注:本記事は(2021年7月13日)に公開された(A CDO’s Field Guide to Finding Value in Data)を翻訳して公開したものです。

アフリカの諺には、「良い族長(chief)とは森のようである。皆がそこに行き、何かを得ることができる」というものがあります。最高データ責任者(Chief Data Officer=CDO)も例外ではありません。2021年1月に発行されたForrester Research社のレポートによると、今日のデータリーダーは、年を追うごとに役割が拡大する中で、幅広い任務と向き合っているそうです。1

初期の頃、ほとんどのCDOはテクノロジー統括者に直属していました。しかし、Forrester Research社によれば、2020年の時点では42%のCDOが最高経営責任者(CEO)に直属しており、この役割が会社の成功にとってより戦略的に、より重要になってきていることが分かります。ビジネスのイノベーションと価値向上のために円滑にアナリティクスやインサイトを提供するため、CDOは、データのキャプチャや取得(セキュリティやガバナンスを含む)からデータディスカバリーやデータアクセスの実現まで、データバリューチェーン全体を監督する役目を担うようになっています。2

さらに、社内で成功の噂が広まると、インサイトを求めるリクエストが激増しました。マーケティングチームはメッセージやオファーをカスタマイズできるよう、顧客に関するインサイトを求め、営業チームは活動の優先順位付けができるよう、見込み客に関するインサイトを求め、運営チームはプロセスの合理化のため、ボトルネックの特定を求めました。CDOはこれら全員にインサイトをもたらすことで、諺で言うところの森の役割を果たすようになりました。

この新しい役割が意味することは、CDOは組織全体で広くコラボレーションする必要があるということです。CDOのDはデータを表すだけではなく、diplomacy(外交)のDでもあるのです。効果的な外交には現状だけではなく、何を得たいか、何が起きてほしいかといった、将来に対する視点が必要です。Forrester Research社によると、そのような戦略の実行に必要なものは、インクルージョン、「友好的」なコミュニティを創造すること3、 そして懐疑論者からの賛同を得ることだそうです。Harvard Business Review誌によると、外交において大切なことの1つは4、現在の同盟国だけでなく、潜在的な敵にも注視することだそうです。もちろん社内にいるのは敵ではありませんが、こうした変化を警戒している人や混乱の種になりそうな人にも納得してもらう必要があります。

役職が異なる場合もあります、大部分の組織ではCDOを任命していますが、その他にもデータおよびアナリティクス統括者(Head of Data & Analytics)やインサイト担当副社長(VP of Insights)といった役職を設けている組織もあります。いずれにせよ、優秀なデータリーダーは組織全体を守備範囲としてデータ戦略を定義し、データ文化を育て、データの価値を提供しています。

外交で成功するための最良の方法は、変化のメリットを示し、共通のビジョンを育てることです。データの価値とそれがビジネスに与える影響を具体的に示すことが重要です。それを実行する上でのヒントをいくつかご紹介します。

  • データ戦略を定義する:データ戦略はスタンドアロンではありません。Forrester Research社によると、データ戦略はビジネス目標をサポートするために存在します。5 Finnair社のデータ統括者は、自社のデータ戦略の目的を説明したときに、この概念を「当社は、抜かりのないデータ対応により、2025年までに最も効率的で信頼できる旅行会社となるでしょう」と表現しています。6 ビジネス目標は、いかにデータを使用し、どこに努力を集中させるかを決定づけます。次に、データ戦略がデータバリューチェーン全体の要件を確立します。また、人、プロセス、テクノロジーなど、実行に必要なリソースにも対応する必要があります。そしてもちろん、戦略はデータ自体にも対応したものである必要があります。
  • データの文化を育てる:データ戦略を実行し、データからビジネス価値を実現するには、人材とプロセスへの投資が必要です。データの文化においては、ビジネス上の意思決定に情報をもたらすためにデータを使用するだけではなく、組織全体でデータリテラシーを高めることも重要となります。データのキャプチャ、保護、または使用のいずれかで、全員がそれぞれの役割を果たします。Forrester Research社はレジ係の例を用いていますが、売れた商品をレジに打ち込む際には7、商品ごとに正確に行う必要があります。同様に、フィールド技術者は修理の詳細が記載された作業指示書を正確にアーカイブする必要があり、また携帯電話契約を結ぶ営業担当者は顧客情報を取得する必要があります。これらの従業員はデータについて認識し、それがどのように使用され、組織にどれほどの価値をもたらすのかを理解する必要があります。こうした認識は、データの質とガバナンスを向上させ、データドリブンな意思決定の信頼性を高めます。
  • データの価値を提供する:一部の組織は、常にデータチームやアナリティクスチームのビジネス指標に焦点を当ててきました。データの品質や可用性に基づいてパフォーマンスを評価する組織もあります。しかし、データ戦略とビジネス目標が整合するということは、パフォーマンスにもビジネス価値が反映されなければならないということになります。Forrester Research社によると、ある北アフリカの銀行のCDOは、ビジネス価値をフリーキャッシュフローの約15%に相当すると推定しているとのことですが8、これには漸進的な資本投資の追加も必要ありません。同様に、ポーランドの大手小売業者は、価格の最適化の結果、EBITDAを10%引き上げることに成功しました。9 戦略的なCDOは、組織全体にビジネス価値をもたらします。たとえば、NPSの向上、製品化までの時間の短縮、コスト削減、マーケティングのコンバージョン率の向上などがこれに該当します。ビジネス価値の具体的な実証により、懐疑的な人々を納得させることができ、データやアナリティクスに関する持続可能な取り組みが確保されます。

データおよびアナリティクスチームは、組織の皆にちょっとした何かを提供しています。しかしCDOは森そのものというよりも、森を守り、森を敬うことを教え、森の適切な利用を徹底する森林警備隊員と言った方が近いかもしれません。


1 bit.ly/3xm7DW9
2 bit.ly/3dMPqcA
3 bit.ly/3dPDAOy
4 s.hbr.org/3hiXbsQ
5 bit.ly/3ADLLYq
6 bit.ly/3xB78Hy
7 bit.ly/2UGBKZJ
8 bit.ly/3hEDxGx
9 bit.ly/3jtzZJF