
カスタマーストーリー
三菱UFJ信託銀行グループ3社がSnowflakeを採用 データ共有、データベース管理コストの削減、 パフォーマンス向上に成果を挙げる
三菱UFJ信託銀行グループは、サイロ化やデータ共有の非効率性といった課題解決に向けて、Snowflakeをデータ基盤として採用。部門やグループ企業間のデータ統合、顧客とのリアルタイムな情報連携を実現し、データ管理の効率化とコスト削減を実現した。半構造化データや外部データの利活用を進め、AI時代を見据えた次のデータ戦略へと歩みを進めている。
KEY RESULTS:
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顧客とのデータ共有にかかる作業が不要に


業種
Financial Services所在地
東京、日本研究テーマごとにデータベースが増え続け、管理コスト増大が大きな課題に
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、国内外で金融サービスを提供する日本最大の金融持株会社であり、世界最大の金融機関の一つだ。MUFGにおいて信託機能を担うのが、三菱UFJ信託銀行(MUTB)を中核とする企業グループである。グループ内の3社が、金融データ利活用に関する課題解決にSnowflakeを採用し、成果を挙げている。
その皮切りになったのは、2022年9月よりSnowflakeの運用を開始させた三菱UFJトラスト投資工学研究所(MTEC)の取り組みだった。金融工学に特化したシンクタンクとして、資産運用やリスク管理に関する研究やモデル提供、投資助言、データ分析に関する各種コンサルティングを行うMTECの課題の一つは、データソースの増加に伴う管理工数の増大だった。主任フィナンシャルエンジニアの岡田 剛氏はこう説明する。
「当社は、プライベートクラウドとパブリッククラウド環境に分析の軸となるマーケットデータをヒストリカルに保持するほか、研究テーマに応じた多様なデータを収集しています。中には研究員自身が運用するデータベースもあり、その運用管理工数の削減は以前から課題になっていました。データのサイロ化は分析の効率低下にもつながっていました。特にJSONやXML形式の半構造化データについては別途Amazon S3に格納しているため、分析時にはこれらのデータを個別に抽出する必要があり、さらなる非効率を招いていました。また、一部のアドホック分析による高負荷な処理が環境全体のパフォーマンスに顕著な影響を及ぼしていました」
クライアントとのデータ共有も課題の一つだった。MTECは顧客からデータの提供を受け分析を行うことも多い。これまで社外とのデータのやり取りはデータ共有サービス等を利用して行ってきたが、データ量の多さとサービスの制約から、データを分割してアップロードするなどの手間やリアルタイムにデータをやり取りできない課題が生じていたという。一連の課題解決に向け、リサーチを行う中で行き着いたのがSnowflakeのデータ基盤だった。岡田氏はその理由をこう振り返る。
「最大のポイントは、研究データ基盤として多様なデータを一元管理し、バッチ処理やアドホック処理等、さまざまなワークロードのリソースを独立して実行できるデータ基盤としての懐の広さでした。当社では、さまざまな事情からデータベースの完全統合は断念し、データ領域を2層に分割しています。データを利用するプレゼンテーション領域を介して多様なデータに一元的にアクセスできる環境構築を図り、そこにSnowflakeを配置することで、半構造化データを含め、あらゆるデータにスムーズにアクセスすることが可能になると考えました」
また、データシェアリング機能によるスムーズなデータ共有も高く評価したポイントの一つだったという。
Story Highlights
- データシェアリングによるデータ共有の省力化
- データベース統合によるコストの削減
- 半構造化データの活用促進
顧客との業務プロセスの分断を解消し、Snowflake活用によるデータ共有の省力化を実現
MUTBグループにおいて資産管理業務を専門に行う信託銀行が日本マスタートラスト信託銀行(MTBJ)だ。主に機関投資家による年金、投資信託等の運用支援を目的に2000年に誕生した同社の資産管理残高は770兆円(2024年9月末)。これは国内金融資産のほぼ1/3に相当する。MTBJが直面していたのは、顧客と自社の業務プロセスの分断という課題だった。業務企画推進部 マネージャーの野尻 伸氏はこう説明する。
「お客様とのシステム的な連携が図られていなかったため、お客様からは自社の資産の状況が見えにくく、当社としてもお客様の業務が見えにくいため潜在的な課題・ニーズをつかむことが困難でした。また、当社は1日数万件の金融取引を行っていますが、件数の増大と共に取引内容も複雑化しており、データ授受の業務負荷の増大も課題の一つでした」
これらの課題解決に向け、MTBJはデータやシステムを顧客と共有し、双方が連続性を持ち業務を行う新たな環境の構築を図ることになった。その基盤として選んだのがSnowflakeだ。
「当社と業務の共通点が多いグローバルカストディアンに取材し、Snowflakeの存在を知りました。大量データの共有という点が優れているということ、グローバルな金融機関で活用事例が多いということ、従量課金という料金体系の3点が、スモールスタートでデータ利活用を進めて徐々に拡大していきたいという当社のニーズと合致しており、採用を決めました」(野尻氏)
事業部を跨いだデータ共有と社外データ活用が大きな課題に
銀行業務と信託業務、さらには不動産仲介をはじめとする幅広い併営業務でサービスを提供するMUTBの事業は、リテール、不動産、証券代行など大きく10の事業分野から構成されている。同社の課題は、データベースが業務別に構築されていることに伴うサイロ化にあった。デジタル戦略部 調査役 ジュニアフェローの西潟 裕介氏は当時をこう振り返る。
「各事業部・グループのデータを共有する基盤が存在しない点に課題がありました。その結果、事業部間でデータ共有する際には、システムからデータを取り出してシステム外でやり取りするほか、グループ会社のMTECとの共有の際には、共有可能なサイズにデータを分割しメールでやり取りするという手間が生じていました。データ分析の観点でも同様の課題がありました。以前から当社ではBIツールによるデータ分析を推進してきましたが、全社データ基盤が存在しないため、手元のデータしか分析に利用できないという状況が続いていました」
これらの課題解決に向け、同社が選択したのは、Snowflakeによる全社データを統合管理可能なデータ基盤構築だった。

「Snowflakeを選んだ理由は大きく三つあります。一つ目は、当社で普及が進んでいたAWSとの親和性の高さです。次に、社外とのセキュアなデータ共有が容易に行える点でした。またSnowflake マーケットプレイスで利用可能な情報ベンダーデータの豊富さも高く評価したポイントの一つです。三つ目は、当社が採用するTableauをはじめとした分析ツールとの連携の 容易さでした。さらに言えば、グループ企業や協業先とのデータ連携の容易さも高く評価しました」
西潟 裕介氏
社内外の多様なデータを分析に活用できる環境を構築
3社に共通するSnowflake導入効果としてまず挙げられるのは、スムーズなデータ共有の実現である。MTBJ野尻氏はこう説明する。
「以前はお客様からのリクエストに応じて社内システムから取引データを取り出し、メール添付ファイルとして送信する作業を毎日20分ほど掛けて行っていたので、こうした作業が不要になったこと自体、大きな成果と言えます。それ以上に大きいのは、資産運用状況をタイムリーに知りたいというお客様の声に応えることができたことです。現状、Snowflakeでのデータ提供は一部のお客様のみに限られていますが、今後も拡大を進め、お客様と当社双方が抱える課題を解決していきたいと考えています」
また、Snowflakeマーケットプレイスを介することによるデータ利活用の促進も効果の一つだ。MUTB西潟氏は言う。
「当社は以前から、金融系情報ベンダーが提供する情報を業務に活用していますが、こうした社外データを分析に利用する場合、専用端末の機能的な制約が障壁になっていました。しかし、Snowflakeマーケットプレイスを介することで、自社データ同様に扱うことが可能になります。現在、仕組みづくりに取り組んでいる段階ですが、分析の待ち時間の大幅な短縮化は、データ利活用促進に大きな役割を果たすはずです」
データ基盤の一元管理は、データ管理の効率化やデータの価値の向上という観点でも大きな成果を挙げている。MTEC岡田氏は言う。
「顧客へ配付済のツールとの兼ね合いなどでデータ移行が難しいデータベースは継続して運用する一方、多くのデータベースはSnowflakeに集約できたため、管理の省力化とデータ利用の効率化に確実に貢献できています。特にこれまで研究員が運用してきた各研究テーマに関連するデータをSnowflakeに統合できたことは、本来業務への集中という観点でも大きな意味を持つと考えています。また、データエンジニアリングの作業をデータ管理チームが極力担うことができるように役割の再分配も行うことができ、組織全体の効率化にもつながっています。データを一元管理できるようになったことにより、データマネジメントの側面でも好影響が表れています。メタデータ管理やデータ品質管理の効率が向上し、データをより扱いやすい状態にすることができました。
さらに、コンピューティングリソースを適切に配置することによりレスポンス遅延も解消できています。一部顧客とはデータシェアリングを利用してデータのやり取りもスムーズにできるようになり、今後の展望としてはデータシェアリングやSnowflakeマーケットプレイスを利用したデータのマネタイズも検討しています」
MUTBグループが今後のデータ利活用において注目するのが、膨大な非構造化データの活用である。MUTB西潟氏はこう語る。
「大規模言語モデル(LLM)の台頭により、多様な非構造化データの利用が可能になりました。今後は、構造化データと非構造化データを組み合わせた分析も進むと考えられます。そうした中で、SnowflakeのAI機能の進化に注目しています。非構造化データ管理など、AI-readyに向けた取り組みを確実に進めていきたいと考えています」
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