注:本記事は(2021年6月29日)に公開された(Organizing for Accelerating Insights to Impact: The 3 C’s of Being Insights-Driven)を翻訳して公開したものです。

「木はその実によって知られる」という諺がありますが、データとアナリティクスの世界では、インサイトドリブンであることの最終的な判断基準となるのは、データやインサイトではなく、そのインパクトです。データやインサイトから果実をつける、つまりインパクトを実現するには、何が必要でしょうか。

組織は長年インサイトを提供しており、データやアナリティクスは新しいものではありません。しかしForrester社の調査によると1、定性的情報に基づく意思決定は全体の半分のみで、残りは直感、経験、または人の意見に基づいているそうです。意思決定は未だ「部屋の中のHiPPO(Highest Paid Persons Opinion – 最も給料が高い人の意見)」の影響を受けているのでしょうか。どうやらそのようです。しかし原因はデータやインサイトの欠如ではありません。

ほとんどの組織は依然としてインサイトドリブンとは言えません。Foresterのインサイトドリブン成熟度モデルによると、真にインサイトドリブンと言えるのは、企業全体の10%以下だということです。2一見それは、データとアナリティクスにどっぷり浸かった私たちからすれば、おどろくほど低い数字です。なぜより多くの組織が意思決定プロセスにインサイトを用いないのでしょうか。なぜより良いビジネス成果を実現できないのでしょうか。もっとも重要な点は、ビジネスを推進しているのは人であり、インパクトを実現するにはその人たちが足並みを揃える必要があります。

多くの組織は、データを集め、ダッシュボードを構築し、意思決定者に提供しています。しかしダッシュボードから意思決定までの跳躍ができていません。私たちは皆、ナビゲーションしにくい複雑なダッシュボードを見てきました。意味を理解できないのはもちろん、それで何をすればよいのかも分かりません。たとえ意思決定が下されたとしても、多くの組織はビジネスへのインパクトと提供されたインサイトを結びつけていません。多くはインサイトからインパクトに至ることができずにいます。

インサイトをインパクトへと進めていくために企業はどのように準備できるか

インサイトでインパクトを実現するという公約を履行する能力は、インサイトを得て、成果を測定し、結果から学ぶという、継続的な学習ループを描く反復プロセスに宿ります。たとえば、オファーに対してカスタマーがどう反応するかについてのデータを取得し、どれが一番反響が良いかを把握します。次に、それらの好みに合わせてキャンペーンに磨きをかけます。しかしながら、これを実行する能力は簡単に身につくものではありません。インサイトドリブンな組織と、反復的学習の文化の構築の鍵は、次の3つのCの中にあります。

  1. CDO:最高データ責任者(または同等の役職)
  2. CoE:センターオブエクセレンス
  3. CoI:利益共同体

これら3つをつなぐのは人です。インサイトドリブンになるという公約を実現するのは、組織に属する人の力です。

CDO:最高データ責任者は、リーダーシップを確立し、変化に向けた幹部の意向を反映させる必要があります。当初、CDOはデータセキュリティとコンプライアンスに関する問題への対応のために指名されました。いずれのCEOも自らのブランド名が新聞の一面に載るのを見たくないものですが、データ侵害のビッグバンと称された2005年頃から、この現象がますます増えてきたからです。しかし、年を経て、この役割はより戦略的かつプロアクティブで、ビジネス価値を推進するものに進化しました。とは言え、セキュリティがCDOの手から離れたわけではありません。CDOの役割は拡大し、セキュリティは目的を達成するための手段と見なされるようになりました。データがビジネス価値をもたらすには、安全で信頼できるものである必要があります。また、CDOの新しい役割として、ビジネス価値の実現があります。

しかし、リーダーはそれを単独で実行するわけではありません。CIB EgyptのCDOであるIslam Zekry氏は、組織中の関係者と緊密に連携し、コンセンサスを構築し、より広いインサイト文化を確立するなど、CDOとはまるでChief Diplomacy Officer(最高外交責任者)だと、言いえて妙の表現をしていました。

CoE:インサイトでインパクトを実現するという目標をサポートするため、優れたCDOは、CDOの直属の部下または直属ではないものの確実に連携をとれるメンバーを集め、中核チーム、すなわちセンターオブエクセレンス(CoE)を構築します。CoEの規模はフリーサイズではなく、組織のニーズに応じて変わります。あるCoEは、事業部門や専門チームのほか、時にはパートナーやカスタマーにまで、データとアナリティクスに関する専門知識を提供するサービス機関としての役割を果たします。たとえば、Lloyd社のロンドンデータラボは、社内と社外の両方のカスタマーにサービスを提供しています。ほぼすべてのCoEは、少なくともデータガバナンスポリシーの調整や、組織全体へのリソースの割り当てを担っています。

CoI:Col(利益共同体)は、組織の必要に応じてさまざまな形を取ります。シアトル小児病院の前CDOは、データとアナリティクスに関してより広範なサポートを構築する必要性を強調しました。3 同氏は、病院中の人の中から、統計的なマインドを持ち、データをより有効に活用する方法に関心を持ついわゆるFDA(friends of data and analytics=データとアナリティクスの友だち)を特定しました。これらの「友だち」は、データの価値に関する話を組織に広めるエバンジェリストの役割を担います。シカゴのルーリー小児病院では、データチームが医師を訓練し、新しい使用事例の特定に貢献しました。寄せられる関心は並々ならぬものがあるようです。John Deere Financial社では、データチームが「データサイエンティストとは何か」というウェビナーを開催しましたが、反響があまりにも多く、聴講者のために会議用の回線をアップグレードしなければならないほどでした。

インサイトドリブンを目指す組織は、そのための戦略を立てなければなりません。そして、その戦略を支えるのは人です。インサイトドリブンな文化を推進するには、リーダーシップ、コンピテンシー、そして広範なコミュニティーが必要です。

これらの各トピックについては、後続のブログでより詳細に説明します。ご期待ください。


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