注:本記事は(2022年2月16日)に公開された(An Iterative, Outside-In Approach to Pricing Your Data)を翻訳して公開したものです。

「私のデータの価値はどの程度ですか?」と尋ねられた場合、私はほとんどの場合、挑発的に「価値はありません」と答えています。しかしそれは、そのデータを使う人が誰もいなければ、という条件付きの答えです。データ本来の価値を定義しようというさまざまな努力がなされているとしても、データが本来持っている価値はありません。しかしデータから価値を引き出す方法は、文字通り100万通り以上存在します。それこそ、私たちがデータの価値を判断する方法に他なりません。データの用途によってその価値が決まり、その価値によって価格が決まります。

例えば、データの品質、更新頻度、データセットの独自性など、データの特徴を把握しているとすれば、これらが潜在的価値を示唆しています。もし、そのデータがどこにでもあり、簡単に代用できるものであれば、それほど価値がないのかもしれません。しかし、そのデータが本当にユニークで、他の人がほとんどアクセスできないようなインサイトを提供できるものであれば、価格帯は高くなる可能性もあります。では、その価格とはどの程度のものになるでしょうか?

ここに課題が残ります。ユニークなデータセットが市場に出されたとしても、商業的な価値は不明であり、価格も捉えどころがありません。データの収益化に着手する企業の多くは、このようなシナリオに陥っています。推定値に基づいて価格を設定し、顧客の関心に基づいて調整するも場合もあります。すぐに好意的な反応が殺到すれば、その後の購入者はより高い価格で購入することになるかもしれません。一方で見込み客が二の足を踏むようであれば、交渉次第で値下げが可能かもしれません。試行錯誤を繰り返しながら、買い手にとっての価値を想定し、「本当の」価格を探っていくことになります。試行錯誤による価格設定はうまく行くかもしれませんが、特に効率的でもなく、顧客との前向きな関係性を築く上でも効果的とは言えません。

未知のものを割り出す

データ価格のより計画的なアウトサイドインアプローチは、次の3つの質問から始まります。 

  • 顧客は何に対して積極的にお金を払おうとしているか
  • 類似のデータに対して他社はどのように価格を設定しているか
  • そこから顧客がどのような価値を引き出すことができるか

残念ながら、多くの場合その答えは不明です。しかし、方程式の他の部分が出発点になる可能性はあります。数学の問題を解くとき、多くの場合はわかっていること、つまり「与えられた数字」から始めます(三角形の一辺の長さと他の辺との関係がわかっている場合など)。データ製品やサービスの価格設定において、「与えられたもの」を特定することで未知のものを割り出す方法には、次のようなものがあります。

  • まずは社内での利用、つまり収益の確保やコスト削減から始める方法。膨大な数の列車を管理しているSiemens Mobilityは、予期せぬ故障に対処するよりも、予測された定期保守の方が安上がりであることを把握していました。分析モデルを利用することでこのようなメンテナンスの必要性を正確に予測し、コストのかかる予定外のダウンタイムを排除できます。その予定外のダウンタイムのコストが、インサイトサービスの価格(と価値)の出発点となります。故障の減少や列車の稼働率の向上による顧客満足度の向上により、データサービスの推定価値はさらに高まります。顧客が社内で採用したものと同様のユースケースにデータを活用できる場合、内部で発生する価値を価格設定の「与えられたもの」として使用できます。
  • POC(概念実証)やPOV(価値実証)を通じて、製品提供をテストする方法。GE Aviationは、自社で製造したエンジンについての理解を深めるためにデータを活用していました。そしてそのデータを活用することで、顧客がエンジンの操作についてより深く理解できるということに気が付きました。POCで具体的な効果を検証し、関心のある顧客との共同製作により、より洗練された製品が実現しました。GE Aviationは現在、飛行効率化サービス、燃料管理、フリート管理などを提供しています。最終的に、製品の価格は提供される価値に基づいたものとなっています。
  • サードパーティへ調査依頼する方法。医療機関向け収益管理ソフトウェアのプロバイダーは、顧客が自社の主要業績指標を、米国のメディケアやメディケイドの指標など、業界のベンチマークと比較できるようにしています。スタート時の価格を決定するために、同社はサードパーティにROI調査を依頼しました。この方法では、顧客からのインプットを利用して価値を見積り、製品の普及率を想定した上で、会社にとっての全体的な価値を決定しました。
  • パートナーエコシステムを活用する方法。パートナーがすでに自社のデータを業務改善や顧客理解に活用している場合には、その推定価値を利用して価値予測モデルを強化できます。小売業者はCPG企業と売上を共有し、需要予測を強化します。CPG企業ではどのような予測の改善があったでしょうか?無駄が省かれ、マークダウンは減少したでしょうか?
  • 不確実な結果を考慮して調整する方法。まずは、結果、つまり節約額あるいは発生する収益を、その結果を達成する可能性によって調整する必要があります。簡単に言えば、コスト削減額が100ドルでも、その結果が達成される可能性が80%であれば、期待値は80ドルにしかならないということになります。データを使用する顧客のプールがあれば、特定のユースケースにおける価値を推定するモデルはより確実なものとなります。ここでは、平均的な節約額を確認したり、その節約額を達成する可能性を推定できます。

スタートの2つの選択肢を用意

次のステップは、価格が提供される価値を反映したものであることを証明することです。それを可能にするにはいくつかの方法があります。

  • 展示と説明。購入希望者がユースケースを把握していない場合や、提供される潜在的なビジネス価値を知らない場合には、データの使用方法や価値を引き出す方法を説明するPOC(デモンストレーション)が必要となる場合があります。GE Aviationはデータチームが既存の顧客と連携することで、予測保全ソリューションの価格設定を展開しました。このような関わり方をすることで、クライアントとの製品共同開発につながることもあります。同様に、AmadeusQantas Airlinesと協力し、天候や業務の中断による影響を軽減するための混乱管理ソリューションを開発し、提供することになりました。
  • 試用と購入。展示と説明のバリエーションとして、インサイトの価値を実証するための簡単な試用オプションが用意されています。この試用と購入のモデルにより、購入希望者はデータ取得のためのビジネスケースを構築する機会を得ることができます。現在、Snowflakeデータマーケットプレイスの試用と購入の機能のプライベートプレビューが実施されており、見込み顧客はCrunchbase、Knoema、SafeGraphなどのデータセットの影響をテストできます。

インタラクティブで反復的なユーザー中心のアプローチによる価格設定の採用

定義されていないデータの属性について、さまざまな仮定を必要とする理論的な評価モデルにこだわる必要はありません。賢明な経営陣は、このような無駄な作業を放棄し、その代わりにデータの最適な利用方法やそこから得られるインサイトを特定することに重点を置きます。自社のユースケースやパートナーと顧客のユースケースにより、データ製品やサービスの価値、そして最終的な価格が決まります。

この価格設定の方程式で「与えられた」ものが、自社のコスト削減や収益を端緒にするものであっても、POCに基づくものであっても、そのプロセスはインタラクティブかつ反復的であり、ユーザー中心の敏捷性のある価格設定アプローチとなります。市場で価格をテストし、見直して修正するということの繰り返しです。データを使用する顧客のプールができれば、特定のユースケースにおける価値を推定するモデルはより確実なものとなり、価格の精度も増します。

*ここに掲載されている例は、情報提供のみを目的としており、Snowflakeの製品またはサービスの推奨を示唆または暗示するものではありません。