注:本記事は(2021年11月22日)に公開された(Revolution Robotics: A Nonprofit Finds Power in Transformation)を翻訳して公開したものです。

ロボティクスと聞くと、精密な設計、製作物、さらにコーディングをイメージするかもしれません。これらのすべては、莫大な経費と技術を必要とします。このようなイメージの中には真実も含まれていますが、NPOであるRevolution Roboticsはより幅広い学生たちに、この分野に親しみを感じてもらえるように活動しています。ここでは、ロボットの持つ楽しい要素を活用して、子どもたちや大人に科学・技術・工学・数学(STEM)分野に触れる機会を提供しています。

Revolution Roboticsは、高い収益スキルと非営利活動への傾倒を併せ持つRosemary HuaをCEOとして迎えました。Snowflakeのリテール&CPG担当グローバルヘッドであるHuaは、企業組織におけるトップクラスの経験を有しています。Empathy FX Internationalの創設者兼エグゼクティブディレクターである彼女は、非営利部門で培われた実践スキルが豊富です。

Revolution Roboticsの創設者らは、同時に、消費者データの世界最大のオムニチャネルであるNumeratorの創設者でもあります。利益の追求に専心する企業専門家や起業家がいる一方、自らを成功に導いたスキルを用いて、他者を成功に導きたいと考える人たちもいます。このような考えを持つJared Schreiber氏と彼のパートナーたちがRevolution Roboticsを創設し、HuaをCEOとして迎えました。

利益を上げるためのスキルを組織の運営やリーダーとしての才能へと転換させる点において、Huaは素晴らしい例であると言えます。非営利組織での活動もまた、企業での彼女の業務にメリットをもたらしています。

STEM分野におけるダイバーシティの構築

Huaは次のように語っています。「私はすべてのキャリアをデータアナリティクスとテクノロジーの分野で培ってきました。私は女性でアジア人、そして年齢も若いです。これらの3つの属性が、必ずしも大企業の重役会議の大半を占めることはありませんが、私は、STEM分野に関心を持ち、キャリアや学問においてこの分野に進む若いマイノリティの女性が増えることを期待しています。」

Huaは、ダイバーシティがなければ、テクノロジー企業が構築するモデルには限られたバイアスセットが体系化されることになる、と言います。彼女は次のように続けました。「そのため、私はRevolution Roboticsで重要な役割を担っていると言えます。私がいることで、若い女性たちにテクノロジー、STEM分野、またデータに興味を持ってもらうことができます。」

Huaは、企業におけるキャリアを開始する前から、非営利セクターでの活動を始めていました。

彼女はEmpathy FX Internationalについて次のように語っています。「私が国際的な非営利組織の創設に着手したのは、2009年のことです。私たちはガーナに5つの学校を立て、今でもこれらの学校の維持と運営に携わっています。私は、これまでの8年間に引き続き、今後も毎年ガーナを訪問する予定です。」

Huaによると、成功だけでは達成感や満足感は得られないそうです。

彼女は次のように語っています。「充足感や肯定的な感情だけで、幸せという概念のすべてを構成しているのではありません。どちらかと言えば、自身の行動に対する深い意義や達成感が不可欠です。そのため、日中の業務にこの4つの要素すべてが伴っていなければ、夜間や週末に補います。だからこそ、私は非営利セクターの活動に膨大な時間を割いています。」

ロボットの魅力

もし、子どもたちがどうしてロボティクスに関心を持つようになるのか不思議に感じるなら、「レゴ」思い浮かべてみてください。「レゴ」は非常に人気のあるおもちゃですが、「レゴ マインドストーム」のような大きなキットは高価です。このような大型のキットで遊ぶ子どもたちは、エンジニアの両親を持っている場合が多い、とHuaは言います。しかし、組み立てることに対する情熱は上流階級だけが持つものではありません。Revolution Roboticsは、Raspberry Piの「頭脳」とオープンソースのテクノロジーを使用して再利用可能なキットを製作し、手頃な価格で学校などの団体に提供しました。

Revolution Roboticsのシニアプログラムディレクターを務めるMiller J. Roberts III氏によると、若者にとってのロボティクスの即時的魅力を表すのには、2つの側面があると言います。

Roberts氏は次のように語っています。「数学や科学が苦手だと言われていた生徒がいたとして、その子に突然このようなインタラクティブな実体験をさせると、彼らは興奮するのです。そうせずにはいられないからです。また、チームワークの経験に乏しい生徒に出会うこともあります。『うちの子はチーム競技に向いていません。グループ活動もあまりしてきていません。それなのに、ロボティクスには魅力を感じ、また向いているようです』と言う保護者は数え切れません。 

小さな子が、競技で勝つためにロボット作りで徹夜した、と話すのは、それが本人にとって世界で一番やりたいことだからです。」

Revolution Roboticsは、これまで与えられることのなかったチーム活動や競技、また学問の機会を学生に提供するだけではありません。大人に対しても機会を提供しています。

Roberts氏は、ロボティクスチームの立ち上げを検討している人々から「どれだけの経験が必要ですか」とよく聞かれたそうです。 

彼の答えは次のようなものでした。「実のところ、学生たちに『こうしろ』という指示を出せないため、経験などない方が良いくらいです。エンジニアリングとは、知恵と工夫です。エンジニアリングの問題に決まった答えがあると学生たちが考えてしまったら、彼らの成長を押さえつけてしまいます。私たちは、この取り組みを誰でもが利用できるものにしたいと考えています。数学の教師やエンジニアリング業界で働いている父親である必要はありません。誰でもこの取り組みの指揮を執ることができます。『ぜひコーチとしてこの取り組みに参加したい』と言ってくれたシカゴの学校の用務員の方は学校の司書とペアを組んで参加してくれました。」

コロナ後のロボティクス

多くの企業同様、2019年に創設されたRevolution Roboticsも新型コロナウイルスの流行から深刻な影響を受けました。事業には急ブレーキがかかり、そのためHuaは、フルタイムでRevolution Roboticsで勤務するのではなくSnowflakeでも職を得ることになりました。しかし、このような状況の中でもキットの人気は高く、コロナの感染拡大の2か月前までに、初回販売数の1,000キット近くを売り切りました。

次回販売数は10,000キットです。

彼は次のように続けています。「コロナの影響にもかかわらず、学校はロボティクスチームをサポートしてくれ、私たちも仮想教室や仮想コンテストを実施しました。非常に素晴らしいことです。チームは、カリフォルニア州、メリーランド州、テキサス州に存在し、ハンガリーにも参加者がいます。取り組みが頓挫したわけではありません。」

Roberts氏は、学校へのロボティクスの取り込みについては、未だ初期段階だと考えています。その通りだとするならば、Roberts氏が描く「バスケットボールや野球チームのように、気軽に参加できるもの」にするために、起業家は重要な役割を果たすことができます。

Revolution Roboticsが提唱する大きなメッセージの1つに、物事のやりかたに「正しい方法」というものはなく、また変革には制限がない、というものがあります。利益が生まれそうもないところから収益を上げるバイスプレジデント、ロボティクスチームを率いる用務員、数学に情熱を見出す劣等生など、可能性は無限です。