注:本記事は(2021年10月25日)に公開された(What Today’s SaaS Providers Should Deliver to Your Organization)を翻訳して公開したものです。

今こそ私たちはSaaSプロバイダーにもっと多くのことを期待してよいのではないでしょうか。たしかに、昨今のアプリケーションはビジネスプロセスの自動化に役立ち、部門レベルでの課題に対応してくれますが、データがもたらす圧倒的なチャンスに対応してはくれません。

SaaSプロバイダーがカスタマーに最高の価値を提供するには

私が率いる営業チームの主な役割は、すべてのデータをクラウドにまとめるメリットを、カスタマーの組織に理解していただくためにサポートするところからスタートします。見込み客の会話では多くの場合、まず、データのシングルソースを提供することと、そのデータに誰もがアクセスできるようにすることの価値をお伝えしています。

その後、話題は、組織全体で安全にデータを共有するというビジネスの必須項目へと移り、さらにその先へ発展していきます。ここでようやく、ビジネスとITのエグゼクティブにとっての両輪が本格的に回り始めます。データの利用という点について、以下のようなさまざまな質問を通じて、果てしのない可能性を模索していきます。

  • 組織全体でデータをシームレスに共有できるとしたら、どのような新しい機会につながるでしょうか。パートナーやサプライヤーとデータを共有できるとしたらどうなるでしょうか。共に、どのような新市場や顧客機会を開拓できるでしょうか。新しいデータプロダクトやソリューションを生み出し、それらをパートナーやカスタマーに責任ある形で共有したり販売したりすることは可能でしょうか。
  • 足りないデータを購入することで、カスタマーが直面しているであろう課題を少しは解決できるでしょうか。私たちは、最新のデータマーケットプレイスを通じて販売できるような、またそれによって他の組織の問題解決を促すことができるようなデータを有しているでしょうか。
  • 私たちに不足している見込み客、業界、プロダクト、または環境に関するデータを持ち、協働できるような企業はあるでしょうか。統合したデータセットは現実の問題を解決できるでしょうか。私たちが現在の市場の失敗や失われた機会に対応する新しいアプリを構築するには、他の組織とパートナーシップを組むべきでしょうか。 

これらの質問は、最新のデータシェアリングがもたらす力と、ターゲットを絞った斬新なアプリケーションを開発する幅広いチャンスを示唆しています。また、なぜ私のチームや私自身が現在、データに基づく新しいビジネスパートナーシップを円滑化するため、かつてないほど多くの時間を業界全体のカスタマーとつながることに費やしているか、その理由にもなっています。

SaaSプロバイダーの場合、これらのつながりを築くことも仕事の範疇です。範疇と言うよりも、カスタマーのビジネスを拡大し、カスタマー所有のデータの利用を増やし、社内のデータ資産を責任ある形で収益化できるデータ機会を特定するのを支援するためには、不可欠な部分だと言えます。私たちはコネクターとしての新しい役割を受け入れつつあり、カスタマーがデータを利用してさらにターゲットを絞った、インパクトのあるデータドリブンなソリューションを構築するためにお役に立てるよう、鋭意取り組んでいます。

現在の企業各社がデータの真のポテンシャルを体現する上で用いている方法をいくつかご紹介します。

  • 複数の組織が連携して共同ソリューションを開発:2社以上の企業間のコラボレーションによって新しいデータプロダクトを開発するエコシステムが急増していますが、これは先進のデータシェアリングなしには実現しなかったものだと言えるでしょう。その好例として挙げられるのが、人事管理企業のADP社と、フォーチュン500企業に名を連ねる世界的な取引所グループ、インターコンチネンタル取引所(ICE)とのパートナーシップです。両社は関連するデータセットを組み合わせ、共同でデータプロダクトを構築し、それを先進のデータマーケットプレイスを介して販売しています。不動産担保証券分野の投資家を対象としたこのデータプロダクトは、これまで実現が難しかった透明性とデータの一貫性を地方債市場にもたらしています。このコラボレーションの成功に基づき、ADP社は現在、金融業界向けソフトウェアソリューション企業など、別の組織とも協働についての話し合いを進めています。
  • SaaSプロバイダーが新しいLOB(事業部門)を設立:これまで、SaaSプロバイダーと言えばテクノロジーセクターを由来としていました。しかし、大規模組織が最新のクラウドデータプラットフォームを採用するようになり、適切なツールを用いればデータを活用できることを知ってから、非テクノロジー企業もSaaS分野に進出するようになってきました。結果として、全く新しい事業部門が立ち上げられ、クレジットカード会社、銀行、食料品店チェーン、メディア企業、給与処理会社といった組織に向けたソリューションを生み出し、販売するようになりました。これらのデータソリューションは、社内外のアプリケーションカスタマー独特のニーズをターゲットとしているため、それらが生み出す価値は、かつては想像もできなかったB2BまたはB2Cのカスタマーエクスペリエンスを実現するなど、ビジネスに多大なインパクトをもたらす可能性を秘めています。
  • 共有のデータを中心にネットワークを構築:企業が簡単かつ安全にライブデータをシェアできるようになったことで、データセットとデータ分析を用いたミックスアンドマッチのアプローチがよく見られるようになりました。たとえば、大手メディア企業は、インターネット関連のサービスやプロダクトを専門としているテクノロジー企業に頼って大量の消費者データを所有するよりも、消費財メーカーに直接、自社のストリーミングサービスへの広告掲載を依頼することの価値を認識しています。メディア企業のデータは地域別の消費者行動データと組み合わされ、より的確にターゲットを絞った広告の提示に利用されています。このネットワーク効果は、データを共有している企業に優位性をもたらします。
  • 自社のデータの収益化を図る企業:データマーケットプレイスでは、データを他の組織に販売することで、自社が持つデータ資産を収益化できます。こうして多くの企業が自社のカスタマーロイヤリティプログラムをもとに、アドテク事業全体を構築しています。ある世界最大規模の航空会社も、データマーケットプレイスで自社のロイヤリティデータを販売し、消費量ベースの価格設定モデルで買主に課金することで、データの収益化を図っています。
  • 崩壊しつつある従来のサプライチェーン:組織がデータをサプライヤーとシェアすると、需要と供給に関する透明性、効率性、正確性が一段と高まります。たとえば、ある大手スーパーマーケットチェーンは現在、サプライヤーに対し、消費量ベースのモデル(使用したデータに対してのみ支払うもの)を通じて小売および在庫データを販売しています。このデータはサプライヤーにとって非常に貴重なもので、個々の店舗がどのように商品を移動させ、在庫を適宜調整しているかを正確に把握できます。結果として、在庫割り当ての効率性が高まり、コストが低減し、無駄が最小化されたほか、棚にはカスタマーが欲しいアイテムが常に並んでいるため、カスタマーエクスペリエンスも向上しています。

すべての組織がデータカンパニーになるには

少なくとも以下の3つのイノベーションによって、組織はデータをシェアし収益化できる資産として扱い、より強力なデータドリブンなソリューションをカスタマーに提供できるようになりました。

1. 最新のデータシェアリング

最新のデータアーキテクチャにより、データの共有方法に変化が生じています。データは、元の場所からコピーし、伝送して、データ利用者のデータベースにロードし、変換してからようやく分析できるというものではなくなりました。実際に、最新のデータシェアリングではデータのコピーや移動が不要であり、そのせいでデータはすぐに陳腐化します。現在、データを提供している企業は、ライブで管理されたデータへのアクセス権限を利用者に付与する方式をとっているため、データプロバイダーがデータを更新すると、データ利用者はそれらの変更をリアルタイムに受け取ることになります。

ライブデータは、複数のソースからの関連データを容易に統合できるため、組織はより迅速で賢いビジネス判断を下すことができます。複数のソースの中には、組織の事業部門をまたいで社内で共有されたデータ、外部のビジネスパートナーと共有されたデータセット、データマーケットプレイスで入手したサードパーティデータが含まれます。

実際に、最新のデータシェアリングはあらゆるデータドリブン型の使用事例を支えており、データエコノミーを促進するエンジンの役割を果たします。

2. 消費量ベースの価格設定

クラウドサービスを利用しているSaaS企業はいずれも、消費量ベースの価格設定による影響を受けます。クラウドプロバイダーはこれらのSaaS企業に消費量(使用量)に基づく課金をするため、結果としてSaaS企業はインフラ費用が変動する中で業務を行うことになります。これらのSaaS企業がクラウドサービスを利用すればするほど、クラウドプロバイダーのコンピュートインフラやストレージインフラに対してより多くの金額を支払うことになります。

しかし、多くのSaaS企業がサブスクリプションベースの価格設定モデルでソリューションを提供しているため、そのソリューションを使用するためにカスタマーが支払う固定金額と、SaaS企業がクラウドプロバイダーに使用量ベースで支払う金額とに差が出てしまいます。

ここで必要となるのは、SaaS企業が基盤となるインフラに対して支払う方法と同じように、カスタマーに対して消費量ベースで課金できるようにする請求処理エンジンです。このように価格設定戦略を変更することで、SaaS企業はカスタマーの使用量に基づいてコストや規模を調整できるほか、カスタマーも支払いを使用した分だけに抑えることができます。

消費量ベースの価格設定は、データエコノミーにおけるデータの購入、販売、共有を後押しする効果もあります。消費量ベースの請求処理エンジンを用いることで、組織は今やデータマーケットプレイスでデータを収益化することもできます。データマーケットプレイスは、管理されたデータを安全に売買し、さまざまなデータサービスにアクセスするための効率的な手段です。

3. データのセキュリティ、プライバシー、ガバナンス

もちろん、最新のデータマーケットプレイスを介してデータプロバイダーとデータ利用者間で直接的にデータをシェアしたり売買したりすることには大きな責任が伴います。組織はデータを保護し、セキュリティ侵害のリスクを最小化し、自らがデータプライバシー法やデータ保護法に違反しないよう対処する必要があります。

現在、最新のデータアーキテクチャに組み込まれているアプリケーションは、動的データマスキング、低レベルアクセスポリシー、アクセス履歴の監査など、ビルトイン式のデータガバナンス機能やプライバシー保護機能を提供しているほか、コンプライアンス、発見、保護、リソースの利用に関して機密データを追跡することもできます。

最新のデータシェアリングを活用する組織は、ライブデータにさらなるセキュリティ層を追加することになります。データは管理された方法で参照され、プライバシーが保護されます。

営業チームが企業に新しいチャンスを認識させる

営業において、当社とカスタマーとの関係は、ソリューションプロバイダーから、データおよび収益創出パートナーへとシフトしつつあります。私たちが世界中の組織のデータエコノミーの前進をお手伝いする役割を果たすことで、これらの組織がいっそう革新的なデータプロダクト、サービス、およびアプリケーションをデリバリしている様子を目にすることは、私たちにとってこれ以上にない喜びです。

SaaSソリューションから受け取る価値が高まっていくことも醍醐味です。組織がデータを介して互いに連携を深め、データに基づくエコシステムを構築すれば、結果としてより多くのデータが力を発揮する、より強力なソリューションとなります。