注:本記事は(2022年2月7日)に公開された(Control Issues: Overcoming Departmental Territorialism to Increase Data Sharing)を翻訳して公開したものです。

よく耳にする悪い事例をご紹介します。

マーケティング部署がリード(見込み客)を獲得し、営業部署に引き継ぎました。マーケティングの成功は、最終的な取引の数や規模により測定されるところがあります。しかし、営業部がどのようにリードに対応し、コンバージョンに貢献したかという点について、つまらない争いが起きる場合があります。

結果:どちらの部署も自分たちが保有するデータを共有したがらなくなります。

ロジスティクス対カスタマーサービス、IT対事業部門、ある事業部対別の事業部など、データオーナーシップとデータシェアリングにおける対立は企業活動のあらゆる場面で発生する可能性があります。実際、データ管理における課題は例外的なものではなく、よくある話です。データコンサルティング会社、Tongere Partnersの創設者であるRich Peters氏は、「データオーナーシップは、ほとんどの企業にとって難しい課題です」と述べています。

この問題の一部は、多くの企業におけるサイロ化されたデータソースの蔓延に端を発しています。2021年12月に実施された米国IDCの「State of the CDO Survey(CDOの現状調査)」(SnowflakeのエリートパートナーであるInformaticaが委託)によると、79%の企業が100を超すデータソースを使用しており、そのうちの30%は1,000以上のソースを使用していました。Adobeが実施した別の調査では、顧客に対する単一の共通認識の構築を阻害する要因として、次の3点が挙げられています。

  • データソースの統合
  • データサイロ
  • 部門間のデータサイロ

データの断片化は人間が持つ防御傾向と相まって領土主義へとつながり、問題へと発展します。業界全体でのデータシェアリングの潜在的価値は実証されているにもかかわらず、多くの企業が依然として社内での共有に躓いている状態です。

本記事では、社内でのデータシェアリングの促進に向け、データ管理の問題解決に向けた専門家によるインサイトを共有します。

オーナーシップ対スチュワードシップ対アクセス

貴重な意見としては(この考え方は、明らかにたいていの企業で一定した教育的取り組みが必要とされますが)、オーナーシップ、スチュワードシップ、さらにアクセスの分離があります。

SnowflakeのプリンシパルデータストラテジストであるJennifer Belissentは、あらゆる部署が今でも自身が取得、作成したデータを「所有」できている、と言及しています。Belissentが「素晴らしいアナリティクスロードマップの条件とは」で説明したように、データの品質要件や使用すべきまたは使用すべきでない用途を最も把握しているのは、それぞれの部署です。彼女はこの点について、データスチュワードを任命し、アクセスや使用における方針を設定し徹底させ、同時に「その取り組みをより広範囲の会社規模のガバナンスポリシーと連携させること」が最善の対処方法だと語っています。

Peters氏は、データオーナーシップとデータアクセスは2つの異なるものである、という点に同意しています。彼は、「ある事業やデータについて、組織内の誰かがナチュラルなオーナーとなる」と語っています。他の部署がどのようにデータを使用したいと思っているかを可視化することにより、領土主義が定着してしまうのを阻止することができます。

データシェアリング契約の検討

住宅所有者であれば、浴室の改装で誰かを雇う際、書面による契約を交わさなければ痛い目に遭う可能性が高い、ということは知っています。良い契約というものは、すべての当事者に明確さと保証を提供するのです。

同様のことがデータシェアリングにも言えます。Belissentは、たとえ単一の組織内の場合であっても正式なデータシェアリング契約の重要性について強調しています。データシェアリング契約とは、前述のセクションで説明したような理解や期待される内容を文書化したものです。

このような社内における合意事項は、データパートナーシップが拡大し、より多くの外部の事業体を含むようになったときに重宝します。契約条件は変更されるでしょうし、プロセスにおける法務部署の役割は間違いなく拡大するはずですが、その構造と、このような合意事項がどのように機能するか、または機能しないかという点での社内の認識があれば、外部契約のより迅速かつ容易な締結につながります。

飴と鞭の使い分け

「正式な契約」という考え方に対して、当初は抵抗を示す人たちもいるかもしれません。そのため、必要性と同じくらいメリットを示すことが不可欠です。

データシェアリングの多くの側面においても同じことが言えます。Belissentは「要求するよりも、ポジティブなインセンティブを与える方が効果的」だと言っています。インサイトチームの成長や企業のデータプログラムのロードマップに基づく進行に伴い、企業としての最優先事項を強調し、即時的成果やビジネスインパクトについて常にコミュニケーションをとることが重要です。

部署や事業部門が、それぞれが所有するデータについて、どのように使用され、どこで利用することができ、どのようにビジネス価値の向上に貢献しているかなどを把握できるため、透明性のあるプロセスも効果的です。また、自らの部署や事業部門の目的のために利用可能となった新たなデータカタログやレポートについて、積極的にコミュニケーションをとることも他部署との相互関係において重要です。

インサイトプログラムは参加する各部署それぞれの具体的目標の達成において有効である、という考え方を定着させるには、このような作業すべてが役立ちます。また、ガバナンス要件の確立または新たな要件の発生(これらはプログラムの成熟に伴い確実に生じるものですが)に伴い、部署からの反対は減少していくはずです。

徹底したITおよび事業部門のエンゲージメント構築

私たちは、小学校に入学するとすぐに、共有とは信頼に基づくものだということを学びます。この基本的な考え方はデータシェアリングにおいても適用されます。アナリティクスプログラムにおいては、関係するすべての当事者間における継続的かつ計画的な関係構築が有効である、と専門家も述べています。

言語や理解を共有することで、コラボレーションの基盤が確立されます。IT部門はビジネスリーダーの優先事項や課題を完全に把握していることを(主に聞き役に徹することで)示す必要があります。

Peters氏は次のように語っています。「午後の会議では、このような定義づけやオーナーシップ問題について詳細に議論することができます。子会社のことは気に掛けているのか、どのように彼らに販売するのか、ファネルはどのようなものか、セールスサイクルはどれぐらいの期間か、トラッキングする必要があるのは何か、といった議題が考えられます。

組織が何をしているかを理解せずにデータを理解することはできません。例えば、IT部門がすべての事項を具体的に説明するのは困難だとしても、業務プロセスについて質問すれば、1日中でも話し続けてくれるでしょう。」

ITやビジネスにおいて信頼や共通認識を追い求めることは、今に始まったことではありません。アナリティクスの名のもとで行われる進歩は、ビジネス課題に対してテクノロジーを導入する他の分野でも効果を発揮することでしょう。データシェアリングひとつとっても、一貫したレポーティングから、より正確なモデル、より深い顧客インサイト、新たな市場機会まで、幅広いメリットを得ることができます。