CDO Agenda 2023のアンケートを受けたデータリーダーの62%は、「目的を達成する上で、何が最大の課題でしたか?」という質問に対して、「組織全体の行動と姿勢を変える難しさ」と回答しました。「データドリブンな文化やデータドリブンな意思決定の欠如」と答えた回答者は半数を超えており、未だ変化が困難であることが伺えます。

私の新年の抱負は、この1年間、ベッド脇の積読本を読破したうえ、さらに多くの本も読むことでした(待望の気晴らしとしての「ビーチでの読書」だけでなく)。ちょうどDamon Centolaの『Change: How to Make Big Things Happen』 を読み終えたところです。同書で最も重要な主張は、大きな変化には、関連性が高く、冗長な社会的接点を含むネットワークが不可欠ということです。 

変化の伝播は、アイデアの拡散とは仕組みが異なります。大きな変化はウイルスや花火、銃火とも、伝播の仕組みが異なります。変化は雪だるまのように、度重なる接触と強い結び付きによって、規模が大きくなっていくものです。何かを伝えるだけでは、変化は広まりません。決め手はむしろ、変化を伝えようとする相手に、その人にとって大事な人々が同じことをしている様子を見せ、何よりその行動から価値を得ている様子を示すことです。新しい農法の採用、エネルギー消費の削減、意思決定に役立つデータの活用など、広めようとする変化が何であれ、社会的影響力こそが重要なのです。 

より多くの企業がデータドリブン型を目指し、よりデータ活用を重視するやり方に切り替わっていく中で、各組織が前述のような変化を推進するには、どうすればよいのでしょうか。リーダーが声高に叫び、何人かのインフルエンサーが変化を促すだけでは、十分ではありません。変化を持続させるには、まず変化の足掛かりとなる一部を対象に実際に価値を示して支持を広げ、その話題を組織全体へ広めていく必要があります。

コミュニケーションプランの策定

では、皆様のコミュニケーションプランに必要なものは、何でしょうか。組織全体のネットワーク効果を活用し、情報を広めるだけでなく変化を促すには、どうすればいいのでしょうか。何より、体系的な計画を立てる必要があります。一歩引いて、誰にリーチするべきか、どのようなメッセージを伝えるべきか、どう伝えるべきかを逐一確認しておく必要があります。次のような質問から取り掛かってください。

  • 最適なコンテンツ形式
  • リーチする際の使用チャネル
  • 最適なコンテンツ配信のタイミング

Forresterで私が執り行った調査では、対象とするオーディエンスを検討するフレームワークを開発しました。そのとき最初に取り組んだのは、達成しようとする目標の検討でした。ACESのカリキュラムは、Awareness(認知)、Comprehension(程度の差はあれ現在より深い理解)、Expertise(専門知識)を強化し、データ専門家から一般までのフィードバックのループを築き、組織全体にScale(拡大)するように設計されています。 

基本思想は、データ専門家ばかりに目を向けず、コミュニケーションの輪を「ショップフロアからトップフロアまで」、つまり組織全体に広げようというものでした。結局のところ、誰もがデータを取得、保護、または活用する役割を担っています。しかしレジ係、フィールドサービス技術者、あるいは休憩室で電子レンジを使う人など、データを取り込んでいる人々のことは、見過ごされがちだからです。

次のステップは、必要なコンテンツとコンテンツを普及させるべき方法を決めることです。正式なトレーニングからカジュアルな交流まで、多くの選択肢と効果的な方法例があります。ここではその一例を紹介しましょう。

  • シカゴのAnne and Robert H. Lurie小児病院では、データチームが「アナリティクスとデータの世界全体で役立つガイド」としてThe Why Axisを立ち上げました。 
  • 「ランチ講演会」は、組織全体から参加者が集まって、非公式にコラボレーションや学習に取り組むことから、個人、チーム、ビジネスの発展を促します。 
  • CDO Agenda 2023では、Regions BankのCDAOが、最近のリーダーシップ会議とは別にブースを設置し、データ製品を展示・説明するよう同組織が招待を受けたと話しました。この展示で、同グループの取り組みは関心を集め、需要が生まれました。 

言葉の重要性も忘れないでください。Kmart Australiaでは、データリーダーシップチームがデータトランスレーターという職務を新たに設け、各オペレーション領域に1人ずつ配置しました。その趣旨は、データの専門知識と業務知識を組み合わせて、機会を特定することにありました。結果として新しいアイデアが3か月で400%増え、しかもデータのユースケース当たりの利益が3倍に増えました。各部門に配属された上述のトランスレーターたちは、それぞれ職務に勤しみ、各チームと共に、特定した成果の実現に取り組むことができました。コミュニケーションは、言葉だけによるものではありません。

話すより見せることを重視

ここで、変化を効果的に促す方法、つまりACESの「S」に話を戻します。充実したCDOは、幅広いコミュニティを構築し、インサイトを主軸にして文化を醸成し、データとアナリティクスの活動を拡大します。 

シアトル小児病院の元CDOは、こうした拡張チームメンバーを「FDA」(「データとアナリティクスの仲間たち」)と言い表しました。FDAの間には、必ず友好的な交流が存在します。エジプトのある銀行のCDOによると、同行のデータラボへの関心は非常に高く、同ラボは人材育成プログラムを作成した結果、現在数百人の「データエージェント」メンバーを擁するコミュニティに育っています。

こうしたコミュニティには、たとえばデータの影響力を伝える働きがあります。Lurie小児病院では、さまざまなアウトリーチプログラムを展開しました。たとえば円周率の日(米国での3.14という表記に因み3月14日)に、サイエンスフェアのような展示会を開催して成果を発信し、参加者には特典としてパイを配りました。ポジティブな影響をわかりやすく示すと、変化のメリットをより強く印象づけることができます。 

プロフェッショナルの育成に沿ったアドボカシーの奨励

最後に、データ文化を推進し、他の人を教育することは、専門的な能力開発の機会でもあります。人材管理に関する最近のある調査によると、74%の従業員が、専門的な能力開発がないために目標に到達できないと答えています。またLinkedInの調査によると、94%の従業員が、企業がスタッフの能力開発にもっと投資していれば、勤続期間が延びるだろうと回答しています。ここで言及しているのは、正式なプログラムばかりではありません。プロフェッショナルの育成は、データやアナリティクスのコンセプトを説明し、プロジェクトを紹介し、組織の提供した価値を強調する機会で大きく前進します。

結論:効果的なコミュニケーションは、より強固なデータ文化、より強力な組織を築きます。詳細に関するご質問からストーリー共有のお申し出まで、ご遠慮なくお問い合わせください。