注:本記事は(2022年3月8日)に公開された(When Hunting for Competitive Advantage, Set Your Sights on New Data Sources)を翻訳して公開したものです。

いよいよ狩りの季節がやってきました!しかしこの狩りの標的は森のかわいい動物たちではなく、貴重なビジネスインサイトです。今日の企業は、自社のプロダクト、サービス、そしてカスタマーエクスペリエンスを差別化するためのフレッシュなインサイトをこれまでにも増して強力に追い求めています。ある経験豊富な企業CDOは次のような発言をしています。「社内のデータだけでは社内のことしか分からない。私たちは業界のベンチマークや地域のトレンドに目を向け、どの波に乗れるかを見極めなければならない。」

「社内のデータだけでは社内のことしか分からない。私たちは業界のベンチマークや地域のトレンドに目を向け、どの波に乗れるかを見極めなければならない。」

米国の某中規模銀行のCDOの言葉

多様なデータから優れたインサイトが生まれる

新しいデータソースが増えるほどデータモデルの正確性を高める多くの情報が得られ、その結果、新しいマーケティングキャンペーンや新製品のインパクトが高まりカスタマーエクスペリエンスが向上します。たとえばカスタマーデータのベース層は誕生日や性別といったコア属性で構成され、それらは(ほとんどの場合)変化しませんが、カスタマーをより良く理解するには、住所、婚姻状況、教育レベル、雇用状況、好みなどより多くのコンテキスト情報が必要となります。

こうしたデータポイントは時を経て変化する場合があるため、常にデータを最新の状態に保つことが効果的なエンゲージメントのための鍵となります。一番の理想は、最新の購買履歴、現在地、最近のライフイベントといったダイナミックに変化するデータからの知見を得ることです。このようなデータがあれば、企業はカスタマーが必要とするもの、期待するものを的確に予測できます。たとえば保険会社であれば、子どもが生まれたばかりの親に生命保険を、新たに家を購入した人に火災保険を勧めることができます。電話会社であれば、デジタルノマドに国際ローミングプランを、子どもがいる家族にはペアレンタルコントロール機能を勧めることができるでしょう。

同様に、ロケーションデータは何層にも分類されて分析に深みをもたらします。ベース層は地図の座標や川、山、海岸線といった不変の属性で構成されますが、資産の追跡や供給ルートのマッピングについて考えてみましょう。商品が存在するのは国境付近でしょうか、それとも海岸近くでしょうか?こうした情報は配送オプションに影響します。ここでもより多くのコンテキスト情報があれば意思決定はより正確になります。道路はあるでしょうか、その状態はどうでしょうか?河を渡るための一番近い橋までの距離はどれくらいでしょうか?そして最後に、ダイナミックに変化するデータ層がもたらす豊かな知見は、リアルタイムな意思決定だけでなく長期的なパターンを浮き彫りにすることもあります。たとえば、人の通行量や賑わいの度合いは、店舗予定地や野外広告の立地に影響します。

意思決定者はより豊かなインサイトを求めている

今日の厳しい競争環境において、意思決定者はあらゆるソースからあらゆるインサイトを得ようと懸命です。利ざやが薄い中でも、独自のインサイトは差別化や競争面でのアドバンテージにつながります。それには社内のデータだけでは不十分です。たとえば競争が激化している米国の住宅ローン業界の場合、借入希望者は常に有利なレートを求めています。顧客獲得のコストと同様に顧客離れの脅威もますます大きくなっており、顧客が何を求め、どんなきっかけに対してどう反応するかを含めた顧客セグメント像を明確に捉えることはビジネスの成功に不可欠です。

米国大手住宅ローン会社の元CDOと最近お話をする機会があったのですが、彼はローンの創出やサービスにとって外部データがいかに重要な検討材料となるかについて語っていました。彼は、カスタマーエクスペリエンスを向上させ、規制コンプライアンスを徹底し、リスクを管理するべく、36もの異なるデータソースの獲得を指揮したとのことです。融資事業において、クレジットスコア、雇用ステータス、給与証明といったデータの獲得は数百万ドル規模の予算に相当する価値があります。より多くのデータが得られれば、契約査定がより完全になり、損失のリスクを低減できます。一方サービス面からは、こうしたデータの取得はリスク減にはつながるが顧客離れ抑制の課題は依然として残るため、顧客の検索挙動からクレジットスコア要求履歴にいたるまで更に多くのデータを収集する必要があります。

動きの激しい市場において、企業は常に新しいデータを求めています。Explorium社による「2021年外部データ取得状況調査」によると、必要とされるデータは顧客データが群を抜いていて、62%の会社が人口統計データを、56%が企業データを取得していました。また、半数以上の会社が匿名の個人データや財務データを取得し、47%が地理空間データを、そして19%が気象データを取得していました。重要で独自性のあるデータセットの探索を専門とするデータハンターを雇用している企業もありました。最近のSnowflakeポッドキャストでは、1-800-Flowers社のCIOが、日々変化するCovid-19の感染率の影響を地域ごとに見極めることが、需要と供給を正確に予測する上で重要であると語っています。

需要の高まりとともに拡大する予算

IDCによるDaaS市場に関する調査によると、北米の企業の50%以上が、2020年中に外部データにかけた費用が予算を上回ったと報告しており、さらにその半数は予算をはるかに上回ったと回答しています。パンデミックによって、1-800-Flowersのような企業が健康関連のデータセットを求めるようになったことからデータ需要に拍車がかかりました。Explorium社の調査では、回答企業の78%が、外部データ取得のための予算を増やす計画であることが判明しました。予算を全く設けていない企業は、わずか1%でした。

どの企業も新しいデータの獲得に真剣に取り組んでおり、その手段をさらに充実させようとしています。調査でさらに分かったこととして、2020年中に81%もの企業が外部データの取得に毎月10万ドル以上、さらに31%の企業が50万ドル以上を費やしていました。これらの数字は投資の全体像の一部を表すにすぎず、時間面でも回答企業のほぼ半数が外部データの取得に月50時間以上を費やしていました。また費用面での投資はデータ獲得に関わる課題の中でもそれほど難しいものではありません。データ費用が深刻な課題と回答した企業は34%にすぎず、多くの企業にとってより大きな課題はデータの発見そのもののようです。46%は、どんな情報を探せばよいかも分からないと回答しています。その他の課題としては、規制による制約(44%)、データの準備/統合(43%)、スキルやツールの不足(39%)が挙げられています。

「どの企業も新しいデータの獲得に真剣に取り組んでおり、その手段をさらに充実させようとしています。」

こうした課題に直面しつつも、ほとんどの企業は2022年もより多くの外部データの獲得を目指しています。IDCは、2022年の外部データ獲得予算の平均額を100万ドルの大台に迫る95万4895ドルと予測しています。これは2020年の70万7807ドルに対する約35%増です。さらに、データ利用ユースケースの数も大幅に増える見込みで、特に人事、法務、コンプライアンス、貿易を含むいくつかの特定のプロセスで顕著な成長が予想されます。

依然としてデータ獲得戦略と実施に関する支援が必要とされている

企業は外部データの価値を十分に認識していますが、Explorium社の調査によると、データ獲得戦略を背骨棘的に実践しているのは回答企業の28%に留まっており、ほぼ同じ割合(26%)の企業はデータ獲得に関してその場限りの活動や一般的なガイドラインに頼っています。

ユースケースの増大と共に、新しいデータソースの発見、評価、統合のための労力と費用も急増しています。組織は成熟したデータ活動推進のため、より包括的な姿勢でリーダーシップやスキルに投資するべきです。規模の調整を容易にするプロセスの整備も必要です。さらに、外部データの発見とアクセスを円滑化し、適切なインサイトをビジネスステークホルダーに提供できるデータプラットフォームへの投資も求められます。