注:本記事は(2022年3月1日)に公開された(Optimizing the Manufacturing Process at Valmet Powered by the Snowflake Data Cloud)を翻訳して公開したものです。

Valmetについて

Valmetは、紙パルプおよびエネルギー業界に自動化を含めた各種技術・サービスを開発し提供する、この分野では世界トップクラスのグローバル企業です。産業界におけるその歴史は200年以上におよびます。Valmetグループの運営するValmet Industrial Internetは、高度なモニタリングや予測アプリケーション、高度プロセス制御(APC)、ダイナミックプロセスシミュレーター、およびValmet Performance Centerの提供するリモートサービスを包括的なソリューションに統合したデータドリブンなサービスパッケージです。

ValmetのチーフデータアーキテクトであるAntti Sirkka氏は、先日行われたData Innovation Summit SwedenでValmetのサクセスストーリーを発表しました。その中でSirkka氏は、様々な異なるプラントレベルおよびプロセス自動化システムのデータをValmet Industrial InternetでつなぐことでValmet顧客企業がどのような価値を享受できているかを説明しました。Valmet Industrial Internetソリューション導入の結果、顧客企業はより自律性の高い工場やプランへの移行が可能となり、資源効率の改善、オペレーションフレキシビリティの強化、クリーンさと安全性の向上、稼働ロケーションへの依存度低減が実現されました。

Valmet Industrial Internetの主な構成要素は、各種インダストリアルインターネットアプリケーション、Valmet Performance Center、およびValmet Customer Portalです。複数の業界トップのプレーヤーとスタートアップ企業をソリューションエコシステムで結びつけることにより、これらの企業による共同での新しいデータドリブンなソリューションの開発を可能にしています。

データ品質の確保

Sirkka氏がValmet事業のクラウドデータプラットフォームへの移行を検討するにあたり最初に行ったのは、データアーキテクチャの原則を明確化することでした。Valmetのデータアーキテクチャは、マルチテナント・マルチティア形式で、データの種類を問わず、かつ仮想プライベートクラウドをサポートする必要がありました。

Valmetの最新のペーパーマシンは年間2万~5万種類のプロセスタグと5~10TBの生データを含む大量のデータを生成します。1ミル1ライン当りのスカラーデータ生成量は年間10億行75GB、プロファイルデータ生成量は年間1億行15GBに上ります。

大部分のデータはIoTセンサーから収集されており、複数のソースから常時データが発信されています。200本のミル工場生産ラインからは年間20TBの圧縮データが生成されます。新しいデータプラットフォームは数千人のエンドユーザーからの数百件のクエリに同時に対応できる必要がありました。

Sirkka氏は、データ品質保証のためにチームメンバーが用いる評価指標を完全性、一貫性、適時性、整合性、正確性、標準性の6つとしました。

Snowflakeデータクラウドでエンドユーザーアプリケーションを強化

市場化されていた複数のデータプラットフォームソリューションを評価した結果、ValmetはSnowflakeデータクラウドの導入を決定しました。Sirkka氏は、「Snowflakeが全ての面でベストでした。Snowflakeは、セキュアで管理されたすべてのデータへのアクセスを提供することで安全で管理されたデータシェアリングを可能にします。Snowflakeのもう1つの大きなアドバンテージは優れた同時実効性と拡張性でした。Snowflakeがあればピーク負荷時も自動スケーリングが可能になります」とコメントしています。

さまざまな自動化システムから収集されるデータは、Amazon S3にロードされた後Snowflakeに取り込まれます。取り込まれたデータはステージングエリアから生データエリアに移動し、そこでビジネスルールの適用と機械学習により変換されます。変換済みデータはキュレートされたデータエリアに移動され、そこからアプリケーションデータを各エンドユーザーアプリケーションに送り込みます。

印刷プロセスのデータドリブンなコスト削減

Snowflakeは、Valmetアプリケーションの一つ「Anomaly Detector」の基盤の役割を果たします。Anomaly Detectorは、機械の不具合やウェブ切れ、および根本原因を検出します。ウェブ切れとは、製造時に印刷設備内で発生する紙の破損のことです。

Anomaly Detectorは、データに基づいて製紙プロセスの最適化に関わる主な課題を抽出します。Anomaly Detectorは顧客工程の逸脱を防ぐのに役立っており、ウェブ切れの15~20%を未然に防止する効果があったことが実証されています。Anomaly Detectionのもたらした効率向上により年間30万ユーロのコスト節減が達成されました。

データを使用して紙繊維のコストを削減

Online Quality Predictorアプリケーションは、自動化およびその他の各種プロセスシステムからのデータを使用して、紙の強度をリアルタイムで予測し、必要な対応を取るようオペレーターに通知するソリューションです。Online Quality Predictorの通知に基づく対応実施により生産グレードによっては最終的に1~8%のコスト節減を実現しました。

Online Quality Predictorの提供する一連のダッシュボードは、複数のプロパティと予測強度値およびトレンドをほぼリアルタイムで表示します。そのうちの1つ「オペレーターアドバイザービュー」は、変数をどのように制御すべきか、製造プロセスをどのように最適化すべきかをオペレーターが把握するのをサポートします。

結論

データドリブンサービスパッケージであるValmet Industrial Internetは、様々な異なるプラントレベルおよびプロセス自動化システムからの収集データをクラウドデータプラットフォームでつなぐことが如何に重要かを象徴しています。Valmet Industrial Internetによるデータ接続により、Valmet顧客企業はより自律性の高い工場やプランへの移行が可能となり、資源効率の改善、オペレーションフレキシビリティの強化、稼働ロケーションへの依存度低減を実現しています。

ValmetにとってSnowflakeがベストソリューションだった理由は、すべてのデータに対する安全で管理されたアクセスを提供できる点です。Snowflakeの同時実行性と拡張性によりValmetはピーク負荷時間の自動スケーリングが可能になりました。さらにSnowflakeの上にAnomaly DetectorやOnline Quality PredictorといったValmet独自のアプリケーションを構築することでコスト削減と製造プロセスの改善が達成されました。