注:本記事は(2021年11月23日)に公開された(Ensure the View IS Worth the Climb)を翻訳して公開したものです。

数年前、ある最高データ責任者が私に「1ドルの経費削減は、1ドルの収益を上げることと同じか?」と尋ねました。私ははっきりと答えました。「違います」と。データおよびアナリティクスのイニシアチブは、ビジネス目標に沿ったものでなくてはなりません。会社が成長モードにあるときは、人々の心やマーケットシェアの獲得に専心し、インサイトチームはコスト削減よりも収益拡大を優先します。低迷期であれば、生き残りモードが発動し、優先順位も異なったものになるでしょう。これこそが、データ戦略を構築する核となります。独立して成り立つ業務ではありません。データ戦略の構築は、会社のビジネス戦略や戦略目標をサポートする最適なイニシアチブを特定、優先順位付け、実行することです。

優先順位を付けるには、優先順位が必要

私たちはテクノロジーにとらわれがちですが、実際、最初に考えるべきはユースケースです。したいことは何か、ビジネスの緊急課題は何かといった点から始めましょう。The New Yorkerは以前に「優先順位を付けるなら、優先順位が必要だ」という風刺画を掲載しました。最初にやるべきことは、ビジネスステークホルダーから情報を集め、彼らのニーズを知ることです。データリーダーの役割とは、そのようなニーズを提供すべき人材、プロセス、テクノロジー、データ要件に落とし込むことです。

次の段階は、最初に実施すべきことの見極めです。優先順位付けの議論は、「人生のツボ」という時間を表す有名な言い回しを思い起こさせます。時間を大きめの石や小石、砂に置き換え、それぞれ戦略的イニシアチブ、緊急だが小規模のイニシアチブ、どちらかと言えばルーティーン的なタスクや忙しい業務を表しています。ここで大切なのは、大きめの石の重要性です。石は、大きくて硬く、ビジネスに大きな変革をもたらす部分です。数年前、別のCDOは、彼の「石(最重要事項)」とは「石(最重要事項)の特定」だと言っていました。

チームが社内全体から送信される大量のリクエストへの対応に追われていると、トランスフォーメーションや競争上のアドバンテージ、さらに差別化を推進する、より大きくてより戦略的なプロジェクトの特定に時間を割けない、というリスクを背負うことになります。実はこのような戦略的プロジェクトこそ、ビジネス戦略を真に支えるに他なりません。 

優先順位付けでは、「何をするのか」と同じくらい「何をしないか」が重要

優先順位付けには、何をすべきでないかを判断するも含まれています。一歩下がって、今現在自分がしていることが以前と変わらず価値を生み出してかを確認することが重要です。ビジネスインサイトチームの元には、ダッシュボードやレポートへのリクエストが溢れかえっています。しかし、時が経つにつれ関心は薄れ、「放置されたダッシュボード」は価値を生み出さなくなります。ギャンブラーが言うように、「ホールド(維持)するときとフォールド(おりる)するときを見極める」ことが大切です。

別の重要な教訓として、「できるからといってすべきとは限らない」があります。ポストカードやCDの郵送というマーケティング手段を考えてみてください(これらは過去のものになりつつありますが)。このようなキャンペーンは、いずれジャンクメールや無責任なマーケティングに対する不満となり、そのマイナス効果は、得られたかもしれないコンバージョン率を上回る結果となります。このようなリスクも考慮して、優先順位付けを行うべきです。

結論:達成後のビューを明確にすることは達成に値する

簡単な優先順位付けフレームワークにより、プロセスに一貫性と透明性を持たせることができます。潜在的なプロジェクトや分析的なユースケースは、ビジネス目標との一致度(事業部間における相乗効果や潜在的利益を含む)に対するプロジェクトの複雑性(データ可用性、リソース要件、潜在的リスクを含む)に基づいて評価することができます。

このマトリクスでは、潜在的なプロジェクトを4つのカテゴリーに分けており、先程の「ツボ」と関連付けることができます。長期投資は、より硬めの石を表しています。これらはより小さな欠片に砕かれ、即時の高価値を生み出す小石になる可能性があります。事業目標との一致度が低く、実行しやすいプロジェクトは「砂」にあたります。実際に時間や努力をかける意味があるかないかを評価するようにします。最終的に、ツボの外に置いたままにするものもあるでしょう。

正式な優先順位付けフレームワークを設定することで、イニシアチブを公平かつ透明性を持って評価することができます。また、プロジェクトやユースケースへの投資がビジネス戦略をサポートするものであることを確認します。このプロセスは、事業部門や特定業務チームに対し、ビジネスインテリジェンスや高度なアナリティクス要件におけるフルサービスのコンピテンシーセンターを提供する、CDOが運営するCoE(中核拠点)にて一元的に採用することができます。あるいは、部署が自身のアジェンダを管理するような場所における、より分散型の導入も可能です。重要な点は、プロジェクトを一貫性を持って評価する方法、また、そのプロセスを組織全体で共有する透明性にあります。組織のどこにプロセスを導入するかにかかわらず、別のCDOの言葉にある通り、「達成後のビューを明確にすることは達成に値する」ということです。