注:本記事は(2021年10月8日)に公開された(Fantasy Football: A Game of Data)を翻訳して公開したものです。

10月31日、NFLのジャクソンビル・ジャガーズは、ホームスタジアムから約3,000マイル離れた場所で遠征試合を行います。試合の結果を固唾をのんで見守るのは、ジャガーズやシーホークのファンだけではなく、第3のグループも含まれます。そのグループとは、ジャクソンビルの新人クォーターバックのTrevor Lawrenceや、シアトルで長年活躍しているRussell Wilsonを自分のfantasyチームに迎え入れたFantasy Footballファンです。Fantasy Footballでは、チームの枠を越え、NFL全体から選手を集めることができます。

実際の試合結果に関わらず、Fantasyのプレイヤーは個々の選手のパフォーマンスを追跡します。長い遠征距離はジャクソンビルの選手たちに影響するでしょうか。Wilsonはジャクソンビルの凡庸になりがちなディフェンスに対して大量得点をあげるでしょうか。

Fantasy Footballは、NFLのファンコミュニティに新たな次元をもたらしました。ファンタジースポーツ&ゲーム協会によると、フットボールの中心地である北米では、約6000万人のプレイヤーがファンタジースポーツを楽しんでいるとのことです。

Fantasy Footballは基本的にデータのゲームであるため、データサイエンティストを始めとするデータの専門家たちにとって、すばらしい遊び場となっています。そして、これらの専門家によるFantasy Footballへのアプローチは、ビジネスがデータを利用した競争にどう取り組むかについてのヒントとなっています。それは、アルゴリズムを比較し、さまざまな要素や変数の重み付けを評価しながら、同じ情報にアクセスしている多数の競争相手の中からどうやって抜きんでるかということです。

データがすべて

ThoughtSpot社のマーケティングオペレーション部門ディレクターであるBrendon Ritz氏によると、Fantasy Footballには数十年の歴史があり、インターネットによってファンタジースポーツが一般に普及する前は、熱狂的なファンによって紙を使って行われていたということです。「熱心なファンは、月曜の朝の新聞を見ながら、ボックススコアを頼りに選手のプレイ内容を確認し、書き留めていました」と、Ritz氏。

今では、そのようなすべてのデータや、さらに詳しい情報がオンラインで提供されています。SnowflakeのパートナーであるThoughtSpot社は、NFLのパフォーマンスデータをホストしている会社です。そのデータにはSnowflakeデータマーケットプレイスを通じてアクセスできるほか、ThoughtSpot社の検索ツールやビジュアライゼーションツールを使用して分析することもできます。

実際のNFLシーズンと同様、Fantasy Footballの各シーズンもドラフトから始まります。Fantasyリーグのルールはリーグごとにさまざまですが、ドラフトのあと、リーグのプレイヤーは順番にNFL選手を確保してチームを構築し、毎週、リーグ内のチームと成績を競うというのが、共通のフォーマットになります。各チームを構成する選手は次のとおりです。

  • クォーターバック1名
  • ランニングバック2名
  • ワイドレシーバー2名
  • タイトエンド1名
  • 上記のタイプから追加の「フレックス」選手を1名
  • キッカー1名
  • NFLチーム全体のディフェンス1名

Fantasyプレイヤーが集めたNFL選手の合計Fantasyスコア(獲得ヤード数、タッチダウンスコアなど)が高い方が勝利となります。

つまり、Fantasyの世界においては、チームが普通でも良いプレイヤーが1人いる方が、その逆よりも価値が高いことになります。さらに、現実のリーグでは1チームが独走している場合でも、FantasyのプレイヤーはNFLの試合に関心を持ち続けることになります。プレイごとにパフォーマンスデータが増えていくため、1つ1つのプレイが重要になります。

「フィールド上で起こるプレイのすべてが統計値となります」と、Ritz氏は語ります。

強さを求めて

Fantasyのプレイヤーは、ビジネスと同様、スマートデータ分析と継続的な状況認識とを組み合わせていると、ThoughtSpot社のテクニカルプロダクトマーケティング部門シニアディレクターのRuss Ratshin氏は語ります。ドラフトを経て手堅いチームを作ったあとも、Fantasyチームの監督は、どの選手を出場選手枠に入れるかについて、週ごとに意思決定を下す必要があります。

たとえば、ダラス・カウボーイズが、スーパーボールのディフェンディングチャンピオンであるタンパベイ・バッカニアーズとの開幕戦をアウェーで戦ったとき、NFLのCOVID-19プロトコルに起因して、ダラスのオフェンスラインのスター選手であるZack Martinが欠場となりました。ラインのMartinは、ほとんどのFantasyリーグでドラフト対象になっていませんが、彼の欠場が影響し、ランニングバックのEzekiel Elliottはその試合でわずか33ヤードしか獲得できませんでした。

怪我も、ドラフト選手たちに大きく影響します。2020年シーズンの2週目で、ニューヨーク・ジャイアンツのスター、Saquon Barkleyが膝を負傷しました。ドラフトでBarkleyを苦労して勝ち取ったFantasyプレイヤーにとっては非常に不運なできごとでした。Barkleyは2021年に復帰しましたが、また怪我をする可能性があるのではないかということを、Fantasyプレイヤーは次のドラフトで考慮する必要があります。

1週間のうちにどのチームがどれだけの距離を移動して試合に臨んでいるかというデータも、選手のパフォーマンスに影響する場合があります。まさにそれを追跡している指標があり、「road weariness(遠征疲れ)」と呼ばれています。もちろん、天候も影響する場合があります。ニューイングランドの野外スタジアムにおける日曜日の降雪確率が60%だとすると、ニューイングランド・ペイトリオッツ所属の選手や、その週にニューイングランドに遠征する他チームの選手のFantasyでのパフォーマンスにどのような影響が出るでしょうか。

パフォーマンスデータ自体にも外れ値があります。前回のクリスマスの日、ニューオーリンズ・セインツのランニングバック、Alvin Kamaraが1試合で6つのタッチダウンを決めました。この記録的な成績により、彼のFantasyポイントが非常に高くなり、2021年のドラフトにおける彼の価値に歪みが生じるほどでした。「もしドラフトで彼とDalvin Cookとの間で悩むとしたら、私はあの6つのタッチダウンは考慮しないでしょう。あれは非常に例外的な試合でした。一方、Cookはより安定していて、各週の勝利に貢献してくれそうです」と、Ritz氏は語ります。

Ratshin氏によると、シーズンが進み、調子の波もある中で、強いFantasyプレイヤーはこれらすべての要素やその他の要素を常に把握し、対戦相手と照らして数々の変数を操りながら、スタメンを選んだり、必要に応じてドラフトで選手を入れ替えたりするセンスを磨いているとのことです。さらにプレイヤーは、自分の判断ミスなのか、予見不能な不運に見舞われただけなのかを客観的に評価する必要もあります。

場合によっては、Fantasyプレイヤーはデータを研究して、この先どうなるかを判断することもあります。

ThoughtSpotのBrendon Ritz氏は、独自のスプレッドシートを使用して、リーグ内の他のチームの強さを評価しています。

上に掲載した画像は、Ritz氏が作成したスプレッドシートのスクリーンショットの一部で、各ドラフトで選択した選手と、Fantasyにおけるその選手の相対的な価値であるエキスパート・コンセンサス・ランキングを比較することで、現在のリーグにおける各チームの強さを評価しています。Ritz氏は、自分のリーグでドラフトが始まるときは、事前にドラフト用模擬ツールを使用して準備しているそうです。他のプレイヤーとドラフトを行う前にAIを相手に何回かドラフトの練習をしておくことで、Ritz氏曰く、「5分でドラフト全体の予行練習をして、大量のデータを得ることができる」とのことです。

「これを十数回も行っておけば、判断ミスも少なくなります。」