注:本記事は(2021年8月5日)に公開された(An Analytics Center of Excellence Requires the Whole Enterprise)を翻訳して公開したものです。

CoE(センターオブエクセレンス)には会社全体の力が必要です。若干矛盾して聞こえるかもしれませんが、これは真実です。インサイトドリブンまたはデータドリブンになることは今や必須であり、CDOや同等の立場にいる人たちは多大なタスクを背負っています。ではCDOはどうやってそれを成し遂げるのでしょうか?自分ひとりの力だけでは達成できない、というのが答えです。「村人全員の協力が必要」とは言いませんが(おっと、すでに言っていましたね)、これには会社全体の力が必要です。会社のあらゆるところからデータやインサイトを求める声が上がる中、データやアナリティクスを担当するリーダーたちは、ニーズを捉え、スキルを評価し、インサイトのCoEを構築し、インサイトでインパクトを実現するという目標をサポートする必要があります。「センター」と呼ばれはしますが、それはすべてのグループや全体のビジネス目標を象徴しています。

なぜCoEなのか?

センターオブエクセレンス(CoE)とは、象牙の塔を建てることではありません。より広い知識基盤を構築し、データとアナリティクスを理解することです。要件を把握し、取り組みを調整して、リソースを活性化することです。CoEを構築することで、リーダーは組織内でデータとアナリティクスの戦略的性質を強調できます。

データとアナリティクスのCoEは、以下を可能にします。

  • データガバナンス、データオペレーション、プログラム管理のためのポリシーとベストプラクティスの定義と周知により、プロセスを合理化し価値創出を促進する。
  • 技術チームとビジネスチームに共通する言語を生み出し、ビジネス価値の提供に関するインセンティブを整合させることで、より深いデータ&アナリティクス文化を育てる
  • より広範なデータリテラシーを構築し、データドリブンな意思決定を強化し、データスキルや分析スキルを向上させ、組織全体にリソースを割り当てるためのトレーニングを主催する。
  • 共同体意識を確立し、組織横断的な関与を促進する。
  • データとアナリティクスを通じてビジネス価値を実現する

Forrester社のリサーチによると、CDOを擁する組織のうち、インサイトのCoEを導入した組織や拡大中であると回答した組織は45%に上りました。対して、CDOのいない組織の場合は32%に留まりました。1 当然のことながら、この流れを先導しているのは最もアナリティクスに成熟した企業ですが、業界、地域、さらには会社の規模はバラバラです。たとえば、Wall Street Journalによると、Morgan Stanley社のCoEには、データアーキテクチャ、インフラストラクチャー、およびガバナンスを専門とする約30名のエキスパートが在籍しているそうです。2 彼らは、同社内のさまざまなビジネス部門やテクノロジー部門のデータアドバイザーとして、インサイトドリブンへの変革を加速しています。

CoEをどのように構築すべきか

CoEは、単一のサイズですべてに対応できるわけではなく、会社のニーズと現在の成熟度を反映する傾向にあります。CoEは必ずしも固定の組織や構造ではなく、組織づくりの枠組みのようなものと考えことができます。CoEはハブとなる中核チームを持ち、メンバーはCDO直属または直属ではない部下から選ばれ、協調性を確保しています。組織の各事業部門または部課には、ハブへとつながるスポークの役割を果たす人々がいます。責任はハブとスポーク全体で分担し、組織に応じて責任の所在がはっきり断定できないグレーエリアもあります。

  • ハブ:CoEのハブでは、データインサイトリーダーが戦略を推進し、全社的なデータガバナンスを確立して、人材の採用、トレーニング、テクノロジーの調達、ベンダー管理、データ&アナリティクスといったコンサルタント的なサービスを提供します。これらの活動の責任と関与の度合いは、残りの組織の成熟度に応じて異なります。最も一般的な役割は、ガバナンスポリシーの調整、スキル評価と育成、その他の全社的プロセスが挙げられます。

  • スポーク:CoEのスポークは、業務分野、ファンクショナルチーム、または地域ユニット内に存在します。アナリティクスの成熟度が高くなると、スポークは実際のデータやアナリティクスの取り組みに緊密に関わるようになります。スポークは、使用事例、アウトプット要件(レポート、ダッシュボード、機械学習モデルなど)を定義し、データの実行、モデルの開発、パフォーマンスの追跡、および成果の測定を監督します。
  • グレーエリア:グレーエリアは、スポークレベルの能力に応じて責任の共有が生じる部分を反映しています。ファンクショナルチームや事業部門に必要なスキルが不足している場合、ハブは取り組みの構築と実行を助けるリソースを割り当てる場合があります。

着手の方法

データおよびアナリティクスのセンターオブエクセレンスを確立するとなると、初めのうちは困難に見えるかもしれません。最初から実現不可能なことに手を付けないほうがよいでしょう。この取り組みを主導するCDOとリーダーは、トップダウンとボトムダウン両方のサポートを募り、迅速に価値を立証する必要があります。そのためには、次のことを実行する必要があります。

  • 幅広い部署の代表者から成る運営委員会を立ち上げ、共通のビジョンを確立する:理想を言えば、CoEは会社組織の上層部に直属し、ビジネスリーダーと技術リーダーの両方からの後援が得られるとよいでしょう。ここでの鍵は、(1) エグゼクティブによる後援、および(2) 会社全体での取り組みやリソースの割り当てを調整するための合意された権限です。このことは、全社的なデータガバナンスと優先順位付けのために設立された運営委員会も同じです。
  • プロセスをテストし、価値を立証するための最初のプロジェクトを選ぶ:優先順位付けプロセスでは、ライトハウス(灯台)のように指針となる取り組みを特定します。さまざまな部署で既存のプロジェクトがあるかもしれませんが、CoEのライトハウスプロジェクトは、以前であればデータのサイロや定義の違いといった問題によって阻まれていた部門横断的な目標を、いかに一元的なリソースによって前進させることができるかを示すものである必要があります。たとえばデータドメインをまたいだデータを活用するプロジェクトなどは、理想的な候補と言えるでしょう。しかし、いきなり大きすぎる仕事を選ばない方が賢明です。最初は低いところにぶら下がっている果実から選び、着実に価値が増大する様子を証明してください。
  • コンピテンシーを評価して責任を振り分ける:中央のハブと分散した事業部門やファンクショナルチームのどちらにどのコンピテンシーを任せるべきかを知るには、データおよびアナリティクスリーダーは会社全体で誰が、何をできるのかを充分に理解する必要があります。社内ビジネスアナリストやデータサイエンティストが所属するスポークは、他よりも進んでいるかもしれません。財務チームは予測やリスク検知のスキルに秀でていますし、カスタマーインサイト部門は需要動向やパーソナライズオファーについて専門知識があります。一方で、法務や人事といった他のグループは、そのようなスキルがないかもしれません。インサイトへの幅広いアクセスを確実なものにするため、ハブは何名かのデータサイエンティストを人事部門のリテンションモデルの構築や、新しい労働者災害補償法の影響の理解や、法務費用の最適化を支援する仕事に派遣してもよいでしょう。
  • サービスの内容や実現できる価値を明確に伝える:ほとんどのCoEは、少なくともデータガバナンス方針と組織全体のリソースの割り当ての調整を行いますが、彼らは必ずしも組織共通のサービスユニットではありません。しかしながら、一部のCoEはビジネス部門とファンクショナルチームの両方、時にはパートナーやカスタマーにまで、データとアナリティクスに関する専門知識を提供するサービスビューローとしての役割を果たします。時が経てば、これらのCoEは繰り返し求められるサービスのポートフォリオを確立し、最も重要なこととして、その成功を促進することができるはずです。 

CoEの継続的な成功を確実なものにするには

データとアナリティクスのCoEは、開始日と終了日が決まっているプロジェクト管理オフィスではありません。これは、データとアナリティクスを通じてビジネス目標達成を促すことを意図した、永続的な組織的枠組みです。継続的な成功には、トップダウンとボトムダウン両方のサポートが必要です。優れたCoEは、ビジネスにもたらす価値を立証し、組織の戦略的目標に対する自らの貢献をプロモーションします。トーマス・エジソンはかつて言いました。「アイデアの価値はそれを利用することにある」と。データにも同じことが言えます。CoEの究極の目標は、組織全体がデータにアクセスでき、利用できるようにすることで、価値実現を促すことです。価値の実現こそが、最終的な成功の判断基準です。


1 bit.ly/2TREfIp

2 on.wsj.com/3f23kb4