私たちSnowflakeは、カスタマーエクスペリエンスを向上させるために、絶えず探求を続けています。その中で見落とされがちなのが、従業員のエクスペリエンスとお客様満足度の関係です。世界トップクラスのサポート体験を提供しようとする高成長企業は、高品質かつスケーラブルな従業員オンボーディングプログラムを優先させています。これは、企業が関係性に気付いていない部分かもしれません。

業界全体では、より多くのビジネスリーダーが、従業員の満足度と顧客満足度の関連性を認識するようになっています。SnowflakeのベンダーであるQualtricsもその1つであり、同社の調査は、従業員と顧客のエクスペリエンスの結果を直接的に結びつけるものです。能力と自信に満ちたカスタマーサポート担当従業員は、お客様の問題解決のための準備を十分に整えており、従業員のエクスペリエンスと合わせてお客様の満足度のスコアも向上させることができます。Snowflakeのサポートチームは、わずか3年の間に全世界で100人未満の規模から400人程にまで成長しました。そこで、ここで正しい方向性に進むことが、カスタマーエクスペリエンスの成否に関わってくるということになります。

このような従業員とお客様満足度のつながりを積極的に理解し、育成するにはどうすればよいのでしょうか。それは、新入社員のために、より成熟した、拡張性のあるトレーニングプロセスの必要性を認識することによって実現できます。私たちは、新入社員のオンボーディングプログラムを導入し、これまでにインパクトのある測定可能な結果を出しています。2022年には、クラウドサポートエンジニア(CSE)の86%が、オンボーディングプログラム終了後、最初の四半期のうちに業績基準に達しました。これは、タイムリーで質の高い事例のやり取り、お客様満足度の向上、そしてチーム全体への好影響につながります。CSEのオンボーディングにかかる時間も8週間から6週間へと25%短縮され、新入社員のオンボーディングプログラムに対する総合的な満足度は、プログラム開始以来5段階中平均4.6の評価となっています。

このような取り組みの中で私たちが学んだことをいくつかご紹介します。

レガシーな視点から始める

素晴らしい従業員エクスペリエンスを開発したいならば、現在のチームを重要なステークホルダーとして参加させることです。私たちの場合、新入社員を教育して彼らをエンパワーする、世界的に一貫したサポートオンボーディングプロセスを構築する上で、長年サポートに携わってきた従業員の存在が不可欠でした。私たちは、Snowflakeや以前働いていた会社でのオンボーディング経験についてフィードバックを得るために、経験豊富なチームメンバーにインタビューしました。何がうまくいき、何がうまくいかなかったのか、何が違っていたらよかったのか、お客様をサポートする上でもっとよい準備ができただろうと思うことは何か、といった点について尋ねました。

新しいチームメンバーが迅速に対応できるようにすることは、どのサポート組織においても課題となっていますが、会社、製品、顧客が猛スピードで変化し成長しているならば、この課題に必ず取り組む必要があります。Snowflakeは複雑で変化し続けるプラットフォームであるため、カスタマーサポートを提供するための強固な基盤を得るには、最長で6か月ほどかかることもあります。 

Snowflakeサポートのベテラン従業員から聞いた話をもとに、さらに調査を重ね、オンボーディングカリキュラムを微調整し、核となる製品知識とカスタマーサービスのベストプラクティスを基礎として、事例の一貫した品質を維持できるようにしました。Snowflakeの製品はリリースごとに進化し、改善され、法律やコンプライアンスのポリシーも素早く変化するため、これらの変化を追跡し、正確な情報を新入社員向けの教育内容に反映させるためのフレームワークを構築しました。

次に、Snowflakeのサポート業務に特化したカスタムトレーニングを開発しました。サポート学習コンテンツの大部分がすべての機能で一貫したものとなっており、その後、役割に応じてさまざまなコースに分かれています。たとえば、カスタマーケア担当者とCSEでは学習パスが異なります。これにより、新しいサポート担当者は、日常の業務に基づいて的を絞った知識を得て、成功するための準備を整えることができる仕組みです。

CSEの場合、オンボーディング期間中にSnowPro Core認定を取得するなど、Snowflake入社の早い段階で、より深い技術知識を追求できるようサポートします。 その結果、CSEがチームメイトを助け、技術的な問題解決に対しても迅速に貢献できるようになったという実績が確認されています。これは、お客様やベテランのサポート担当者にとってのメリットにもなります。一方で新しいチームメンバーは、自分たちが貢献できていることを実感して、成長速度が上がります。

Snowflake入社後6か月以内にSnowProの認定を取得したCSEの人数

「License to Queue」

License to Queueと呼ばれるサポートチームの強化プログラムには、Snowflakeの急成長と堅牢なプラットフォームに対応するために必要なワールドクラスのオンボーディングエクスペリエンスを構築するという取り組みが反映されています。このプログラムの主な要素には、最初のトレーニング期間だけに留まらないつながりを保つメンターのようなバディ、講師主導型、対面式、オンラインのトレーニングセッションの提供、自分のペースで進められる指導、Salesforceやパブリッククラウドなどのサードパーティ製プラットフォームの認定ソースの即時利用、新入社員の声に耳を傾け対応し続けるための継続調査などがあります。また、すべてのステークホルダーの声を聞くために、バディにもアンケートを実施しています。あるベテランのバディは最近、License to Queueについて、「新入社員にSnowflakeサポートを紹介するための素晴らしい、よく整理された、効果的な方法だと思います。必要なスキルセットを構築し、必要とされているものについての期待事項を設定する上で非常に役に立ちました」とコメントしています。

新入社員が迅速に対応できるようになるために必要な時間を与えるというチーム文化は、このプログラムを効果的にスケールアップしていくための重要な要素です。新入社員のバディだけでなく、チーム全員が「新入社員を助ける」ことを奨励し、期待する文化を組織全体で醸成しています。実際に、私たちの面接では、最初からチームプレーができるかどうかを評価しています。また、新入社員には実際に学ぶ時間を与えることも大切だと考えています。人は、自分が貢献したいと思っていても、多くの内容を短時間で理解することはできません。現実的には、どの新入社員も消防ホースで水を飲まされているようなものですが、バランスをとりながら、多くの新しい情報を受け取り、自分のものにしていけるような時間と機会を与えることが重要です。

太陽を追いかけて

Snowflakeの新入社員向けオンボーディングの改善に着手した頃、そのプロセスにはオフィスやリージョンによって大きなばらつきがありました。多くのスタートアップ企業がそうであるように、私たちは当初、各オフィスのサポートリーダーが独自のオンボーディングプログラムを実施し、新入社員を成長させることに頼っていました。このやり方は持続可能なものではなく、このプログラムを開発している間にも、イスラエル、メキシコ、日本、イギリスなど、複数のSnowflakeのオフィスが新たに開設されていきました。このように一元的なリソースが欠けているため、一貫性のない状況となっていました。たとえば、カリフォルニア州サンマテオの担当者とアムステルダムの担当者では、お客様の問題に対する対応が異なるといったケースがあったかもしれません。トラブルシューティングとケース解決のための全社的連携のとれたプロセスがないため、Snowflakeは地域間でケースを効率的に引き継ぐことができずにいました。

現在、私たちは24時間365日「太陽を追いかける」ようなサポート体制をとっています。米国のお客様が現地時間の午前2時にケースを開いた場合、まずはインドで対応し、現地の営業時間が再開した時点で米国に転送することができます。お客様とのやり取りが週3万件以上にのぼる中、このプロセスをお客様にとってシームレスなものにすることを目指しています。サポートチームのすべてのメンバーが同じ情報を持ち、1つのガイドラインとベストプラクティスに基づいてトラブルシューティングとケースの管理を行います。同時に、地域や地方の違いも認識し尊重する必要があるため、新しいグローバルトレーニングを応用し、文化の違いを超えて意味のあるものとすることであらゆるギャップを埋めました。

継続的なコミットメント

この新入社員トレーニングの強化が、これまでお客様と従業員の双方に与えてきた影響について、私たちは誇りに感じています。1月末に新入社員の満足度が4.6(5点満点)に達したことは喜ばしいことですが、このスコアはまだ上昇中であり、2023年1月31日現在、カスタマーケースのエスカレーションの割合は全ケースの2%にまで下がっています(これはお客様の最初のタッチポイントで問題が解決されたことを示しています)。現在、私たちは、ハンズオンラボやエンジニアリングチームによるリアルタイムエクスペリエンスなど、さらなる高度な技術トレーニング機会の開発に注力しています。

現在、業界全体が不確定要素の多い経済の逆風にさらされています。このような環境では、企業の組織や人材への投資が抑制される場合もあるでしょう。Snowflakeのリーダーシップチームが、ワールドクラスの企業向けサポート組織を構築してくれたおかげで、従業員にもお客様にも、この激動の時代でも継続的なサービスを提供することができるようになりました。この時期に組織作りに挑戦される方には、従業員のエクスペリエンスに投資し続けることを強くお勧めします。このような時代だからこそ、従業員を定着させるには、従業員のエクスペリエンスを構築することが大切です。

画像クレジット:Jesse Ruによるデザイン