したデータに基づいていることを確認する必要がある。

リアルタイムに近づける

これらすべてにより、マーケターは容赦なくリアルタイムデータに向き合う必要があります。Wangは、多くのマーケターに暫定的な措置が必要になるとはいえ、これは重要な目標である、と言っています。

2021年に実施された InsideSalesによる調査では、400社、570万人における見込み客の回答を調べました。調査の結果、新たな見込み客に対しセラーが5分以内に回答した場合のコンバージョン率は、8倍であることがわかりました。しかしながら、最初の電話対応がこの時間枠で実施された比率は1%に達しません。B2Bバイヤーはもう少し猶予をくれるかもしれません。2020年にFoundry(前IDG Communications)が実施したミレニアル世代の技術バイヤーに関する調査では、3時間以内のフォローアップを期待していると答えたのはわずか16%でした。

Wangは次のように語っています。「企業にとって、最初の5分でどのように見込み客を取り込むかを特定することは、本格的な科学の領域だと言えます。さらに、巨額のエンジニアリングコストもかかります。データのすべてをリアルタイムで入手することは、非常に難しいです。Googleの広告とFacebookの広告を一元化されたプラットフォームにリンクさせる状況を想像してみてください。すべてを集約するには、多くのデータパイプラインが必要です。」

「ニアリアルタイム」は、ほとんどの企業が照準を合わせている暫定的段階です。Wangは、多くのデータサプライヤーは未だに、1日に1回しかデータを更新していない、と言います。彼はデータコンシューマーとして、2時間ごとの更新を求めており、これをSnowflakeのマーケティンググループはニアリアルタイム、と定めています。

Wangが考えるマーケターにとって理想的なビジョンとは、将来の非常に複雑かつ断片化したバイヤーズジャーニーの完全な可視化です。彼は今のところ、「この非線形のジャーニーを可視化またはマッピングする簡単な方法はありません」と言っています。

「これは非常に複雑な神経回路のようなものであり、Googleのような企業も含め、これまでどの企業も開発したことはありませんでした。素晴らしいAIや機械学習モデルを構築したことはあっても、ネットワーク全体のモデリングはまったくの未経験でした。」

長期的には、Wangはマーケターにとって楽観的な展望持っており、「今後5~10年でより理解が深まるでしょう」と語っています。

今のところ、マーケターが注力すべき重要点は、データサイロの解消、リアルタイムデータへの移行、予測モデルの最新性の保持ということになります。