注:本記事は(2022年2月8日)に公開された(Data’s Value Resides In Its Use, So Should Its Price)を翻訳して公開したものです。

周りに取り残された気分になってはいませんか?ここへきてデータエコノミーが過熱する中、市場で取り残されるわけにはいかないと考える企業はこぞって、データをどのように製品化およびサービス化するかについての検討を始めています。

この点において、既にさまざまな業界の企業が成功を収めています。GE AviationSiemens Mobilityといったメーカーは、顧客にデータサービスを提供し、業務効率化や運営コスト削減を支援しています。TelefonicaSingtelのような電気通信事業者は、小売業者にロケーションデータサービスを提供し、集客エリアや顧客周波数の把握を支援しています。小売業者は、サプライヤーにデータサービスを提供し、需要の予測や提供製品の改善を支援しています。このような新しいデータ製品は、開発者やデータサイエンティスト向けの生データから、意思決定プロセスやワークフローに直接的な価値をもたらすより派生したインサイトまで、さまざまな形式により提供されています。組み込まれたインサイトを自動化し、ロジスティクスのルーティングや見込み客の優先順位付けといったプロセスに利用することも可能です。カスタマーバリューの創出機会には際限がなく、より明確なものとなってきています。

しかし、データを市場に持ち出そうとすると、常に「当社のデータの価値はどのくらいなのか?」という疑問が持ち上がります。ビジネス業界や教育業界にまたがり、データへの価値の割り当て方法について調査したところ、ほとんどの場合、複雑な理論方程式に頼る結果となっていますが、このような計算式ではうまくいきません。最も重要なことは、潜在顧客が支払いたいと思う金額がデータの価値だということです。データを製品やサービスといった形式で販売するためには価格を設定することが必要であり、その価格に対する価値を提供する必要があります。

データ価格設定における4つのオプションモデル

価格設定は、言うほど簡単ではありません。価格設定は、ビジネスモデルおよび実際の請求金額という2つの要素で構成されています。最初に、価格設定オプションの例、それぞれのメリットとデメリットを見てみましょう。次の表ではさまざまなオプションを示しています。

使用量ベースの価格設定の詳細を見てみましょう。

使用量ベースとする価格設定の台頭

使用量ベースの価格設定は、新しいものではありません。私たちが購入するほとんどのものが使用量ベースとなっています。毎月の水や電気の支払いもそうです。ハルマゲドンに備えて保存食を備蓄しているのでなければ、ほとんどの人が食品や日用品を継続的に購入しています。あらゆる人が、使用量や消費量に基づくビジネスモデルに慣れ親しんでいると言えます。同時にほとんどの人が、使ってもいない何かにお金を無駄に支払うことに恐怖を感じています。

テクノロジーの世界では従来(多くの場合現在においても)、製品やサービスは巨額の資本投資により購入されるものであり、その中で膨大な量が未使用となっています。「シェルフウェア」(もしくはセキュリティソフトウェアに使われることが多い「スケアウェア」という呼び方)は、現在のようなSaaS時代においても、CIO予算におけるよくある「無駄」の原因となっています。2020年に実施されたGartnerの調査によると、サブスクリプションで未使用のものはない、と報告した企業はわずか6%であり、40%の企業が4分の1以上のサブスクリプションが「未使用」であると報告しています。

使用量ベースの価格設定モデルは、ますます多くのベンダーにとって、価値の実証による差別化の機会を提供しています。本モデルの導入は雪だるま式に拡大しています。TechCrunchの調査によると、2021年には45%のSaaS企業が使用量ベースの価格設定モデルを提供しており、これは前年から34%の増加となっています。さらに11%の企業が1年以内に、23%は2年以内またはそれ以降の使用量ベース価格設定モデルの試験的採用を計画しているとのことです。しかし、すべての企業がすぐにこの流れに乗っているわけではありません。半数は従量課金制を採用し、残りの半数は使用量ベースの階層モデルを採用しています。

結局のところ、顧客の大多数は使用量ベースの価格設定モデルを望んでいると言えます。人々は、テクノロジーに対して使用した分だけ支払いたいと思っており、無駄な支払いを嫌っています。IDCの調査によると、世界中で61%の企業が、使用量を重視したデジタルインフラストラクチャー購買モデルへの積極的な移行を事業戦略としている、という内容に同意/強く同意しています。しかし、同調査では、さまざまな傾向があることも示唆されています。急速な成長を遂げている企業では使用量ベースの価格設定が好まれる一方、大企業においてはサブスクリプション価格設定の予測可能性が重視されています。ただし、これが消費者の好みを正しく反映したものなのか、惰性的なものなのかは疑問が残ります。

使用量ベース価格設定へ移行しても、コスト予測ができなくなるということではなく、単に別の方法で予測しなければならなくなるというだけです。実際に予測する必要がありますし、それはベンダーにとっても同じことが言えます。真の予測を通じて収益の見通しを立てる必要があるということです。SnowflakeのCFO、Mike Scarpelliは、「当社の財務担当者は収益予測にスプレッドシートを頼ったりしません。その代わり、機械学習やAIといった最新のテクノロジーを導入します」と説明しています。確かに消費者にとってもプロバイダーにとっても少し困難な点はあるかもしれませんが、「痛みなくして得るものなし」と言いますよね。

データ向けの使用量ベース価格設定

企業は差別化に取り組む中、戦略、製品やサービス、カスタマーエクスペリエンスの改善に向けた新鮮なインサイトを渇望しています。外部データソースの需要も高まっています。それにより、調達プロセスにおけるあらゆる問題が顕在化しています。潜在的なデータコンシューマーは「この購入により価値を創出できるだろうか。デューデリジェンスは実施されたか。支払っただけの価値は得られるのか。このデータはシェルフウェアとならないだろうか」と自問自答するでしょう。

Snowflakeデータマーケットプレイスはデータ購入における不安を取り除きます。Snowflakeは「購入前にお試し」できるため、データチームは購入前にアナリティクスモデルに対するデータの影響をテストすることができます。しかし、多くのデータ資産にとって購入者が安心できるのは使用量ベースの価格設定です。実際に使用した分だけ支払えばよいのです。これらを組み合わせることで、獲得コストを削減し、導入におけるよくある障害が緩和されます。

確かに、取得コストの削減以上のメリットがあります。当初の価格ポイントの減少は、リスクの低減を意味するだけでなく、潜在的リスクの削減に向けたデータの評価に費やす時間の短縮にもつながります。そのため、データサイエンティストは本来の仕事により迅速に戻ることができます。また、データチームはより多彩なデータセットを試験して、顧客のための価値創出に向けた実質的なインサイトを得ることができます。

さらに、柔軟性、拡張性、可観測性も向上します。使用量ベースのアプローチは、企業は、ニーズに応じてデータの使用量を調節でき、使用した分だけ支払えばよいことを意味しています。この柔軟性は、ダイナミックなビジネス環境に適しています。データは、事業部門や部署内のチームをまたいで使用されており、使用量ベースのアプローチにより新たな需要への対応も可能になります。さらに、使用量ベースモデルでは、データリーダーやアナリティクスリーダーが、データの使用量、使用者、使用目的を追跡し、監視することができます。この可観測性により、プロジェクト全体におけるより幅広い知識の共有や連携が実現し、アカウンタビリティーや価値属性の向上につながります。使用量ベースの価格設定は、価値を追求した、支払われた金額と創出された(もしくはされなかった)価値が直結したアプローチです。

さらに、支払う金額が使用した量に基づいている場合、データのプロバイダーやコンシューマーのインセンティブも一致します。プロバイダーにとっては、契約を交わして終わり、ではなく、顧客によるデータの使用および価値の創出を確保する、継続的な関係の構築を意味します。より多くのデータが使用されることで、両当事者により大きな価値をもたらす、ウィン・ウィンのシナリオとなっています。

使用量ベース価格設定へ切り替えるタイミング

特にデータ製品やサービスにとって、今が使用量ベース価格設定に移行する理想的なタイミングと言えます。その理由は、それが可能であり、推奨されることだからです。Mike Scarpelliがブログで指摘したように、テクノロジープロバイダーにとって非常に大きな課題の1つがシステムです。通信事業者や公益事業者を除くほとんどの企業が、使用量をモニタリングし請求まで行う能力を備えていませんでした。これまで、請求システムに新たなユーザーを追加することは、新たなデータセットやドキュメントに追加のアクセスを提供することよりも高くつきました。今では、Snowflakeデータマーケットプレイスを使用することで、クエリによるモニタリングや請求の実施が可能となっています。

さらに、自動化、AI、データイネーブルなアプリケーションの導入拡大に伴い、データの使用はより継続的なものとなっています。データの使用はもはやビジネスアナリストやデータサイエンティスト、あるいは特定のレポートに限ったものではありません。データの使用は、業務プロセスや組み込み型アナリティクスの実施、AIモデルに関連付けられています。今ではもう「座席」の販売に意味はありません。データセット全体を固定価格で販売することには、データの使用で創出される価値が反映されていません。今では、使用量ベースの価格設定モデルを的確に反映したものとして、「データ+使用=価値」という表現が一般的になっています。

本記事では、価格設定モデル、特に使用量ベース価格設定のメリットに焦点を当てました。これは唯一のモデルではありませんが、新たなオプションとして吟味する価値はあります。次回のブログでは、実際の価格決定方法について取り上げます。どうぞご期待ください。