注:本記事は(2021年9月30日)に公開された(Banking on Data, the New Currency of Financial Services)を翻訳して公開したものです。

データは確かに、金融サービス業界にとって新しい通貨といった存在です。Snowflakeは、先週EMEA地域で開催されたSnowflakeの金融サービスデータサミット において、カスタマーによるその通貨の利用とシェアリングをSnowflakeがどのように支援し、オペレーションを向上させ、リスクを減らし、そして何よりも、より良いカスタマーエクスペリエンスを実現させているかについて説明しました。

金融サービスに関する業界トレンド

金融サービス業界における最大のビジネス推進要素の1つは、顧客による期待です。オンラインやネオバンクの台頭により、カスタマーは指1本で優れたサービスが得られることを期待するようになりました。若いカスタマーはシームレスなデジタルエクスペリエンスを望み、実店舗に足を踏み入れる人はほとんどいません。他のオンラインサービスでの経験が、理想をさらに高くしています。今や、企業が消費者のニーズを予測するパーソナライゼーションが必須です。新婚夫婦のもとに初回住宅購入者向けローンを勧めるオファーが届き、家を購入した後に住宅保険、休暇が近づいてきたタイミングで旅行保険、レンタカーを借りる場面でオンデマンド型保険のオファーが来たとします。この種のオファーが最も成功する確率が高い理由は、適切な内容のオファーが適切なタイミングでターゲットとするカスタマーに届いているからです。

しかしパーソナライゼーションの場合、単にオファーの内容だけではなく、いつ、どこにオファーが届くかも重要になります。これらのオファーが他のアプリに組み込まれ、ユーザーのコンテキストに直接配信されるといったケースもあります。Forrester社の調査によると、埋込型金融は、カスタマーのニーズが生じたタイミングで、それが生じた場所で満たされる究極の方式であり、来る10年で業界を一変させるだろうということです。このように、カスタマーへのフォーカスは今や最重要事項であり、オープンバンキング、さらにはオープンファイナンスのように、業界全体に定着すると考えられます。これらの新しいエコシステムは、アジアで爆発的に広がり、Open Banking Europeを通じてヨーロッパでも提供されています。米国でも今後、広がっていくことでしょう。

しかし組織はどうやってカスタマーに関するこれらのことを知ることができるでしょうか。カスタマーの期待の高まりは、チームやパートナーの垣根を越えたデータアクセスとコラボレーションを必要とします。カスタマー360の取り組みは、サードパーティソースによって内部データをエンリッチ化することで、カスタマーの全体像を示してくれます。これはつまり、より広いパートナーエコシステムを擁するデータマーケットプレイスやデータコラボレーションを通じて外部データにアクセスすることを意味します。これは簡単なことではなく、金融サービス会社は自らのデータゲームをレベルアップする必要があります。

私たちを次のトレンドへ誘うもの:データ最適化。ほとんどの企業は、データが持つ多大な可能性を認識しています。しかし、トーマス・エジソンの言葉「アイデアの価値は、それを使うことにある」は、データにも当てはまります。データを効果的に利用するには、汎ビジネス的なインサイトの提供や価値創出の促進に焦点を当てた全社的なデータ戦略を持って、自社のデータハウスを準備万端に整える必要があります。これには、組織中のサイロを解消することによるソーシングやオンボーディングの合理化やデータへのアクセスの円滑化を始めとする、データバリューチェーン全体への投資が必要です。

同僚のRinesh Patelが対談セッションで述べていたとおり、データサイエンスはデータがどこにあるかではなく、さまざまなデータ間に存在するリレーションシップの方を重視します。もしデータを有意な方法で集約できなければ、これらのリレーションシップを動員することはできません。Rineshは、カスタマーとの対話の中で、データに1ドル支出する場合、そのうち80セントはデータ管理に費やされると見積もっています。固有のデータ資産という宝の山がわずかなユーザーや部門のみに留まっていても、Snowflake金融サービスのカスタマーは、データ管理やデータ活用の改善の必要性を認識しています。

結果として、Snowflakeのカスタマーは、独自の視点から最新のデータインフラストラクチャーを実現するためのテクノロジートランスフォーメーションに乗り出しました。新しいデータインフラストラクチャーとは、壊滅的な結果を防止するためのガイドラインの範囲内でデータを探索して、データから学ぶことを可能にし、可能なことを実行する技術を模索する安全な環境を提供するものを意味します。企業は実験と革新が可能である必要があります。社内からでも、社外でパートナーやカスタマーと一緒にいるときでも、すばやく簡単にデータにアクセスできる必要があります。さらに、データをシェアしてより正確なモデルを構築し、より価値の高いインサイトを生成する必要もあります。幸いなことに、Snowflakeはそのような陰と陽を、最新のデータインフラストラクチャーにもたらします。

金融サービスのためのデータの使用事例と取り組み

対談セッションにおいて、Rinesh Patelと私は、トレンドについてだけでなく、下記の4つの取り組みに焦点を当てながら、業界のリーダーが何をしているか、どのようにデータを活用しているかについても話しています。

  • パーソナライゼーション:カスタマーの期待事項やニーズに直接対応し、カスタマーエクスペリエンスを向上させます。銀行や保険会社は、チャネル、プロダクト、その他の以前サイロ化されていたデータ全体で、顧客データに関する完全なる360度のビューを開発しています。カスタマーへの可視性が高まるにつれ、彼らはニーズをより正確に予測し、非常にパーソナライズされ、タイムリーで、適切なサービスを提供できます。さらに、カスタマーが使用しているアプリに組み込むなど、カスタマーが望む形で関わることができます。カスタマーにとってこれは、郵便受けに郵送物が増えないこと、自分が送った覚書を銀行や保険会社が受け取ったかを心配しなくていいことを意味します。
  • 規制とコンプライアンス:これも銀行にとっての重要事項です。2008年の金融危機以来、規制当局は堅牢な枠組みを導入し、市場のリスクと動向を監視してきました。規制当局は企業に対し、主要な財務指標を頻繁かつ適時に報告するよう求めており、各報告書には非常に詳細な形式で社内データと市場データの両方を盛り込む必要があります。規制当局の数が増えればそれだけ、報告の負担も増していきます。市場濫用規制(MAR)、金融商品市場指令(MiFID)、証券金融取引規制(SFTR)、そして2023年に導入期限を迎えるトレーディング勘定の抜本的改定(FRTB)に直面している企業は、規制報告書を全体論的に捉え、プロセスを標準化およびデジタル化して、ガバナンス、効率性、説明責任を向上させる道を模索しています。銀行から規制当局にデータを物理的に移動させることも引き続きストレスの元となっています。銀行と規制当局間のデータシェアリングは、プロセスを改善することになるでしょう。
  • 業界のバイサイドにおいては、定量調査も、ホットエリアとなっています。バイサイド企業はますます複雑化し、定量調査ワークフローを社内で行っていることで、エンタープライズデータ管理ソリューションのさらなる導入が求められています。データ分析に対する体系的かつルールベースで自動化されたアプローチは、今では例外ではなく標準となっています。このようなアプローチには、詳細な会社のバランスシート、業績予測、その他の代替データセットから成る大量かつ分散したデータセットの取り込みと結合が必要です。分析はヒストリカルデータに対して実行され、時には数十年遡ることもあります。これらのプロセスは、ポートフォリオのリバランスやポートフォリオリスクの判定など、さまざまな使用事例に対して日次的に実行されるほか、新しい理論や案に関するリサーチや新しい金融製品の開発があれば、その都度実行されます。これらすべてに、尋常でない量のデータとコンピュート容量が求められます。
  • 最後に、ESG(環境、社会、コーポレートガバナンス)の問題があります。気候変動、多様性、人権、ならびに企業倫理とコーポレートガバナンスは、世間的にも政治的にも話題の最前線にあります。ESGの問題は、投資リスクの特定と適切な評価にとって切り離せないものです。企業の業績を評価するとき、ESGスコアは従来の財務指標と同じくらい重要になってきています。さまざまな使用事例をサポートするため、たとえば、分析のために会社ごとの最終版ESGスコアを作成して取引領域からのイン/アウト証券を選択するフィルターとして使用する、または新しい一連の規制義務に関する1つの要素としてESGを使用しながらマルチファクターポートフォリオを作成するなど、ESGデータセットを盛り込むことを求める声は急速に増えています。SFDRは、投資家が自らの持続可能性目標に沿って投資判断をする上で必要な情報の開示を徹底することを目指しています。ESGの統合はまだ比較的新しい概念であり、データ報告における標準化が不足しています。Snowflakeは、より多くのデータをオンボードし、より円滑にESGデータとスコアを統合できるよう注力しています。

パーソナライゼーション、規制、定量調査、そして新しいワークフローとくれば、金融サービス業界においてクラウド変革への機が熟しているということは容易に理解できます。Snowflakeデータクラウドを利用すれば、新旧の方法で大量のデータを集計して嚙み砕き、コンピュート力を短期間重点的に適用することで、容易にアナリティクスやレポートを作成していただけるようになります。