注:本記事は(2021年7月6日)に公開された(“Embrace the Curveballs” – Snowflake CMO Denise Persson on Five Common Challenges for Startup Marketing Teams)を翻訳して公開したものです。

この1年間は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを生き残り、繁栄するための戦いに明け暮れ、多くの企業にとって最大級の試練の年でした。企業がこの試練をはねのけ利益を取り戻す能力は、マーケティングに大きく依存しています。Deloitte社の最近の調査によると、マーケティング担当者の72%は、この1年間でマーケティングの役割の重要性が高まったと語っています。

安定した顧客基盤や評判がない状態で市場シェア獲得を目指すスタートアップ企業にとって、状況は一層複雑です。私は以前、成長志向のスタートアップ企業に最適なマーケティングの5柱をまとめました。具体的には強力なポジショニング、顧客第一主義、本質的にスケールしやすい体制づくり、大胆毅然、そして売上との同調です。今回はマーケティング担当者が、成功するチームづくりや戦略構築で最もよく直面する課題を例示し、その克服法をご紹介します。これから挙げる課題は、Snowflakeも含め、私が25年以上マーケティングと上場を担当してきたスタートアップ企業のすべてで見られたことです。

#1. 群雄割拠の市場でスタートアップ企業を差別化する

これはおそらく、スタートアップ企業のマーケティングチームが最もよく直面する課題です。Snowflakeに入社して最初に担当した業務は、会社のポジショニングの定義でした。つまり専門とするべきカテゴリを見極め、その位置づけを適切な言葉で表現することでした。さまざまな意見があり、たいていの組織では最も声が大きい意見が通るものですが、当社ではそのような大きな声よりデータドリブンなアプローチを取りました。今現在の顧客層だけでなく、次に売り込みたい顧客層のフォーカスグループも運営しました。担当グループにはポジショニングをややシンプルにまとめて伝え数年間。選ばれたのは「設計からクラウドに最適化したデータウェアハウス」でした。

見込み顧客からフィードバックを得るプロセスが確立し、そのプロセスからデータドリブンな方法でインサイトを得られる企業では、そのインサイトを正当な根拠として社内の賛同を得ることができます。ブレないポジショニングを何年も貫き、競争を勝ち抜いて見込み顧客の心をつかむには、こうした体制が必須です。完璧なポジショニングより、終始一貫していることのほうが重要と言っても過言ではないでしょう。とはいえ会社にとっても最も良いポジショニングが常に同じかと言えばそうではなく、むしろ会社や商品展開とともに変わっていくべきものです。Snowflakeの今のポジショニングは、データクラウドのプロバイダーです。

#2. 価値観のフレームワークを設定し、日々あらゆる場面で徹底する

全従業員が日々どのような価値観を業務の指針とすべきでしょうか?Snowflakeでは次の8つをコアバリューとして位置づけています。

  1. お客様第一主義
  2. 整合性を貫く
  3. 大きな視野に立って考える
  4. 衆に紛れず卓抜する
  5. 互いの最善を引き出す
  6. 使命を果たす
  7. 自発的に責任を負い、果たす
  8. 互いの違いを尊ぶ

これらの価値観はどれも、会社として成功するために重要な役割を担っています。マーケティングでは第1の価値観、「お客様第一主義」に特に注力しています。私の入社当時、マーケティングチームはわずか8人でした。私は四六時中、お客様対応をしていました。会社のイベントの受付デスクを担当し、名札を印刷していました。今は状況が変わりましたが、既存のお客様との通話に加えてもらい、新規見込み顧客の疑問に答える毎週のオフィスアワーズのようなプログラムを利用など、お客様からのフィードバック収集に重点を置く私の姿勢は変わりません。

また当社ではNPSスコアなどのメトリックスを通じ、常にお客様のエンゲージメントを追跡しています。カスタマージャーニーを構成するあらゆる部分を個別に精査し、追跡します。何か不都合が起きれば、「皆が一丸となって」状況を把握し、対処します。決して現状に甘んじないという社内文化があります。お客様の次のステップでの最重要事項について常に考えています。さらに当社は、短期的に見ると当社の収益アップにはつながらないとしても、お客様にとっては最善の意思決定であるといった場面を多数経験してきました。常にお客様第一主義の有言実行を続けてきました。このことが当社の今の成功を導いた主要理由の1つであると考えます。

#3. 注力対象を決める

スタートアップ企業のマーケティングの世界では、果たすべきタスクが多く、注意が逸れることもあります。ただし1日が終わるころには、それらがとるに足らないことだということが分かります。したがって、自分にとって最も大事なタスクやプログラムを認識し優先して、注力することが大切です。この世界では、ソニックブームが多大なエネルギーを生み出します。そしてマーケティング組織では、私たちのソニックブームの計画を常に検討しています。どのようなプログラム、キャンペーン、イベントが最大のインパクトを生み、世界的な反響につながるのでしょうか?それを見極めたらチームの一人ひとりから積極的な取り組みを引き出し、一貫性、調和、品質を保って遂行する必要があります。

Snowflakeで最大級のインパクトを持つプログラムに、カスタマーアドボカシーがあります。カスタマーアドボカシーではお客様へのこまめな語りかけを通じ、当社のマーケティングプログラムへの関心、活発な参加を促す方法を探っていきます。お客様は最も優れたマーケティングツールであり、口コミはSnowflakeブランドの認知度を築く上で非常に有益です。積極的に口コミを広めてくれる素晴らしいお客様に恵まれたスタートアップ企業は少なくありません。積極的に話題にしようと意識し、熱心に支持を表明してくれるお客様ができたら、本当に素晴らしいことです。逆にお客様から反応を引き出せなければ、機会は失われてしまいます。当社では最初からカスタマーアドボカシーにのみ焦点を当て、その方針を支えるプログラムをいろいろと用意しました。

#4. 予算配分を決める

スタートアップ企業では新規顧客の獲得に予算の多くを注ぎます。Snowflakeではマーケティング予算の大半を新規ビジネスの構築、新規のお客様のサイト訪問、パイプラインの構築に使っています。同時期のSnowflakeでは2021年4月30日現在の純収益維持率が約168%でした。サイト訪問誘導では、十分なリソースを割いて顧客の声に耳を傾け、顧客ニーズの満足を確約する必要があります。具体的な方法として当社は専門サービスやカスタマーアドボカシーなどのプログラムを活用しました。顧客の主な懸念と疑問点は何でしょうか?当社では既存のお客様がデータクラウドを最適化した方法で使用できるよう、新しいワークロードと使用事例のマーケティングも徹底して行っています。Snowflakeではこのような最適化大部分をパートナー様に依存しています。

#5. 変化球に備える

最後になりましたが、これは最重要課題かもしれません。特に今日では予算配分の重要性が高まっています。これまでに当社が見てきた範囲では、成功したスタートアップ企業も例外なく、成長するにつれて予測もしていなかった多数の課題と障害に立ち向かう必要が出てきます。そこでお勧めする対策は、変化球の活用です。25年間、スタートアップ企業でも既存企業でも働いてきた経験を踏まえると、困難な時期には学びも大きく、それがキャリアを通じて最も価値あるものとなりました。だからこそ今は困難な時期を活用しようとしています。皆さんの取り組みの中でも、変化球が飛んで来ることがあるでしょう。すると従来の成長軌道からは外れます。そこで重要なのは、想定外の事態にどう対処し、立ち上がって軌道に戻るかという点です。

この1年間で学んだことがあるとすれば、困難な状況では、したたかな者が活躍し、創造性を発揮するということです。ほかに選択肢はありません。スタートアップ企業が成功するには、何が何でも勝たなければなりません。そういう気概が必要です。

Denise PerssonはSnowflakeの最高マーケティング責任者です。