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自然言語処理(NLP)の包括的ガイド

NLP:人間の言語を理解するためのAIデータアナリティクスの仕組み、主要なモデル、例、役割をご紹介します。

  • 概要
  • NLPとは
  • 自然言語処理の仕組み
  • 自然言語処理が重要な理由
  • NLPの技術
  • NLPのタスクとは
  • 自然言語処理を使用するメリット
  • 自然言語処理の課題
  • 自然言語処理の例とユースケース
  • 結論
  • 自然言語処理に関するよくある質問
  • AIにSnowflakeを使用しているお客様の事例
  • AIの関連リソース

概要

NLPは、人工知能が世界と対話するための主要な手段の一つです。このテクノロジーにより、テキストや音声による人間のコミュニケーションを機械が理解し、アクションに変えることができます。NLPは、チャットボット、バーチャルアシスタント、翻訳アプリ、センチメント分析ツールなど、企業が日常的に使用するツールを強化します。NLPは、このようなシステムが人間の言語を理解できるように支援することで、組織が雑多な非構造化データからインサイトを引き出し、人々がより自然に感じられる体験を生み出すことを可能にします。

NLPとは

NLPはAIの一分野であり、これによりコンピューターが人間の言語を読み取り、理解し、生成することができます。言語学と機械学習を統合することで、テキストや音声の分析、パターンの発見、コンテキストに応じた応答が可能になります。

このテクノロジーは幅広い機能をサポートしています。ドキュメントやEメールからの意味の取得、顧客レビューのセンチメント検知、言語間の翻訳、さらには音声認識と音声生成まで、さまざまなタスクを行えます。これらの機能は、日常的に使用する多くのビジネスアプリケーションにわたるため、チームはコミュニケーションを管理してインサイトを抽出しながら、顧客インタラクションを改善できます。

組織にとってのNLPの価値は、非構造化データを扱う能力にあります。サポートチケット、契約書、レポート、ソーシャルメディアの投稿など、ほとんどのビジネス情報はテキストに閉じ込められています。NLPによって、そのデータを使用できるようになります。その結果、企業はインサイトをより迅速に発見し、手動のタスクを自動化し、人々がシステムと対話するためのより自然な方法を作成できます。NLPを理解することは、あらゆるビジネスを流れる膨大な言語データを最大限に活用するための鍵となります。

自然言語処理の仕組み

自然言語処理は一連のステップを経て実行されます。まず、システムはテキストを単語や「トークン」と呼ばれる意味のある断片に分割し、多くの場合「and」、「for」、「the」などのつなぎ言葉を取り除きます。次に、トークンを解析して品詞(名詞、動詞、形容詞)にタグ付けし、文法関係をマッピングします。これが理解のための基盤となります。

このステップが完了すると、NLPはセマンティック分析に移行します。セマンティック分析では、大量のテキストでトレーニングされたモデルがコンテキストを理解しようとします。一般的なアプローチの一つとしては、単語を数字に変換して関係性を把握する単語埋め込みがあります。これにより、モデルは類似した意味を持つ単語を近くに置くことができます。たとえば、「王」は「女王」の近くに、「パリ」は「フランス」の近くに配置されます。

モダンなNLPのバックボーンとなるのは、ディープラーニングと呼ばれる機械学習の一分野です。BERTやGPTのような一般的なモデルを、まず膨大な量のテキストでトレーニングした後、記事の要約、質問への回答、自然な文章の作成など、特定のジョブに合わせて調整します。これらのモデルには、Transformerのアーキテクチャと呼ばれる設計を採用しています。これにより個々の単語だけでなく、文全体でその単語がどのようにつながり、どのような意味をなすのかを理解することができます。

モデルのトレーニングでは、次の2つのことが求められます。1つ目は、書籍、ウェブサイト、会話ログなどの膨大な量のトレーニングデータです。「センチメントの特定」や「英語をスペイン語に翻訳」などのタスクに特化したラベルが付けられることもあります。2つ目は、複雑なモデルアーキテクチャ、特にTransformerネットワークです。これにより、モデルがすべての単語の重要性を単語同士の関係に基づいて判断できるようになります。

トークン化、解析、解釈、モデリングという一連のシーケンスによって、生のテキストや音声をビジネスに役立つインサイトに変換できます。

自然言語処理が重要な理由

自然言語処理は、企業がメッセージ、レビュー、チャットなどのフォーマットで言語を処理する方法を変え、言語をアクションにつなげます。よりスマートなツールの実現、運用の拡大、ユーザー体験の円滑化をもたらします。

たとえばカスタマーサービスについて考えます。NLPによって、基本的な質問に対応するチャットボットやボイスボットを24時間体制で作成できるようになります。チャットボットやボイスボットがより自然に聞こえるようになることで、サポートチームの負担が大幅に軽減され、コストが削減されます。担当者はより複雑な問題に対応できるようになります。音声ツールは、フラストレーションや混乱などのトーンを感知すると、すぐに優先順位の高いケースとしてフラグを立てることができます。

次はインサイトマイニングです。NLPはフィードバックを読み取るだけでなく、センチメントを検知して測定します。ブランドは人々の感情をリアルタイムで追跡できるため、評価された時点ですぐにフラグを付け、問題が大きくなる前に対処できます。これにより、チームがより迅速に反応し、戦略をより正確に策定できるようになります。

さらに広い観点では、NLPは、企業がEメール、通話のトランスクリプト、ソーシャルメディア上での会話などの非構造化テキストを、手動でタグ付けすることなく理解できるように支援します。この情報を明確な結果に変換することで、チームは通話の要約作成や問い合わせの並べ替えなどのタスクを自動化し、長いドキュメントから重要なインサイトを数秒で抽出することができます。

つまり、NLPは、通常は乱雑な大量の言語ベースのデータを、より明確で有用な情報に変換します。その結果、チームの作業効率が向上して対応が迅速になり、技術的な専門用語ではなく日常的な言語を使用するユーザーインターフェイスを実現できます。

NLPの技術

NLPでは、言語を分解して管理できるようにする一連の中核的な技術を利用しています。それぞれの技術が、テキストによるコミュニケーションを有用なインサイトに変える役割を担っています。
 

トークン化

トークン化とは、テキストを単語や文章などの小さな断片に分割するプロセスであり、これによりシステムが意味を理解しやすくなります。 
 

レンマ化とステミング

これらは単語をその基本形に戻す技術です。ステミングでは、語尾の活用を切り取ることで単語を短縮します。たとえば、「running(走っている)」が「run(走る)」になることがあります。レンマ化では、「better(より良い)」を「good(良い)」に変えるなど、言語のルールや辞書を使用して単語の本来の基本形に戻します。
 

品詞タグ付け

品詞タグ付けでは、名詞、動詞、形容詞など、単語ごとにタグ付けを行い、それらの単語の文法的な関係を示します。これは「watch(時計、見る)」が名詞か動詞か、といったコンテキスト内での意味の解釈に役立ちます。
 

固有表現認識(NER)

NERは、人々、場所、組織、日付など、テキスト内の固有名詞を検索します。フラグを付けてカテゴリに分類できるため、ユーザーは手動で掘り下げることなく、誰が、どこで、いつ、何をといった内容を抽出できます。
 

依存関係の解析

この技術では、誰が誰に何をしたかなどの文法的な関係をマッピングします。実際には、文章を部分(主語、動詞、目的語)に分割し、システムが構造を理解できるようにします。
 

センチメント分析アルゴリズム

このアルゴリズムでは、テキスト内の感情を正、負、中立に分類します。ブランドは、レビューやソーシャルメディア上での会話を読み取り、トーンを大規模に把握するためにこのアルゴリズムを使用しています。
 

機械翻訳の手法

テキストを1つの言語から別の言語に変換するシステムです。規則に従うもの、統計に依存するもの、ニューラルネットワークを使用する新しいものなどがあります。これにより、グローバルなアプリやサービスが、それぞれの言語に対応する個別のシステムを構築することなく、多くの言語に対応できるようになります。

NLPのタスクとは

NLPのタスクは、テキストの処理後に言語モデルが実行する実際のジョブです。顧客のフィードバックの理解からグローバルなコミュニケーションの強化まで、具体的な技術を実際のビジネスニーズにマッピングします。言語の問題を個別のタスクに分割することで、組織はサポートチケットの整理や検索アシスタントの構築など、目的に応じて適切なアプローチを選択できます。
 

テキスト分類

このタスクはテキストをカテゴリに分類します。企業では、受信Eメールを「サポート」、「請求」、「販売」に分類したり、トピック別にドキュメントをフィルタリングしたりすることがあります。テキスト分類タスクにより、チームは手動でのタグ付けに頼ることなく、大量のテキストを自動的に管理できます。
 

固有表現認識(NER)

NERでは、テキスト内の主要なエンティティを特定して抽出します。たとえば、コンプライアンスチームが契約書をスキャンして会社名や日付を探したり、ニュースアグリゲーターが主要なプレイヤーや場所ごとにストーリーをインデック付けしたりできます。
 

センチメント分析

このタスクでは言語内のトーンを検出します。センチメント分析により、マーケティングチームや顧客体験チームは、製品のローンチ、サービスとのインタラクション、ブランドのプレゼンスについて、多くの場合ソーシャルメディア上でオーディエンスがどのように感じているかを簡単に把握できます。
 

機械翻訳

翻訳システムは、1つの言語のテキストを別の言語のテキストに変換します。モダンなニューラルメソッドでコンテキストとニュアンスを把握できるため、グローバル企業は、言語ごとにコンテンツをゼロから構築することなく、それぞれの母国語でユーザーをサポートできます。
 

テキスト要約

このタスクでは、大きなテキストブロックを短く読みやすいバージョンに圧縮します。長いレポートのブリーフィングを必要とする経営幹部や、長い記事からニュースの要約を生成するアプリに役立ちます。
 

質問応答システム

QAシステムにより、ユーザーは自然言語で質問し、直接回答を得ることができます。チャットボット、音声アシスタント、エンタープライズ検索ツールは、ドキュメントの長いリストではなく、最も関連性の高い事実や文章を返すことができます。

自然言語処理を使用するメリット

以下に、NLPを使用する4つの明確なメリットを示します。それぞれのメリットにより、企業はよりスマートなスケーリング、より迅速な対応、先んじた対応が可能になります。
 

非構造化データからのインサイト取得の迅速化

ほとんどのビジネスデータは、Eメール、チャットログ、顧客レビュー、トランスクリプトなどに格納されています。NLPは、手動でのタグ付けや推測を行うことなく、テキストからリアルタイムでインサイトを大規模に引き出します。その結果、チームは、トレンド、リスク、機会を数日単位ではなく数分で見つけ出すことがます。
 

自動化による顧客エンゲージメントの向上

NLPによってチャットボット、仮想エージェント、自動化されたサポートツールが強化され、顧客を待たせることなく、いつでも日常的な質問に対応できるようになります。その結果、人間のスタッフはよりビジネスクリティカルな問題に集中できるようになり、すべてのタッチポイントにわたってより迅速でスムーズな体験がもたらされます。
 

意思決定の精度の向上

NLPによってテキスト内の感情、テーマ、意図を分類することで、必要なタイミングでより深いシグナルを見出すことができます。NLPは、新機能に対する顧客の感想、フィードバックで多く取り上げられているトピック、サポートチャットで次々と発生する質問など、さまざまな情報に基づいてインサイトの精度を高め、リーダーが実際の問題に対応できるようにします。
 

大規模なデータセット間でのスケーラビリティ

NLP(自然言語処理)は、他の方法ではチームの負担となってしまう言語集約的なタスクを自動化します。長いドキュメントをまとめたり、契約書から重要な詳細情報を抽出したり、何千ものサポートチケットをほぼ瞬時に精査したりできます。これにより、人員を大幅に増やしたり、データのバックログを発生させたりすることなく業務を拡大できます。

自然言語処理の課題

NLPによって自動化が可能になり、インサイトが得られるようになりますが、実際に活用するには課題があります。以下に、NLPの最も一般的な課題と、組織におけるその対処方法をいくつか紹介します。
 

あいまいなデータやノイズの多いデータの処理

人間の言葉は複雑で厄介です。スペルミス、スラング、皮肉、特定分野に固有の専門用語により、モデルが正しく機能しないことがあります。クリーンなテキストであっても、コンテキストに応じて複数の意味を持つことが頻繁にあります。この問題に対処する最善の方法は、大規模で多様なトレーニングデータセットを使用して、特定の分野に特化した例でモデルを継続的にファインチューニングし、特定のビジネスの現場において人が行う実際の会話を習得することです。
 

多言語コンテンツの管理

グローバル企業は、多くの言語、方言、文化的バリエーションを取り扱っています。英語の語句を、北京語やスペイン語に直接翻訳できるとは限りません。モダンなニューラル機械翻訳は有用ですが、継続的なトレーニングと慎重な評価が必要です。多くのチームは、ニッチな用語や業界用語に対応するために、構築済みの翻訳モデルと社内でのファインチューニングを組み合わせています。
 

プライバシーとコンプライアンスの維持

多くの場合、NLPは機密データの処理に使用されるため、コンプライアンスの問題が生じる可能性があります。このデータの取り扱いについては、規制によって厳格な要件が設定されています。組織には、情報の処理と保存の方法を示す匿名化、暗号化、監査証跡という強力な保護手段が必要です。
 

モデルのバイアスと公平性の問題への対処

NLPモデルは人間の言語から学習するため、人間のバイアスを吸収することがあります。そのため、採用したツールやチャットボットなどのアプリケーションでは、不公平な、または攻撃的な出力が生じる可能性があります。バイアスへの対処は、多様なトレーニングデータと継続的な監視から始まります。企業には、スケーリングする前に意図しない出力をキャッチし、モデルを調整するレビュープロセスも必要です。

自然言語処理の例とユースケース

以下に、企業がNLPを実際に活用している5つの方法と、そのユースケースがなぜ重要であるのかを示します。
 

ソーシャルメディアのモニタリングにおけるセンチメント分析

ブランドは、NLPを使用して、ソーシャルメディア、フォーラム、レビューなどのオンラインフィードバックを精査し、人々の感情をリアルタイムで確認しています。このためチームは、PRの小さなミスやポジティブな言及の急増など、認識の変化に迅速に対応できます。NLPはセンチメントを大規模に掘り下げるため、人間のチームがすべてのツイートやコメントを個別に解析する必要はありません。
 

チャットボットとバーチャルアシスタント

現在、カスタマーサポートはオンラインで稼働しており、NLPがその円滑な稼働を支えています。チャットボットや音声アシスタントは、ユーザーの入力の内容や発言を読み、コンテキストを意識した応答を返します。この結果、人間の担当者の負担が軽減され、顧客に迅速に回答できるようになります。ロボットのように聞こえることもありません。SiriやAlexaなど、ウェブ上のさまざまなサポートボットがこのシステムを使用しています。
 

言語翻訳サービス

新しい市場に進出する際に、すべての翻訳を手作業で行う必要はありません。NLPシステム、特にニューラル翻訳システムは、複数の言語にわたってコンテンツを正確に変換します。その結果、企業は、アプリ、サポートコンテンツ、マーケティングコピーを、リージョンごとに個別のパイプラインを構築することなく迅速にローカライズできるようになります。
 

テキスト要約

長いレポート、テクニカルドキュメント、会議のトランスクリプトなど、NLPは、重要なポイントを抽出して簡潔なダイジェストを作成できます。この結果、時間が節約され、チームはより重要なビジネスタスクに集中できます。
 

固有表現認識(NER)

NERでは、競合製品に関する言及のフラグ付け、通話のトランスクリプトにおける話者名の追跡、契約からの期日の抽出が可能です。最小限の手作業により、情報に関するコンテキストが得られます。

結論

NLPは、AIが人間の言語を理解し、使用する方法です。コンピューターが言語を読み取り、解釈し、生成できるようにするNLPは、モダンなAIとデータアナリティクス戦略の中核を担っています。未加工の非構造化データを、組織が処理できる形式に変換します。

NLPを支える技術やモデルは、リサーチラボの枠を超えて、ビジネスで日常的に使用されています。この結果、企業は業務をより迅速に進め、より的確な意思決定を行い、使用する人々がより自然に感じられる体験を生み出せるようになります。

もちろん、課題も残っています。乱雑なデータ、複数の言語、コンプライアンス要件、モデルのバイアスによってNLPのパフォーマンスが左右されることがあります。しかし、適切なアプローチを採用することで、組織はこのような課題に対処しながら、効率性、スケール、深いインサイトのメリットを得ることができます。

NLPは単なる技術的な機能ではありません。言語を大規模に理解し、アクションへと変換する能力を企業にもたらす戦略的アセットです。AIが進化し続ける中、NLPの習得に投資している企業は、イノベーション、競争、成長において優位な立場を確保できます。

自然言語処理に関するよくある質問

NLPは人工知能の一分野です。AIは人間の知能を模倣する幅広い技術をカバーしていますが、NLPでは、特に言語、つまり機械がテキストや音声を読み、解釈し、生成する方法に焦点を当てています。AIはより大きな分野であり、NLPはその中核的な用途の一つです。

モダンなNLPシステムのほとんどは、機械学習を基盤としています。手書きの文法ルールに頼ることなく、膨大なテキストデータセットから学習します。BERTやGPTのようなモデルは、ディープラーニングアーキテクチャを使用してコンテキストや意味を理解します。そのため、翻訳、要約、質問への回答などのタスクに効果的です。

クラウドプロバイダーやソフトウェアベンダーは、ビジネスワークフローに直接プラグインできるNLPサービスを提供しています。たとえば、AWS、Google、IBM、Microsoftといったプロバイダーのセンチメント分析API、翻訳サービス、エンティティ認識ツール、チャットボットプラットフォームなどがあります。これらのサービスにより、企業はすべてをゼロから構築することなくNLPを迅速に導入できます。

企業は、カスタマーサポートチャットボット、ソーシャルメディアのモニタリング、コンプライアンスチェック、契約書レビュー、音声アシスタントにNLPを適用しています。各ユースケースの基盤は同じであり、これは、非構造化言語を、チームが対処できる構造化されたインサイトに変換することです。