COVID-19のパンデミックと、天候に起因する自然災害の増加を経験し私たちはグローバルサプライチェーンの脆弱さを目の当たりにすることになりました。自動車業界でサプライチェーンの途絶があった場合には、近くの自動車修理店でスパークプラグが不足することになるかもしれませんが、ヘルスケア業界での同じような事態が発生すれば、病気や怪我を効果的に治療できないという結果になる恐れがあります。

ヘルスケアにも市場の力の影響が及ぶということを知ると、驚く人は少なくありません。医療ロジスティクスには、酸素ポンプからメスまでの医療機器処方薬およびその他の医薬品、個人用保護具(PPE)、ヘルスケア用の家具、消毒剤などが含まれます。米国だけでも、これらの物品は約6,100の病院と67,000の薬局を通じて流通しており、そこでは約60億枚の処方箋が扱われています。ロジスティクスの定義をもう少し広くすると、医師、看護師、技術者、専門家、管理者など、必要不可欠な人の動きも把握しておく必要が出てきます。

パートナーや当局とのデータシェアリングやコラボレーションを革新することにより、ヘルスケアチェーンのつながりの最も脆弱な部分をより適切に特定して迅速に分析し、サプライチェーンの不足やその他の問題を発生前に予測できるようになる可能性があります。 

過去と内側に目を向ける見方

“Historically, healthcare has not used demand forecasting systems and demand management systems that many other industries do, because of the fact that all they’ve really had in terms of data is looking backwards,” said Leisa Maddoux, Global and U.S. Health Transformation Leader at EY. “One of the things the pandemic taught us was when you have something that is unpredictable, you have to become more agile in predicting.”

幸いなことに、ScienceIOの創設者兼社長であるGaurav Kaushik氏によると、今ではAIにより過去数年間と比べてはるかに多くの支援を提供できるようになっているとのことです。「AIは、一度に複数のことを行うよう訓練した場合、それぞれのタスクでより優れた結果を出すことがよくあります。マルチタスク学習がどれだけAIの品質を向上させ得るかという点について、私たちは多くのことを学びました」

さらに、医療機関では、同じ種類の品目をめぐってメーカーが競合することが少なくありません。非営利の組織であっても競争が発生することがあります。

「5種類のペースメーカーがあり、5つのメーカーが存在します。各社は互いに共有を望まず、顧客にも共有してほしくないと考えるのです」とMaddoux氏は述べています。

Maddoux氏は次のように述べ、データ不足の問題ではないと指摘しています。「病院にデータがあり、販売会社にデータがあり、メーカーにデータがあります。」彼らは協力して、すべての人の利益のためにそれをどのように使用できるか考えればよいだけです。

LMA Consulting Groupの社長であるLisa Anderson氏は、データはヘルスケアにとって非常に重要であると述べています。「データを見れば、自分たちのプロダクトの現在地に関して理解を深めることができます。製品の需要を追跡し、重要な供給品を必要な場所に保管することができます。これまでお話しをさせていただいた誰もが、データシェアリングにこそ未来があると考えています。問題は、対等な立場に立てるかどうか分からない状況で、競合他社からデータシェアリングの同意を得るのは非常に難しいという点です」

Snowflakeのヘルスケアおよびライフサイエンス担当グローバルインダストリーGTMリード、Jesse Cugliotta氏によると、インターネット上には約11,000の不正な薬局があり、世界中で事業展開しているとのことです。「抗生物質や高価な抗がん剤を購入しているつもりが、結局は効果が基準を満たしていない、あるいは危険なだけの偽造品を買わされているという人々には、深刻な安全上の問題があります」と、彼は語っています。

医薬品に関して絶対に追跡する必要があるデータの一例として挙げられるのが、「コールドチェーン」と呼ばれる医薬品の温度管理ニーズです。これは安全にかかわる問題ですが、世界中の企業がこれに費やす費用は、年間350億ドルにも上ります。

パンデミックによって緊急性が明らかになったデータの追跡、使用、共有をこのまま後回しにし続けることはできません。

協力しなければ成功できない

収益性の高いデータシェアリングの考え方、つまりヘルスケアサプライチェーンを強化し、より柔軟なものにしていこうという考え方に移行するには、実用的なソリューションが必要です。たとえば、AIとクラウドを利用すれば、変化や障害に迅速に対応し、危険を軽減することができるでしょう。

「データのパターンを把握して、どこで何が必要かを確認するのは、AIの方が人間よりも得意なところです」とAnderson氏は語りました。

HIPAAやGDPRのプライバシー規則やその他のニーズを順守できる公平なAIの「審判」がいれば、恐れることなく共有に向けた大きな一歩を踏み出すことができるでしょう。しかし、これほど複雑なことをうまく実行できるAIを作成するのはまだかなり先の話となります。これまでのところ、AIは1度に1つの具体的なことを実行するように設計されています。たとえば、AIを使用してコンテナ船の貨物を追跡するといった具体的な実験からシステムを構築できる可能性があります。

Cugliotta氏は次のように述べています。「データシェアリングには、収益性、市場シェア、および収益獲得を改善する大きな機会があります。過去40年間で誰もが実感してきたのは、あらゆる業界のすべてのサプライチェーンが、コスト削減をすべての活動の最大の原動力として捉えてきたということです。しかし、このようなタイプのサプライチェーンには、費用対効果が非常に高い場合であっても、ある種の脆弱性が存在します。私たちには不測の事態に戸惑うような余裕はありません。すべてのサプライヤーで何が起こっているかを常に確認する必要があります」

これまでAIの限界と言われてきたものの1つに、意思決定の不透明性があります。AIは単純な命令でプログラムされるものではなく、トレーニングされるものであり、このプロセスは追跡が困難です。しかし、その不透明さも徐々に解消されつつあります。

Kaushik氏は次のように述べています。「私たちは機械学習モデルをトレーニングして、人によるルール作成が容易ではない複雑な物事を実行できるようにします。しかし、モデルがどのように振る舞うかについて理解を深め、バイアスをテストし、モデルによる意思決定について把握し、より効果的なトレーニングを行えるようにする方法があります」

負担が大きく困難な時期でも、ヘルスケアサプライチェーンを強化するために利用できるツールは十分にあります。今後どれほどの変化が舞っているかを考えると、このような認識によって私たちのヘルスケアを担う人々の仕事が強化されていくはずです。

ヘルスケアサプライチェーンの課題と可能性の詳細については、以下のリソースを参照してください。