注:本記事は(2021年5月11日)に公開された(The 5 Pillars of Marketing to Get Your Company to $100 Million and Beyond: Advice from Snowflake’s CMO, Denise Persson)を翻訳して公開したものです。

あなたの会社が競争を勝ち抜き、1億ドルの収入を得るためにはどうすればよいでしょう?これは、Snowflakeを含め、私がこれまでの25年間でマーケティングを担当し上場へと導いてきたすべてのスタートアップ企業における最大の課題でした。

この課題は簡単なものではありません。Snowflakeが創立した2012年、この課題を達成できた企業はほんのわずかでした。Ewing Marion Kauffman Foundationが実施した2013年の調査では、合理的な期間内に1億ドルの収益を達成できたのは、米国で創立された企業のわずか0.02~0.05%だったとのことです。

課題を達成させてくれる魔法の杖のようなものは存在しません。最も大切なことは、いかにうまく事業を運営するかです。ただし、会社の成長に合わせ、マーケティングチームが留意すべきいくつかの戦略や柱といったものは存在します。Snowflakeがたどった1億ドルの収益達成に向けた道のりにおいて、マーケティングの成功へと導いてくれたのは、これらの柱でした。

#1:強固なポジショニングの確立

ポジショニングは、マーケティングにおいて1つの柱以上の重要性があり、全体の土台を成すものです。家屋の建築と同様に、土台が強固でなければ、壁が崩れてしまいます。強固なポジショニングを確立することで、マーケティングの崩壊を防ぐことができ、プロジェクトへの投資がより効果的なものとなります。

Al Reisは著書の中で、「ポジショニングは見込み客の心をつかむバトル」と述べています。このバトルに打ち勝つことは、どれだけ他との差別化を図れるかにかかっています。そのために最初にすべきことは、勝ちたいカテゴリーを特定することです。

2016年当時のSnowflakeにとって、勝つべきカテゴリーは、「クラウド向けのデータウェアハウス」でした。それ以降、私たちのポジショニングは強化され、今では「データクラウド」を提供するまでになっていますが、1億ドルの収益に向けた私たちの道のりにおいては、それがポジショニングでした。

実際の見込み客を対象とした大規模なフォーカスグループを実施し、私たちのポジショニングがSnowflakeを知らない人々に効果的であることを確認しました。ほとんどの場合、企業が実施するのは見込み客や顧客との数回のインタビューですが、それだけでは十分とは言えません。確立しようとしているカテゴリーが、自社が成長した次の段階の販売先企業に適したものでなくてはなりません。

見込み客から多くのデータやインサイトを得ることもできます。このデータドリブンなプロセスにより、ポジショニングにおける一貫性の確立に不可欠な社内での賛同を得やすくなります。従業員、パートナー、顧客のすべてが、皆さんの企業に対して一貫したイメージを持つことが必要です。

3年以上にわたり、私たちは「クラウド向けデータウェアハウス」というポジショニングを徹底して遂行し、誰かがこれとは異なる企業イメージを持っていれば修正してきました。半年ごとに変わってしまうようなポジショニングでは、見込み客の心にイメージを植え付けることはできません。徹底して一貫しているほど、マーケティングの効果が大きくなります。

#2:誰よりも顧客中心に

世界で最も称賛されているブランドの共通点と言えば、それぞれが独自のカテゴリーを確立していることです。ブランドエクスペリエンスが非常に一貫しており、顧客のロイヤリティは驚くべきものです。

Snowflakeマーケティングチームにおいて、当初から最優先としてきたのは「カスタマーファースト」です。これは常に、顧客は私たちに何を求めているのか、と外部からの視点を持って自分たちにできることを考えるということです。

私たちは、顧客に焦点を合わせ続けるためにいくつかのことを実施しました。マーケティングチームは、顧客と接するセールスエンジニアとほぼ毎日ミーティングを行いました。これにより、対応すべき問題や課題を知ることができました。

このような初期段階においてコンテンツ開発を発展させるため、ほとんどすべての従業員に、顧客が知りたがっている内容にピンポイントで焦点を当てたコンテンツを書いてもらったり、動画作成を任せたりしました。これにより、スタートアップ企業にとって難しい信頼と信用を得ることができました。 

また、可能な限り、実際の顧客にマーケティングの最前線に立ってもらいました。現在では、顧客の中に何千というブランドアンバサダーを抱えており、彼らこそが最も効果的なマーケティングそのものだと言えます。

私たちは、顧客にマーケティングの取り組みに参加してもらうために、直接的な関係の構築に努め、参加することが彼らにとっても価値があるようにしました。また、カスタマー・アドバイザリーボード・ミーティングを開始し、そこでは本物に似せて作ったドル札を顧客に渡し、当社のロードマップの様々な分野に投資するよう頼みました。これにより、彼らが一番関心のあることを優先することができました。

最後になりましたが、企業には、できるだけ早期に年次の顧客満足度調査を始めることをお勧めします。これは、ネットプロモータースコア(NPS)の向上にもつながります。私たちは毎年、Snowflakeのコンポーネントひとつひとつについてカスタマーエクスペリエンスを調査し、非常に貴重なインサイトを得ています。

#3:成長に向けた構築

多くのスタートアップ企業が2,000万ドルを達成したあと、成長の鈍化を経験しています。その原因は、手作業に頼り、成長に向けたマーケティングテクノロジースタックやプロセスの構築を怠ったことにあります。

2017年、Snowflakeのあらゆる全員参加のミーティングで大きなトピックとなったのが、より多くの作業を自動化し「ハムスター(回し車を必死に回すが前進はしない)」を排除することでした。自動化すべき業務に費やしているリソースすべてがハムスターに該当します。初期のころは、顧客のためのアカウントの開設といった非常に重要な役割を担っていたリソースも、無料トライアルの登録者が使用できる完全に自動化されたプロビジョニングシステムが稼働したあとには、それほど重要ではなくなります。

また当初から、企業成長に合わせたマーケティングテクノロジースタックの構築に努めました。これを怠ると成長は鈍化し、場当たり的な修正に追われて成長の勢いを削がれてしまいます。

さらに、デマンド処理のすべてのコンポーネントのスケーリングを図りました。たとえば、1対1のミーティングを削減するために製品デモのライブ配信を取り入れました。毎週開催の「オフィスアワー」制度を設け、見込み客がリファレンスカスタマーとリアルタイムで会話でき、その場で質問に対する回答を得られるようにしました。これにより、1対1のリファレンスコールを求められることがなくなり、顧客の貴重な時間の節約につながりました。

迅速に収益1億ドルを達成しできるだけ早い段階でハムスター排除を目指すスタートアップ企業は、企業の成長と共にテクノロジーも進化させ、手間を要するバイヤージャーニーのあらゆるコンポーネントを改善する必要があります。

#4:大胆に

競争の激しい現在の市場に風穴を開け、巨大な有名なブランドに勝利するには、人々に認知されなければなりません。問題は、ブランド認知度の向上には時間とお金がかかるということです。そしてほとんどのスタートアップ企業にはその両方が不足しています。

では、何ができるでしょうか。認識されるための最大の武器は、大胆さにあると思います。もちろん、大胆さにはリスクが伴いますが、Snowflakeは大きなビジョンを掲げており、私たちの価値や文化にマッチする大胆なブランドの構築を実現しました。

初期のころ、シリコンバレーの住人の多くは、ハイウェイ101に掲げられたビルボード広告で当社を認識していました。そしてこの広告は、求人において非常に重要な役割を果たしました。小さなスタートアップ企業は才能ある人材を勝ち取らねばならず、そのためには目立つ必要があります。新入社員のオンボーディングセッションでは、毎回、半分以上がSnowflakeをビルボード広告で知った、と答えていました。

ビルボード上のメッセージは最新の出来事を反映したものが多く、当社のポジショニングを強化するために必ずデータを取り上げたものにしました。多くの人が大変気に入ってくれました。中には気に入らないと言う人もいましたが、大胆で他とは異なる広告により、初期の段階で必要としていた人々の関心を引くことに成功したと言えます。

#5:営業との連携

最後は、最も重要な柱です。営業チームとマーケティングチームは、1つのチームとして機能しなければなりません。これは、マーケティングの効率性においても収益向上においても不可欠なものです。マーケティングプロジェクトが営業戦略や目標と一致していなければ、無駄な努力をすることになってしまいます。

Snowflakeが急速な成長を遂げた最大の要因は、創立当初からの、会社全体における強力な連携にあります。社内の調整ポイントは、営業パイプラインに即しています。私の仕事は、マーケティングチームが営業チームと完全に連携し、常に同じ速度で動いているかを日々確認することです。

私は、Snowflakeで働き始めたころ、毎週月曜の朝、8人の営業開発担当と会い、彼らの取り組みに即したマーケティングプロジェクトを計画していました。現在では、マーケティングおよび営業担当の人材は1,000人を超えていますが、今でも同じ調整を行っています。

営業担当とマーケティング担当の間には健全な緊張感が必要だ、と考える人もいますが、私は、そのような状況は誤解や否定的な緊張につながると思います。マーケターとして成功するには、営業担当の手腕を深く理解し、称えることが必要です。

急成長の構図

Snowflakeの初期を思い返すと、この5つの柱は私たちの速度と成長に大きな影響を与えていたということが分かります。これは、ほとんどのスタートアップ企業にも当てはまると思います。早い段階でポジショニングへの投資を行い、一貫性を保ってください。あらゆるマーケティングで顧客に最前線に立ってもらい、定期的なフィードバックを得られるようにしてください。成長に向けたマーケティングスタックやプロセスを構築してください。恐れずに大胆さを持ってください。そして一番重要な点として、1つのミッションにおいて、マーケティングや営業チームだけでなく、全員が同じ目標を共有するよう、組織全体で連携してください。これらの柱を実施することにより、スタートアップ企業が、1億ドル、もしくはそれ以上の収益を生み出すための、強固なマーケティング基盤が構築されます。