注:本記事は(2022年10月26日)に公開された(MLC Life Insurance Partners with Snowflake Professional Services to Design an Architecture for Tomorrow)を翻訳して公開したものです。

MLC Life Insurance(MLCL)は、ナショナル・オーストラリア銀行(NAB)と日本生命との歴史的な戦略パートナーシップの核となる、生命保険専門の保険会社です。1400名の正社員を擁するMLC Life Insuranceは、1886年以来、オーストラリアの一般市民向け保険サービスの提供にまい進してきました。

創業後何世紀も経つ古参の保険会社が珍しくないこの業界では、多くの企業がまだ時代遅れのデータシステムに依存しています。MLCLは事業の拡大とともにさまざまな企業を吸収合併してきましたが、それぞれの企業に独自のデータアセット、ツール、技術スタック、方針管理システムがありました。規制の厳しい保険業界においては新しい技術の導入のたびにオーストラリア健全性規制庁(APRA)などの監督省庁の厳格な承認プロセスを事前にクリアしなければならず、オーストラリア国内のデータセンターでのデータの保護・保管にはそれが必須要件でした。

予測型オペレーションモデルへの移行

MLCLのクラウド最新化戦略は、Snowflakeデータクラウドをベースにしています。規制当局はビジネスが適切に管理されていることを示す正確でクリーンなデータの提示を義務付けていますが、MLCLはSnowflakeによるレガシーデータアセットの一元化により、APRAコンプライアンス基準に適合する厳格なガバナンスを達成しています。 

MLCLのデータおよびアナリティクス部門のリーダーであるScott Williamson氏は次のように語ります。「Snowflakeデータクラウドを当社のプラットフォームに選定したのは、Snowflakeであれば我々のデータセットを最大化し市場トップクラスのツールを利用できると考えたからです。保険業界では予測能力が何よりも重要となりますが、ビジネスを記述型モデルではなく予測型オペレーションモデルに移行させるためには厚みのある充実したデータが必要であり、そのことが顧客向けサービスの向上につながります。」

将来を見据えたアーキテクチャの設計

クラウドへの移行を要するペイロードの大きさを認識していたWilliamson氏のチームは、プロジェクトの開始段階からのSnowflakeプロフェッショナルサービスの利用を決断しました。

「このプロジェクトを最初からできるだけ完璧に成功させたいと考えていました。そのためにはSnowflakeプロフェッショナルサービスの利用が極めて重要であると考えました。」

MLCLデータおよびアナリティクス部門リーダー、Scott Williamson氏

MLCLは、SnowflakeがAPRA要件に適合していることを示すだけでなく、CISO(最高情報セキュリティ責任者)がリーダーを務める社内セキュリティチームのセキュリティ検証リストもクリアする必要がありましたが、Snowflakeプロフェッショナルサービスの担当チームは、「私たちは、過去のクライアント支援における実績から、このプロジェクトにおいてMLCLが要請したターンアラウンドタイムも十分に達成可能だと判断しました」と述べています。生命保険データはユーザーの人生に関わる情報であり、保護が義務付けられる財務情報や医療情報を含む極めてセンシティブなデータです。

HIPAAコンプライアンス順守のためのセキュリティチームとの連携から、Okta統合、SOC1およびSOC2セキュリティ標準への適合、さらにはAPRA承認のための複数の厳格なPOCテストの実施に至るまで、MLCLはSnowflakeプロフェッショナルサービスとの連携により自社要件全てを上回る高度なアーキテクチャを共同設計することに成功しました。

MLCLは将来に向けたさまざまなユースケースを新しく設計したアーキテクチャにスムーズに組み込むことができました。SnowflakeにダイレクトにプラグインするInformaticaのような新技術の導入であっても、あるいは将来のデータレイクへの拡張であっても、MLCLは自ら手を煩わすことなくSnowflakeのプラットフォームを利用して迅速に対応し価値を引き出すことができるでしょう。

Snowflakeの導入によりMLCLが実現したパフォーマンス改善の一例:

  • 従前のSQLサーバーによるEDW処理は、データの取り込みと生データボールトへの移動に5時間近くかかっていましたが、Snowflakeの導入によりその全所要時間が1時間に短縮されました。
  • さらに、生データボールトからビジネスボールトSQLサーバーへの移行も以前は2時間かかっていましたが、Snowflake導入後は15分で完了するようになりました。
  • 月末レポート業務は以前は完了に2時間かかっており、また日々の作業負荷にも左右されていましたが、いまはSnowflakeの利用により月末レポートは半日で完了します。

コストを管理しながら必要なインサイトを取得

Williamson氏は、新技術の導入の成功を左右するのはスピードと使用頻度であると考えています。つまり、どの程度迅速に実装できるか、また使う人がどの程度スピーディーにその技術を実際の業務に採り入れ運用できるかにかかっているということです。ただしそれにはコストバランスの慎重な見極めが必要です。

「クラウド化の推進においては、クラウド技術の導入途上で生じやすいコスト面でのトラブルを未然に回避することが極めて重要です。その点ではSnowflakeのコンピューティングとストレージの分離そのものにも価値がありますが、私たちにとってそれ以上にメリットが大きかったのは、Snowflakeプロフェッショナルサービスが当社専用に設計したダッシュボードにより、使用クレジットのモニタリングと今後の事業成長予測に合せたクレジット使用のモデリングが可能になったことです。これによりクレジット使用を有効に管理できています。」とWilliamson氏は語ります。

現在、MLCLの全事業部門およびデータサイエンスチームは、自信を持ってデータ関連の実験的試行やイタレーションに取り組んでいます。

「組織にとっての最大の課題は新しいツールの導入であるといっても過言ではありませんが、当社の社内ユーザーはみな非常に積極的にSnowflakeをそれぞれの業務に採り入れています。なぜならSnowflakeこそが彼らの待ち望んでいたソリューションだったからです。Snowflakeのお蔭でこれまでの制約が解消され、真のビジネスチャンスの追求が可能になりました。」

MLCLデータおよびアナリティクス部門リーダー、Scott Williamson氏

今後に向けた拡張

MLCLは毎月末に将来の保険リスク状況モデリングのための多くの予測ワークロードを実行しており、これを会社事業の健全性の把握に役立てています。従前のインフラストラクチャではレポートを実行できるまでに丸1週間かかっており、データの準備にも多くの手動作業が必要でしたが、今ではSnowflakeの利用により当日の朝にはすぐにレポートを出力できる状態になっています。

「まず第一に、レポート実行のための手動作業をなくすことができたのが極めて大きかったです。第二にSnowflakeを社内のシングル・ソース・オブ・トゥルース(信頼できる唯一の情報源)として運用することでさらに多くのデータの利用が可能となり、月単位でのリスクエクスポージャーの変化をより明確に把握できるようになりました。」

Snowflakeを新たなアーキテクチャの中心に据えるとともに、プロフェッショナルサービスの助言に基づいてSnowflake運用のさらなるイノベーションを検討しているいま、Williamson氏は今後各事業部門でSnowflakeプラットフォームのいっそうの定着化が進み、さらに大きな価値を実現できるであろうと期待しています。