注:本記事は(2021年9月23日)に公開された(How ADP Embarked on New Data Distribution Models Using the Data Cloud)を翻訳して公開したものです。

給与処理および人事ソリューション大手のADP社は、大量のデータを生成し、匿名化した上で、データドリブンなインサイトとして、カスタマー、官公庁・公的機関、金融アナリスト、大学の研究者に提供しています。ポッドキャストRise of the Data Cloudの最新エピソードでは、ADP DataCloudのプロダクトおよび開発担当シニアバイスプレジデントのJack Berkowitz氏をお招きし、ADPによる新しいクラウドベースのデータ配信事業の構築に、Snowflakeがいかに役立ったかについて語っていただきました。

ADP社は、創業以来70年以上にわたって米国民の6人に1人に相当する数の給与処理を担い、年間約7000万件ものW2フォームを発行しています。同社は人事システムのほか、保険、年金勘定、および資金管理サービスも提供しています。このような業務では膨大な量のデータが生成されますが、そこからADP Research Instituteは雇用や賃金に関するトレンドを含むインサイトや経済指標を導き出しています。

「大まかに言うと、ADPのデータは米国経済の理解に役立ち、そこから世界経済への理解を深めていくことができます」とBerkowitz氏は言います。ADPのデータが他と異なる点は、給与処理や人事トランザクションから直接導出されている点です。このデータを外部の情報と組み合わせ、さらにニューラルネットワークを用いることで、カスタマーのデータに見られるパターンからより広範な経済で何が起きているかを推定できます。

ADP DataCloudは、人事部門向けに、アナリティクス、給与処理、人事ベンチマーキング製品を提供しています。Berkowitz氏のチームは、ADPの人事、給与処理、および時間管理アプリケーション全体で使用される機械学習アプリケーションの構築と運用化も担当しています。カスタマーやパートナーは、ADPのデータの購入またはライセンス取得を通じて、需要計画などの意思決定に役立てています。

クラウドで速度と柔軟性を獲得する

Snowflakeは、ADPが新たな種類のデータ配信事業をクラウド内で構築する上で主要な役割を果たしています。Berkowitz氏によると、「クラウドへの移行には、速度と柔軟性が重要」ということです。ADPは情報をできる限り迅速に取り出して、カスタマーがそのデータを簡単に、たとえばカスタマーが使用している特定のデータシステム内から利用できるようにする必要があります。

ADPはこの1年間、Snowflakeデータクラウドを扱ってきましたが、ADPにSnowflakeを通じてデータを配信してほしいというカスタマーの数は増え続けているとのことです。ADPはSnowflakeデータクラウドを使用して、匿名化された給与および福利厚生ベンチマークデータならびにその集計済み全国データの計算、格納、配信を行っています。これらの情報については、Snowflakeデータクラウドにより、Real Incomeなどの既存のSaaSアプリケーションを通じた提供も行われています。

「このように、Snowflakeは、当社にとっては人事/給与処理カスタマーに可視化機能を提供するマルチテナントSaaSの推進要素としての役割を果たしています」と、Berkowitz氏は語りました。

強力な配信機能とリッチなデータセット

Snowflakeデータマーケットプレイスは、データの販売を加速し、より多くのデータサイエンティストを引き付ける手段として、ADPにとって非常に魅力的な場所です。事実、Snowflakeデータマーケットプレイスにより、サイエンティストは分析の過程でADPのデータを円滑かつ合理的に活用しています。

Business Wireによると、ADPは、よりリッチなデータセットを生成するため、他に先駆けて、ICE(インターコンチネンタル取引所)1といった他のパートナーのデータと自社情報との統合にも取り組んでいるとのことです。ADPはICE Data Servicesと協働して、米国地方債市場に関する情報を組み合わせて付加価値を高め、Snowflakeデータマーケットプレイスを通じて提供しています。

「これは過去のADPにとって経験のない使用事例です。しかしSnowflakeを活用することにより、ICEのデータと自社のデータを組み合わせ、誰も思いも寄らなかった新しいデータ製品を生み出すことができました」と、Berkowitzer氏はさらなるデータの組み合わせによる多種多様な使用事例がもたらす将来の可能性に期待を込めて語っています。

今後について、Berkowitz氏は、データアルゴリズムをいつ適用し、どのように使用するかといった倫理について、データ界の皆が考えるべきだと主張しています。「こうした問題は、機械学習オペレーションやツールを選択する人が増えるほど、顕著になってくるでしょう。これらすべてに透明性が必要であり、皆さんは技術者としてどのように行動したいか、何をしたいかを決断する必要があります」

ADPはすでに、AIデータと倫理に関するガイドラインを発行しました。さらにADPの従業員と外部の専門家で構成された諮問委員会による定期会議を開き、プログラムがADPの価値観に整合しているかどうかを審査し、問題点について議論しています。

Rise of the Data Cloudは、受賞歴のある著述家でありジャーナリストであるSteve Hamm氏がホスト役を務めるポッドキャストです。エピソードごとにSteve氏は、クラウドをどのように利用してデータを管理、共有、分析しているか、どのようにビジネスの成長を加速し、イノベーションを促進し、業界に革新をもたらしているかについて、データ業界のリーダーを招いてインタビューしています。このポッドキャストの他の回を聴きたい場合はこちらからアクセスしてください。


  1.  bwnews.pr/2Zl2EsJ