注:本記事は(2021年8月17日)に公開された(A Data-Driven Approach to Telco Success for 5G and Beyond)を翻訳して公開したものです。

電気通信のインフラ上で実行されている配車サービスやコンテンツストリーミングサービスの4Gでの成功は、これらのサービスを支えるネットワークを提供する電気通信企業の成功を大きく上回っています。しかし5G以降ではそのような展開にはならないでしょう。データドリブンなアプローチを採用することで、電気通信企業はデータを取り込み、既存および将来の投資の収益化を成功させることができます。

現在、電気通信企業は依然として、業界で生み出される収益の大きな部分を占めています。電気通信企業の収益は急増はしないものの、業界のバリューチェーンの重要な部分を支配し、直接的なB2BおよびB2Cのカスタマーリレーションシップを維持しており、企業各社は電気通信企業のネットワークインフラストラクチャーにより、大量の定量、地理空間、および行動データセットにアクセスできているという状況です。コンサルティング企業のKearney社によると、これらの要素は最近のトレンド1に抗う大きな機会を電気通信会社にもたらすということで、図1に示すとおり、電気通信会社は競争上のメリットを活用することにより収益を伸ばし、業界バリューチェーンで彼らの座を狙う脅威に対応できるようになるとのことです。

データがもたらす機会

5Gを触媒として利用することで、電気通信会社は下記のようなさまざまなアプローチでカスタマーにより良いサービスを提供し、新しい収益の流れを作り、自社のデータを有効活用した効果的な経営ができるようになります。それにより戦略的な課題に対応するだけでなく、セクター内における競争力も高めることができます。

データマネタイズ

McKinsey社によると、ビジネスカスタマーは5G収益のかなり大きな部分を占める2 、極めて重要なカスタマーセグメントになると予想されているということです。これが電気通信会社にとって鍵となります。なぜなら電気通信会社はサービスの使用に関連する大量のデータを生成しており、このデータはビジネスカスタマーのデジタル変革やデータドリブンへの取り組みを考慮すると、非常に価値の高いインサイトを提供することになるからです。このデータをシェアすることが新しい収益の流れを開くことになり、これをシームレスに行うことで、カスタマーは以前には不可能なレベルのすばやさでビジネス上の意思決定を下すことが可能になります。

しかしサービス固有の情報だけがデータの価値ではありません。たとえばコーヒーショップのフランチャイズを展開したばかりの小規模企業の場合、客足に関する情報に価値を見出すことになり、デジタルマーケティング代理店の場合は、5Gの利用パターンに関する情報を重視します。これらのシナリオは、サードパーティのデータセットを収益化する機会が大いにあることを示しています。

コンプライアンス:司法管轄区によっては、法律によってインサイトのシェアが制限されている場合もあります。データのシェアが可能だとしても、シェアするためにデータの難読化、アクセスの管理、データ移動の制限をするにも限度があります。しかし、広告業界でキャンペーン指標のインサイトを取得するために用いられているデータクリーンルームというアプローチは、厳しいデータコンプライアンス規則に非常に適しています。1つまたは複数の当事者に対し、他の当事者のデータセットの「質問をする」ことのみを許可することで、コンプライアンスが障壁ではなくなります。 

データドリブンな意思決定

オンライン店舗からスポーツチームまで、組織は自らの業務に関してプロアクティブかつデータドリブンな意思決定を下し、大きな成功を収めています。現在、ビジネスは、図2のとおり、ファーストパーティデータだけでなく、セカンドおよびサードパーティのデータを、サプライチェーンの管理から営業やマーケティングキャンペーンの実行といった業務に取り入れています。この過程で、各社は今日の電気通信会社が経験したように業務効率を向上させていますが、全社規模でデータドリブンな意思決定を下すことには課題もあります。

似たようなデータドリブン手法を導入することで、電気通信各社はカスタマーバリュー管理、サービス保証、小売などといった分野でアジャイル性を向上させ、利益を得ています。一方、全社規模の意思決定を下すには、組織全体のすべてのデータにアクセスする必要があり、さまざまな事業部門や特定のサービスに対応するデータサイロが共通の課題となる場合があります。5Gによるデータ量の増大や、付随する半構造化ネットワークやアプリケーションデータも課題を増長させています。ファーストパーティデータのシングル・ソース・オブ・トゥルース(信頼できる唯一の情報源)を構築して、クロスクラウドデータを含むセカンドおよびサードパーティデータで補強することは、他のセクターで見られるような企業全体でのメリットを実現する上で不可欠です。

データアプリケーション

電気通信会社にとって、このオペレーティングモデルは業績の上でも、基盤となるプロダクトやサービスの働きを管理する上でも鍵となるものです。また、5Gやその先の成功を実現するために足並みをそろえる必要がある人材、プロセス、およびシステム機能についてもまとめられています。 DeloitteおよびBusiness Reporterの記事によると3、4、こうした成功を実現する鍵は、よりアジャイルで、自動化され、シームレスなカスタマーエクスペリエンスを実現するテクノロジードリブンなプロセスへと移行することだそうです。 

最新のデータプラットフォームは、こうしたデジタルプロセスへの移行を加速できるほか、高ボリュームで、低遅延で、可変的なスループットといった、デジタルプロセスを支えるアプリケーションの諸要件を満たす拡張性と伸縮性を提供してくれます。最新のデータインフラストラクチャーを活用することで、電気通信各社は、セールスオンボーディングから請求管理、カスタマーサポートといった分野にまたがる従来のプロセスを変革できます。これにより、最新のデジタルエクスペリエンスでエンドユーザーに力をもたらし、社内サポート部門の負担を減らすこともできるようになります。

データサイエンス

オンラインのショッピングカートに基づく割引オファーから、実店舗のショッピングカートに影響する商品の配置まで、データサイエンスは今や至る所で活用されています。金融セクターの場合、企業はカスタマージャーニーデータに基づく予測モデルを実装し、より商品やサービスのターゲットを絞る過程で、新しい収益の流れを発見したり、よりパーソナライズされたサービスを提供したりしています。店舗販売専門の企業各社もデータサイエンスの用途を見出し、メリットを得ています。5Gは、電気通信各社にこのトレンドを掴む魅力的な機会をもたらしてくれます。

ネットワークガバナンス、マシン対マシンのコミュニケーション、高スループットにより、ネットワークがさらに複雑化し、ネットワーク管理が困難になる恐れがあります。Forbes社によると、データサイエンスアプローチを介して5Gネットワークを管理することで、コストやオペレーションチームの負担を減らすことができるとのことです。5利ざやと市場シェアを最大化するためのサービス収益化の聖杯である「完全に動的な価格設定」さえも、現実のものになる可能性があります。主要なビジネス成果に関する正確な予測の利用によって一歩先んじることで、電気通信企業は将来の成功に向けてさらに先を見越したアプローチを採用するチャンスが得られます。

さまざまなデータドリブンアプローチの導入が、今や5Gイニシアチブと結びつくことで、投資を正当化し、長期的な成功を実現するための基礎を築くことが可能となっています。しかしながら、さまざまなアプローチを用いての成功は、実行力と適応する能力が不可欠です。この両者こそ、電気通信企業にとって、5Gから先の成功の決め手となります。


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